五十四話 アジトへの襲撃者
「やっちゃったな、こんなに早くバレるつもりなかったんだけど」
反乱軍アジト前、そこに現れた白衣の男。ジンカイとはまた別の人物で、緑色の髪のその男はジンカイよりも若く見える。髪は無造作に括られ、中のシャツは着崩してかなりだらしない印象。そいつの背後には指示待ちでもしているかのように静かに佇む何体ものキメラ。
なんだ、ジンカイのところのやつか?だが、一つははっきりしてるな。キメラを操って街に襲撃させた奴、は間違いなく奴だ。.....なんか、まるっきり犯人ですって奴が現れたな。まぁ、そうじゃなくても一枚噛んでるのは間違いないはず。っていうか、なんでこの場所を知ってんだ?
「あーあー、ガン見されてるよ。これ、言い訳効くかなぁ?.....やっば、思いつかねぇわ」
なんか一人、ぶつぶつと呟き始めるその男。なんか口調が少しチャラい。
「おい、あんた。まさかとは思うが、ジンカイとやらのところの奴じゃあないだろうな?」
「戦犯やだな、仕方ない。ニュイラム王国騎士団の皆様、提案なんだが今からオレたち何もせずこのまま帰るんであなた方も今日のことはすっかり忘れるっていうのはーーー」
「いや、それは流石に無理な相談だな」
考え込んでいる様子で儂の質問はスルー、やっとこっちに向かって口を開いたかと思いきやあまりにも無理がある悪あがきが飛んできた。
何が仕方なかったんだ?儂だけじゃなくここにいる全員がしっかりと目撃してしまってる、この状況で見逃す選択ができるようなトンチンカンはいないだろうよ。
「そっか、やっぱ無理?じゃあ、良いか。念の為、多めに連れてきておいて良かった。.....殺せ、一人残らず」
軽い発言から一転、冷たい声で後ろのキメラに命令を下す。キメラはそれに呼応するように静かに前進を始める。
なんだ、あいつの周りにいるキメラはやけに静かだな。あの時のキメラは咆哮みたいな叫びを上げていたはずだが、あれも色んな魔力が混在してるからキメラなのは間違いない。見たところ上手く操れてるようだが、それも妙だな。
「いや、今は考えるよりもこれに対処しないとな」
考えている間にもキメラが迫っている、儂は持ってきておいた剣に手をかける。
数は二十は超えてるか、幸いあの時のキメラほどデカくはない。これなら十分周りを巻き込まずやれそうだ、まぁ周りにゃ何もないが。
「こい、全部残らず斬ってくれる!」
「大主人、我々も加勢します!」
大きく宣言し、地を蹴った儂の後ろにバウたちが続いてきた。
「..........」
「おせぇな、まずは一体ーーーんなっ⁉︎」
突っ込む儂の前に一体のキメラが立ちはだかった、動きを見せたが儂の剣の方が早かった。だが、もう少しのところで思わず手を止め即座に離れる。
「大主人、どうしましたか!」
そんな儂の様子を見たバウが駆け寄ってくる。
「まじか、そうきたかぁ.....」
感情を感じさせない全くの無言だった、それも不気味だが。それじゃない、それが霞むほどそれこそ脳が混乱するほどのものがあのキメラにはあった。
.....あのキメラ、あのキメラは、人間でできてやがる。他でもない同族をキメラの材料に使ってやがる、ここまでイカれた奴は初めてだ。魔族でもそれだけはやらなかったぞ。
「人間とはいえ、流石に気分の良いもんじゃねぇな」
儂の中に沸いた気持ち悪さ、そして表現しづらい怒りが口からもれる。
「ど、どういうことですか?」
「下がってろ、お前たちは知らなくて良い!」
「わ、分かりました」
儂のただならぬ様子にバウはすぐに返事を返し、すぐに騎士団を下がらせる。
あいつは絶対に逃すわけにはいかない、たとえどんな種族だろうと生物としてやっちゃいけないことをやってる。殺すのは良い、魔族なんて同種族同士の殺し合いを平気でやってるのもよく見る。だが同種族の身体を弄ぶことは何があっても許されて良いことじゃねぇ、同意の上だろうが超えちゃいけない一線がある。
「どうした、怖気付いた?まぁ、そうだよな。この数相手に勝ち目はない、諦めてくれるのはこっちにとっても嬉しい。でも、逃す気はなーーー!」
「黙れ!今から儂が全て斬ってやる、そしたら次はお前だ」
あのキメラの姿を見て白衣の男の言葉に、声に腹が立つようになってしまっている。
魔族も人間も関係ない。こいつは、こういうことする奴は野放しにしておくわけにはいかねぇ。
「へ、へぇ.....強く出るじゃないか。やれるものならやってみな、オレんとこのキメラはかなり強いよ?」
儂の怒気に気圧され、若干仰け反りつつも立て直すその男。
「いや、そうでもないな」
まずは一体、あいつが悠長に話している間に斬った。
「はやっ⁉︎だ、だがたかが一体倒した程度で.....」
「そうか、なら次々いこうかーーーなぁ!」
二体目、儂に向かって腕を振ってきたがあまりに遅い。
正直言ってキメラはあんまり強いとは思えない、というのもキメラの作りはスライムと酷似してるからだ。それもそのはず、キメラを作るにあたってスライムの体のつくり『核に纏わせる』という方法を使っている。
「なぜ、なぜだ。オレのキメラがそんなに簡単に倒されるはずが!」
儂が軽々と五体、六体と倒していく様子に焦ってきたらしい。あの男の顔が完全に崩れている。
スライムと同じ作りでもなければくっつけ合わせた自然で作れないような生物を動かすことができないからだな、当たり前だが本来繋がるはずのないものを無理矢理繋げたところで動くはずがない。だが核は埋め込まれたその時点の形を記憶する、故にどれだけ無理矢理だろうと繋がってさえいれば身体を動かすことができるわけだ。まあ、過去の資料の情報だが。
「これで十五体目、そろそろ覚悟を決める時間だ」
それで何でそれが強くないかと言うと、単純に弱点が分かりきっていることだ。スライムと違って覆っているものが肉体だから核見えない、がある程度魔力操作に長けた奴なら場所なんざ一目瞭然。後はそこを狙うだけ。
「これで全部か?それともまだ隠してるやつがいるか、まぁ無駄だがな」
「これは想定外だ!このままじゃオレの命が危ない、退くしかないか」
そんな言葉を残した後、男は儂の前から一瞬で消えてしまった。
何っ⁉︎魔道具か、一瞬で姿を消せるなんてなんちゅう厄介な。だがこうなったからには聞かないとな、あいつに。




