五十六話 翌日のニュイラム王国玉座にて
「「「..........」」」
日が上り、玉座の前でもう一度キメラについて話し合いをしていた矢先の出来事だった。
し、信じられん。これだけはないと思っていたのに、まさか本当にーーー
「スイラム王と騎士の方々、大変遅くなり誠に申し訳ございません。件のキメラについて、調査が終了いたしましたので報告にあがりました」
ジンカイがこの場に現れた、全く疑う様子もなく。予想外すぎてここにいる全員が固まってしまっている。
昨日の今日でなぜ出て来れる?アジトに現れたあいつはこいつの関係者じゃない?いや、まさか。そんなはずはない、少なくともなんらかの関係性はあるだろ。
「あなた、どういうつもりですか?」
皆が黙る中、スイラムが口を開いた。
「あ、これは申し訳ありません。もう少し早く報告に来るべきでしたね、僕からの提案だったのにも関わらずお待たせしてしまいーーー」
「そうではない、それとも昨日の件は無かったことだと?」
何を思ったか見当違いなことに対して謝罪を始めたジンカイにスイラムは再度問いかける、少し怒りのこもった声色で。
「昨日の.....申し訳ないのですが、僕には思い当たる節が全く。お手数をおかけしますが、詳しく教えていただけないでしょうか?」
わざとなのか、それとも本気で分かっていないのか。ここまでピンときていないのを見るとどうも分からなくなってきた、正直態度が丁寧で礼儀正しいせいで嘘をついているようには全く見えない。
裏がある感じでもない、本当に気づいていないのか?いや、巧妙に隠して.....いるように全く見えない。改めて態度って大事なんだな、どこぞの悪魔とは大違いだ。
「白衣をきた男が反乱軍のアジトを襲ったと、うちの騎士団から報告があったんですよ」
「なっ⁉︎そ、そんなはずは!彼らにはもう.....いえ、とにかくですが、おそらくは見間違えか何かかと。それはそれとして、その人物について特徴など教えていただいてもよろしいでしょうか?」
否定の言葉の後、一人でぶつぶつと喋るジンカイ。それでも不安があったらしく、さらに詳しい情報を求めてきた。だが、それはすなわち思い当たる節があると認めているのと同じことだろう。ーーーにしても、
あー、長い!悪い気はしない、これだけは間違いない。好きにしゃべりゃ良いし、多分儂の方の性格が悪いんだろうが。どうしてもこれだけは言いたくなる、魔族にこういうタイプが少ないせいで免疫がないのが原因か?
「ああ、それには儂が答えよう」
ジンカイの言葉に儂が儂が割って入る、こういうのは実際に見てきた奴でなくては答えられないだろう。
あとは〜まぁ、他の騎士団の連中は殺意がダダ漏れだから任せたら何するか分からんし。
「反乱軍のアジトに現れた白衣の男についてだがーーー」
ーーー儂の説明の後ジンカイは、
「.....み、見間違えではありませんか?本当に白衣の男の特徴はそれで」
「ん?ああ、間違いない」
顔は真っ青、震えた声で確認してきた。話が進むにつれてわかりやすく顔が引きつっていった、ものすごく分かりやすい。だが、ここまで分かりやすいと逆に疑ってしまう。魔族社会を生きてきた者の性か。
「その特徴は間違いなくアヅマ君?いや、しかし.....」
「ふむ、どうやら心当たりがあるらしいな?詳しく聞かせてもらおうか」
何やらまたごちゃごちゃ抜かしているが、尻尾を出したなら掴む以外の選択肢はない。吐かせる、知っていることを全て。
「あるかないかで問われますと、あります。そして、それをあなた方にお伝えすることはできません。ですがどうかご安心を、これ以上ご迷惑はおかけしないと誓います。僕はこれで、急用ができてしまいました」
「させるか!流石にもう、逃さんぞ!」
最終的に自供を重ね、しかし大事なところはひた隠しにしたまま出て行こうとしたジンカイ。そんな流れで逃すわけにはいかない、幸い儂は予想はできていた。
あの時の白衣と同じ逃げ方をする気だろう、あの時の感じからして魔道具。なら、使わせる前に捕まえる。どんな魔法にも遅延時間がある、魔道具も所詮魔法を込めただけの道具。使った後でも発動する前に捕まえればーーーなっ⁉︎
「遅延ゼロ.....だと⁉︎」
捕まえられなかった、魔法の発動も感じた、間に合うはずだった。いけると思っていたが想定外だった、発動の瞬間と同時にジンカイの姿が消えた。
「.....すまん、逃した」
そこにはただ罪悪感が残った、しゃしゃり出たにも関わらず逃してしまった。捕まえることさえできれば、研究所の場所を聞き出すのも時間の問題。だが、それができなかった。
「いえ、ありがとうございます大主人」
儂の言葉に答えたのはバウだった。一見落ち着いて見えるがよく見ると拳が震えているのが分かる。よく我慢したものだ。
ーーーと、
「たのもー!!王とその騎士たちよ、失礼する!」
この沈んだ空気が充満した場所、その空気は即座に入ってきた男によって霧散することになる。




