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五十話 ニュイvsキメラ

「パパは行ったね、すごいごねたけど」


「主人、良かったので?」


 バウが問う、気になるのも分かる。けど、


 こいつは私たちがやらなければならない敵、いくらパパだったとしてもこれだけは譲れない。何故ならーーー


「バウ、その質問に私の口から答える必要があるの?」


「いえ、一切ございません。ヤツ、ウチの者こそおりませんが」


 私の言葉にバウは丁寧な言葉をもって返しているけど、顔は歯を食いしばり怒りを隠しきれていない。グルグルと唸り声も聞こえる。


 バウ、貴方もわかっているはず。なんなら鼻が良いバウのことだから私よりも早く気づいたかもしれない、あいつは私たちの国の民から作られている。


「全く、腑が煮え繰り返りそうな気分だよ」


 私は自分でも感じたことのないくらいの激しい感情が身体の奥底からふつふつと湧き出るのを感じる。


 いま、私はどんな顔をしているのかな?バウと同じくらい崩れているか、それとも案外冷静だったり?私が人間だった場合、どっちのタイプなのかよく分かんないから表情が今どうなってるか想像もつかないな。


「それはオレも.....いえ私も同じ、よろしいですか?一刻も早くあんな醜悪な姿から救ってやりたいのです」


 バウの理性が外れかかった問い、怒りのあまり剣を握る手が震えている。


「待って、あなたの怒りは十分に伝わるけど今回は私がいく。あいつがどれだけ強いか分かんないし、なんてったって私の方がヤバイから」


「..........っ⁉︎」


 バウにそう話しかけながら私は身体から剣を取り出す。


 しまった、思わず殺気が漏れちゃった?ごめんね、やっぱり私の方がヤバイみたい。


「やめていただきたい、後ろの部下たちが怯え切ってしまっている。それでなくても獣はそう言ったものに特に敏感だというのに、これからあなたが何をするか分からないのにかろうじて動けるのが私だけなのは不味いのだが」


「じゃあ、行ってくる」


 不満を口にするバウを横目に私は目の前のキメラに向かって走る。


「.....グルァ、グルルォォォッ!」


 私が向かってくるのを見てか、さっきまで街やらに攻撃していた手を止めこっちを向いて雄叫びを上げる。真正面からこっちを向かれるとどうも胸部分にある無数の頭に目がいく。


 .....っ!許さない、誰がやったのかは知らないけど見つけ出して殺す!


「おい、そこの気色の悪い肉の塊!今楽にしてあげる」


「グルォッ!」


 私の言葉に反応してか腕を振り上げるキメラ、だけど遅い。


「まずは挨拶がわりにその腕もらっちゃうね!」


 相手が反応するよりも早く、私はキメラの腕を斬り落とす。


 つぎはぎなだけあって想像してたより柔らかかったな、八つ当たりにもならなそう。これ怒り治ってくれるかな?


「グルァァァッ!」


「っと、腕が落ちたのにお構いなしなんだね」


 キメラは後ろの私に目掛けてもう片方の腕を振り下ろす、腕が落ちたというのに全く怯んだ様子がない。


 まぁ適当に引っ付けた感じだし、痛みがないのかな?困ったな、攻撃したって実感がないと感情の発散もできないじゃん。


「ちぇっ、つまんないの。痛がらないし、碌に喋りもしない」


 目の前のバケモノに対して、つい本音を口にしてしまった。知性はかけらもなさそうだし、聞こえてなんてないんだろうけど。


 ーーーと、


「..........え?」


 次の瞬間、私は思わずそんな声が出た。目の前で落ちた腕が勝手に動き出し、キメラの胴にくっついた。元々の場所ではないけど、十分に不気味な光景。


 いや、なんなら元に戻るより気持ち悪いことになってない?げぇ、うねうね動いてるよ。


「でも、そっか。完璧ではないけど、再生能力もあるんだね。じゃあーーー」


 キメラは聞いたことがある程度で見たことすらないけど、多分頭落としたくらいじゃ死ななそう。なら、


「真っ二つにしてあげる、そしたら流石に終わってくれるよね」


 私は自分の手に持つ剣に手をかざす、そこへ私の体を練り込ませて延長してすごく長い剣にする。何メートルかな?まぁ良いか、アイツを真っ二つにできるくらいまで伸ばしちゃえば。


「グゥルルァァッ!」


「やっぱり遅いね、そんなんじゃ間に合わないよ!」


 私が剣を振り上げた頃にやっと腕を動かし始めた、もちろんそんなのが間に合うはずもなく。私の剣はキメラを真っ二つにした。散々暴れたその怪物は流石に再生はできず、左右の建物にそれぞれぶつかり静かになった。


 なんだ、結局最後まで腕を振り回すしかしなかったな。


「いや、素晴らしい戦いぶりでした。いえ、賞賛の前にまずは謝罪を。あの方に逃げろと言われたにも関わらずそのお言葉を無下にし、ここへ戻ってきてしまったこと誠に申し訳ございません。どうしても己の探究心が抑えられず」


 背後から拍手と共に話しかけてくるあまりにも丁寧かつ自分を下にした言葉遣い。声からも誰かは考えるまでもなく、


「え、ジンカイ。あなた逃げてなかったの?ていうか、いつから?」


「おそらく戦いが始まる前辺りには近くにおりました。ところで〜なのですが、そのご遺体を研究所で預らせてはもらえないでしょうか?僕の研究所には色々揃っていますし、あなた方の同胞をこんな目に合わせた方がわかるかもしれません。もちろん、ご遺体の方も悪いようには致しません」

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