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五十五話 ニュイラム王国の夜

「.....にしてもあいつらの研究所の場所を把握してなかったのは問題だな、まずは見つけるところからか。あっちから出てきてくれたり、はしないか」


  今、儂は考え事をしながら城のバルコニーをあてもなく歩く。アジトに現れた科学者と思われる男を撃退、もとい逃げられてしまった後に一度城に戻ってきた。ジンカイを問い詰める為もあるが、まずはスイラムに報告をするべきだろうと考えたからだ。


 今はもうかなり遅い時間、とりあえず今日はゆっくり休めと言われだがやることがない。立場を意識して、考えてるふうにはしているが。こんな時間に独り言言いながら歩いてるオッサン.....儂の今の姿、不審だったりするか?


「はぁ.....反乱軍と接触し、会えるかと思っていたが」


 ん、あれはバウか?あんな場所で俯いて何を、いや流石に分かる。


「キャウのことか?」


「お、大主人⁉︎これは、お見苦しいところを」


 儂はバウの隣へ静かに歩み寄り、隣に立つ。バウはかなり驚いた様子で儂の言葉に応える。


 気配に敏感なバウが隣に立って、しかも声をかけるまで気づかんとは。そんなに.....


「いや、気にするな。むしろこれまでよく頑張った、あそこまでできる奴はそうはいない。.....ここにはお前の部下はいない、今くらい良いんじゃないか?」


 バウはまだ自分を押し殺そうとしている、最初に指摘した時も黙っているだけで吐き出してはいなかった。


 今のバウに対して大丈夫だと励ますことができるなんて自信は儂にはないが、話を聞くことはできる。儂もキャウのことはよく覚えている、少しは気持ちを汲んでやることもできるだろう。


「不甲斐ない、バレておりましたか。では、お言葉に甘えさせてもらいます。オレは大主人が言うほどそんなに強くない、何度不安に押し殺されそうになったことか」


 儂の言葉を聞いてくれたようでバウが素で話始めてくれた。


 良かった、変わったかと思ってちょっと怖かったがいらん心配だったかな。


「あいつは、キャウはかわいい後輩でした。いつも先輩先輩と、オレを慕ってついてきてくれた」


「ああ、お前たちは本当に仲が良かったな」


 キャウ、あの科学者を撃退した後それについてヴィクターに聞いてみた。それで帰ってきた答えはアジトを襲撃してきたキメラに挑み、負けて連れ去られたというものだった。


 まぁ、あのキメラを見た後であの話を聞いちゃあな。嫌な想像の一つや二つ、してしまうのはしょうがないか。正直儂も生きてるかどうかは信じきれない、キャウの今の実力を知らないってのもあるな。


「儂もよく覚えてる、お前に劣らない良い声をしていた」


 キャウは儂が初めて会った時からバウと一緒でよく『先輩、アタシ一生ついていくッス!』って言っていた。


「.....大主人、これ何か分かりますか?」


 バウは少し考えるような仕草をした後、懐から巾着袋のようなものを取り出す。ピンクの布地に花の刺繍、そしてほのかに香る花っぽい香り。知識が無さすぎてなんの花かまではわからないが、落ち着く優しい香りだ。


「ん、袋か?なんだろうな、なんかほのかに香ってくる」


「これは()()()です、今城下で流行っているもので好きな香りを入れた袋を二つ作って一方は自分が、もう一方は大切な人にーーー」


 バウは匂い袋を眺めながら語りだす、懐かしげな表情で。


 なるほど、ロマンチックじゃないか。香りに特に敏感なここの国の種族特有のって感じがするな、多分お互いの位置を教え合って安全性を上げる意味もあるだろうが。こういうのはやっぱり言いようだよな。


「オレは興味が無かったのですが、少し前突然渡されたんです」


 そりゃまた、キャウは大胆なことしたもんだ。


「互いの絆を深めることも戦力強化に必要だとか言ってだが、おそらく渡す相手が欲しかっただけでしょう。キャウは流行りに乗るのが好きでしたから」


 うん、そうか.....ん?


「キャウはそんなつもりはなかったでしょうが、渡す相手に選んでくれるくらいには信用してくれていたというのがそれだけで嬉しかった」


「まさか、お前.....いや、やめておくか」


 話の中で危うくツッコミかけだが、飲み込んだ。話のコシを折るというのもあるが。


 これを渡せたんだ、呆れはするだろうが自分から伝えるだろう。助け出した後の楽しみにしておくか、なんか不謹慎な言い方な気もするが。


「あの時、キャウを止めておけば良かった!こうなるとわかっていたならもっと大胆に騎士団を動かしていた!」


 バウは遂に決壊した、拳を打ちつけ涙を流す。


 ーーーああ、スッキリしとけ。


「大主人、お見苦しいところを付き合っていただいてありがとうございます。キャウはこんなことでくたばる奴じゃないと私は信じています、必ず助けます!」


 しばらくの間泣き続けた後、決心がついたらしく良い顔になっていた。

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