表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/75

四十八話 キメラ

「騎士団がやっと出てきたかと思いきや、内の軍を半壊とはやってくれるものだ。そちらさんには話し合いって言葉はないのかよ?」


 反乱軍の連中の中から聞こえた声、そのすぐ後に一人の一風変わった男が歩いてきた。何やら言っているが、


「言っておくが、突っかかってきたのはそっちだ。それに魔族に話し合いだとか抜かすのはやめておけ、この国が例外なだけで基本は殺す殺さないの奴が大半だ」


「もちろん冗談だ、あんたの雰囲気的にいけるかな〜とな。.....お〜おやおや、騎士団の者ではないと見える」


 儂の返答にふざけた態度で返してきたその男、他のやつとは姿がかなり違う。茶髪のショートヘアにサングラス、そして白シャツ、暗めの茶のベスト。黒いコートを肩にかけている、と見るからにそれなりの地位がある奴の服装だ。さらに周りの反乱軍の連中は揃ってボロボロの服装なのに対し、こいつだけ明らかに綺麗な服装をしている。


 なんだこいつ、話し方もいやに気さくで気味が悪いな。さて、どう答えるか。ここで魔王だとか宣言するのは馬鹿だろう、だからと言ってただ名前を明かすのもアウト。.....いや、待て。騎士団の奴らにはもうバレてる、それにこれは旅行の範疇からは外れてる。


「儂は魔王だ、これ以上の説明はいるか?」


「なんと、ま・さ・か!魔王が出張ってきたか、魔族界の最高権力者が出てくるとはまたまた恐れ入った」


 目の前にいる人物が魔王と知っても全く態度が変わらないこの男。


 .....ん?こいつは人間だよな、なんだこの変な気配。魔族ではないが、儂の知っている人間の気配とも違うような。


「ではこちらも自己紹介といこう、私はヴィクター。見ての通りそちらさんがいまだに反乱軍と呼んでいる集団の.....リーダー?隊長?頭?まぁ、トップを務めている」


 続けて自己紹介をするその男、途中しっくりこなかったのか何度が良いなおしていたがまぁそれは良い。それよりも大事なのは、


 こいつがこの軍のリーダーだってことだな、話し合いがどうとか言ってたな。それにいまだに反乱軍と呼んでいる、だと?


「お前らは話し合いをするために暴れてたってことで良いんだな?」


「そういった結論で間違いはない。では、聞いてくれそうな雰囲気なので!気が変わられてしまう前に言わせてもらう、こちらについ最近からというもの、訳のわからないバケモノが度々襲撃にくるのだ」


 儂の問いにヴィクターは少し真面目な顔つきで答える。


 はぁ.....呆れた。この期に及んで被害者面か、信憑性に欠けるしなによりこいつ本人が怪しすぎるだろ。


「悪戯のつもりかそれとも本格的につぶしに来たか、どちらにしろ迷惑この上ない!魔族だからしょうがないでは済まさないことは気に留めてもらいたい」


「怪しいところだな、それが本当ならそのバケモノとやらの特徴でも教えてもらおう。長くここにいるなら知ってるだろうが、ここには主に獣種の魔族が占めてる。それを今更バケモノなんぞと言ってる訳じゃないだろうな?」


 信じられる話ではない、ニュイたちは何も言ってはいなかった。儂はできる限り今日会ったばかりの奴よりも娘たちを信じたい。そして下手な回答が返ってきたらその時点でこいつらはつぶしてしまっても構わない。


 ーーーと、


「グルルォォォッ!」


 何かの呻き声のような音がしたかと思いきや、勢いよく何かがこの場に突っ込んできた。あたりに土煙が舞う。


「ーーーっな⁉︎」


 数秒後、顕になったその姿は一言で表すなら肉の塊。一様大まかには人型ではある、しかし胸部分には多種多様な動物の頭が密集、腕や足も何かのパーツをがんじがらめにしたような見た目、極め付けは頭部と思われる場所に乗っかった獅子の頭。よく見ると焦点が定まっていないのがわかる。


 複数の個体をちぎって引っ付けたような見た目、こいつはキメラか!


「何奴っ⁉︎みな、すぐに戦闘態勢につけ!」


 それを見たバウが即座に騎士団に命令を出す。


「こ、これは何事ですか⁉︎」


 そこへ今更着いたジンカイが困惑の声を上げる。


「おい、下がってろ!そいつはキメラだ!」


 儂はジンカイに向かって叫び、退くことを促す。


 キメラ、確か合成獣とも言ったか?一昔前の魔族が始めた実験で生み出されたバケモノ、確かあれは意思がなくてただただ暴れて制御の効かない失敗作って結果で終わってたはず。あれはどう間違っても自然に生まれるもんじゃない、この時代にまだこんなもん生み出すバカがいるとは。


「それそれ、それだよ。ウチに来て暴れていくバケモノ、それのせいでウチの数もずいぶん減っててね。ところでその様子を見るにどうやらそちらさんも存じ上げないようだ、ならば好都合!」


 こっちが困惑している中、ヴィクターが不穏なことを口にする。


 おいおい、こいつらまさか!


「ここは街のど真ん中、わざわざこちらが戦う理由はないよなぁ?総員撤退だ、後はと〜っても強くて頼りになる騎士団の皆様にお任せしよ〜う!」


 ヴィクターの号令で反乱軍の連中は揃って走り去っていく。


 くそ、こっちになすりつけて逃げやがった!あいつ、このためにこの場所で暴動を起こしてやがったのか。


「とりあえずこいつを倒してーーー」


「パパ、あいつらを追って!こいつは私とバウで何とかする、逃しちゃダメ。まだ聞かなきゃならないことがあるから」


 儂が剣を構えた時、それを遮るようにニュイが前に出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ