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四十九話 追跡

「待て、そこのサングラス!」


 儂はキメラをニュイたちに任せて、言われた通りヴィクターを追っていた。


「おっと、追ってくるとは。確かに騎士団に任せるとは言ったが、騎士団だけに任せるなんてつもりはなかったんだがな。あのバケモノはいいんですか〜?」


「お、心配してくれるのか?だがその気遣いは結構、あいつらの実力は儂が十分に理解している」


 儂の存在に気づいたヴィクターの煽りじみた言葉、気にはせず当然足は止めない。


 悪いが、娘に託された以上逃すわけにはいかん。混乱に乗じてうやむやにできると思うなよ?


「.....全員、散開だ!アジトでまた会えることを願う、それまでに死んじまったら運の尽きってヤツだ」


「「「了解しました!」」」


 突如、ヴィクターが自分の部下たちに命令を下した。


 狙いを分散させる気か?こっちとしちゃあ、問題はないが。狙いは一点、あの男だ。何も変わらん。


「なぁ、よしてくれないか?荷が重すぎる、私は魔王に直々に追いかけてもらえるような大物じゃねぇんだ」


 狙いが変わらず自分にあることを再確認してうんざりした様子のヴィクター。


「そうはいくまい、今のところお前が一番情報を握ってるのは間違いない」


「このままじゃアジトにリーダー自ら敵をご招待しちまう、仕方ないか」


 儂の言葉を受け、ヴィクターは何かを呟いた後に観念したのか立ち止まる。


 足を止めたな、諦めたか?まぁ、降参するなら好都合。さっさとこいつを連れてーーー


「..........っ⁉︎」


 近づこうとした瞬間、ヴィクターは徐に右手を懐に手を突っ込みナイフを投げてきた。ちょっと油断していたのもあり、驚いたものの剣で弾く。


 あっぶな!そりゃそう簡単に降参なんかしねぇか、ちょっと考えが鈍ってきてるな。とりあえず、当たらなかったからよしとするか。


「まぁ?降参するとは誰も言ってない。自分で言うのも変な話だが、私は超往生際が悪い。勝算が薄い戦いでも、とりあえず抗ってみるのが私だ。心が折れるまでは、抵抗させてもらう」


 ヴィクターは口角をあげ、ニヤッと怪しい笑みをこぼす。見ると、両手に四本ずつナイフを挟んで構えている。


 お、やる気か。こういう奴は結構好きだ、儂も久しぶりに楽しみたい.....ところだが、


「簡単にはいかんか、だがその姿勢は悪くない。でもな、あっちが心配だ。早めに終わらせる、多少手荒だが文句は言わんな?」


 ナイフを構えるヴィクターに対し、儂も剣を構える。


「そりゃどうも、私は弱いんで手加減は多めにすることをおすすめする!」


 ヴィクターはなんとも情けない言葉を堂々と宣言し、言い終わるや否や間髪入れずにナイフを投げてきた。もはや卑怯などという言葉はいつでも好きに言えと言わんばかりの清々しさすら感じてしまう。


「そんなやり方で儂に一撃入れられるとでも?そういうのはせいぜい最初の一度くらい、それ以降は無駄.....だ?」


 また同じようにナイフを剣で弾いたが、今度はナイフに何かを塗っていたらしく何かの液体が腕に飛び散った。


 なんだ、これ。若干腕が痺れてきたぞ、毒か?


「よーし、成功成功!困惑の表情いただきだ、もっと見ていたいがこのチャンス逃す手はない!」


 儂が腕を見て考えている間に口を開いたヴィクター、何かしてくるのかと思ったら突如こちらに背中を逃亡。


「ちょっ、逃すか!」


 それに気づいた儂もすぐにその後を追う。


 しまった、考えすぎたか。毒だのと疑ったが、ただの痺れ薬かなんかだったのか。ふざけやがって、結局は逃げるのが目的か!


「ええ⁉︎おかしいな、かなり人間に近い見た目だから鬼か悪魔種かと思ってそういう類に効く触れるだけで破壊する猛毒だったんだが。何も起こっていない、読みが外れたか.....あんたの種族はなんだ?」


「今のお前の言葉の後に言うと思うか?」


 追ってきた儂の姿を見て驚いた様子で不穏なことを呟いたヴィクター、その後の質問には流石に答えるわけがない。


 危なかった、さっきのは毒だったのか。運良く痺れる程度で済んでよかった。


「まぁ、そりゃそうだ。足止め失敗と、さていよいよどうするか」


 さっきからずっと後ろに張り付いてくる儂にそろそろ策が尽きてきたらしい、策と言えるほど考えてはいなかった気はするが。っていうか、


 いつまでこいつの茶番に付き合ってるんだ、儂は?いつのまにか自分でも理解していなかったが楽しくなっていた、ニュイたちが心配だ。


「..........なっ⁉︎」


 流石にこれ以上時間をかけてはいられない、手に魔力を込めてできた塊をヴィクターに当てる。案外簡単に当たってくれてその場に倒れる、手加減はしたため無事ではあるはず。


「それなりには笑えた、が終わりだ。来てもらうぞ、ヴィクター」


「冗談でしょ、遠距離の手段があるならな〜んで最初から使わないかなぁ?別に失念してたわけじゃないけど、それはずるいでしょ」


 なんかぶつくさ文句を言っているが、これで確保だ。

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