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五十七話 街中進軍

「ふぅむ.....面々の曇った表情、荒んだ空気、どうやら私は来るタイミングを見事に間違えたらしい」


 あまりにもシンとしたこの空間。つい先ほど現れた男、ヴィクターはなんでもないかのように分析を始める。


「ああ、そうだな。最悪のタイミングだ、さっさと帰れ」


「おおっと、これはこれは。随分とご立腹のご様子、だがそうはいかんのだ。今から言う言葉で、その反応は180度ひっくり返る」


 口から出たのはほぼ投げやりな言葉だった、それに対するヴィクターの返しは何かを匂わせるものだった。通常ならば、そこに対して問うところだろうが今は話が違う。


 なんのつもりかは知らんが、変なことを言ったら首を飛ばす。今は時と場合が悪すぎる、儂だって魔族だ。怒りのままに力を振るうこともあるぞ。


「今から研究所見学に行くのだが、そちらさん方もよければ一緒にどうか?」


「今はお前のおふざけに付き合えるほど.....は?」


 どうせまたくだらないことを抜かす気だろう、頭にはその考えが先行した。勢いのままに剣の柄に手をつけたところで、ふと気づき手を止める。


 こいつ今なんて言った?研究所見学とか聞こえたが.....


「間の抜けた声どうもありがとう。さて、ついてきてみるかい?騙してはいない、信用されていないのは重々承知の上だが私はふざけこそするが重要なところで嘘はつかない男だよ?」


 ヴィクターは相変わらずの態度で儂の声に触れたのち、態度を一変させる。


 ん、今回は反応を変えるのが早いな。前はやりたい放題ふざけた後に見せた表情だが。


「もっと楽しみたいところだが今は時間がない、アジトでの一件でおそらくはこの国から逃亡するだろうからな。さて、では今一度問おう!研究所見学に同行するか?」


「.....分かった、儂はお前を信じよう。スイラム、お前はどうする?当たり前だが、騎士を動かすのはお前の一存だ」


 儂は少し考えた後、答える。信用できるかは正直微妙なところだが、今のところ裏切る様子はない。それに同じくキメラに煮湯を飲まされてきた奴だ、それを潰すためという共通の目的もある。


 少なくとも研究所を潰しすまでは大丈夫だろう、可能性のある方に乗っかっとくべきだ。


「あなたがそう言った考えなのでしたら、私の答えは決まっています。騎士団全員の進軍を許可します、城のことは気にせず行きたい者は好きに向かいなさい!」


 次の瞬間、スイラムの口からそう命令が下された。決定がやっぱり儂の考えなのが少し気になるが、そう決めたのならとやかく言うのはよそう。


「心地の良い号令だな、では行こう。好き勝手してくれた野郎どもの本丸に殴り込みだ!」


 見学の話は何処へやら、気持ちよくなった勢いかヴィクターの言葉から建前が剥がれた。


 ーーーそれから程なくして騎士団と反乱軍、総勢万にも届く数が街を行進する前代未聞の光景がニュイラム王国城下で繰り広げられる。


「こんな量で歩いてたら勘付かれないか?」


「十中八九勘付かれてるだろうね、だがたとえバレたとしてもう遅い。連中も下手に逃げて背後から刺されるより、迎撃を選択するだろうからね」


 途中で儂が聞いた問いにヴィクターが口を開く。


「いや、バレた時点で転移で逃げられるぞ」


「ああ、それは問題ない。何故かは行ってみればわかる」


 儂の言葉は簡単に否定された、自信満々に答えたところから見るにその線は考えなくていいと見ていいってことでいいか?じゃあ、もう一つ聞きたいことを聞くか。


「もっと早く聞いておくべきだったが、何故場所がわかった?」


 最初はニュイラム王国騎士団を疑っていたはず、お互いに疑いは晴れたがそれは昨日の今日での話。それがこんなに早く研究所を見つけてきた、よく考えてみたらおかしい。


「ま、聞くよねぇ?だが、残念!もう着いてしまったよ?」


 話の最中にヴィクターはいきなり話を切り、目の前の建物に指差す。だが、目の前にあるのは連なる家々の中にあるごく普通の一軒家、両隣の家と違いもあまりない。どうみても研究所には見えない。


「は?早すぎだろ、しかもどう見たって研究所にゃ見えないぞ!適当抜かしてんならーーー」


「な〜に言ってんの、後ろめたいことしてるような連中がどでかく構えてるわけないでしょ。こういう連中は隠すのだけは無駄に力を入れるからねぇ」


「すまん、そうだな。ちょっと頭に血が昇っていたかもしれん」


 ふざけた態度だが、理に叶っている。確認もせず決めつけたのは儂だ、そこはしっかり謝るべきだろう。


「まぁ、入る前にうやむやにした問いの回答をしておこうか。連中が転移をしないであろう理由、詳細は省くがこの場所はかなり丁寧に隠されてる。すぐに逃げられるならそこまでする必要はない。そしてこの場所を見つけた理由、ここにいるすべてがここを隠すことに協力するわけじゃない」


 研究所、らしい建物の扉の前で止まって振り返るヴィクター。流れるような分不相応な行動、なんかもうこの状況でのこいつの立場ってなんだ?


「では連絡なしの突撃研究所見学、大いに楽しもう!」

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