四十五話 行方不明について
改めて話をまとめると、ちょっと前からこの国では謎の行方不明が続いていた。なかなか進展しない上に国の安寧を案じて大きく動かない国へ業を煮やしてキャウが一人で飛び出し、そのまま行方不明に。と、いったところか。
まぁ、まだニュイが居なくともスイラムだけでなんとかできるレベル、少なくともニュイが出張るほどじゃあない。ここで問題なのはキャウが行方不明になったってところだ、バウと同じくキャウもペット。だがバウと違う点がある、キャウはスイラムのペット。それも初めての、その分愛着もひとしお。
「わざわざニュイが出向いた理由はスイラムが怒りのあまり暴走寸前だったからだな」
「「その通り、さすがパパ!」」
儂の言葉に綺麗に言葉を重ねるニュイとスイラム。
こいつら本当に言い争ってんだよな?ここまで息ぴったりなのを見せられたら、脳が混乱しそうだ。
「大主人、お願いです。私にできることがあればなんでも言ってください、なのでどうか主人を、そしてキャウを助けていただきたい!」
ニュイたちに続いてバウが食い気味にグイと顔を徐に近づけて懇願する、もはや鼻息が届く距離である。
な、な、なんて忠誠心だ。ニュイは良い従者を持ったな、儂はお前が誇らしい。
「心配するな、バウ。娘を助けるのは父親として当たり前のことだ、それに誰の娘の国に手を出したのか分からせにゃならんな」
「おお、大主人、ありがとうございます!」
儂の返答にバウは礼を口にし、膝をつく。その動作の最中、瞳から一筋の雫が垂れたのが見えた気がした。顔はすぐに下を向き、確認はできない。
.....キャウはニュイラム王国の騎士団の副団長である前にバウの妹分だったはず。キャウはバウのことをよく慕っていたし、バウもそんなキャウを可愛がっていた。この中で一番心配なのは一番過ごした時が長いはずのバウ、それなのに一番落ち着いているのもバウ。それどころか儂の訪問を笑顔で歓迎し、顔を崩すこともしなかった。今になっていきなり膝をついた、今こいつの顔は.....
「それが騎士団の団長としてのお前の意地か?.....顔はしばらくあげなくて良い」
「か、感謝します」
さっきまでの張りのある声から一転、弱々しく、それでいてそれを隠すかのようなくもった声。.....もう限界だったようだ。
「「..........」」
いつの間にかニュイとスイラムの言い争いが止まっていた、二人とも静かにバウの方を見つめている。
流石にこれを見たら争う気は無くなるか。自分の主人の国の王であるスイラムが暴走寸前、バウも弱さはなおさら見せられなかったのだろうな。
「お前らは落ち着いたか?なら、反乱軍に関して詳しく知りたいんだが。そもそもなんで奴らがやってると考えてんだ?」
反乱軍、この国に来てからちょくちょく耳にしていた言葉。儂も存在自体は知っている、この国はニュイたちが攻め落とした人間の国。ならばもちろん魔族の支配を好まない連中もいるだろうことは容易に想像できる、反乱軍は人間が組織した国を人間のものに戻そうとする集団だ。
元々魔族のものだろうが、とか言って聞く連中じゃない。そもそも反乱軍ったってニュイが国を攻め落とした直後からいたはず、なんで今更?しかもこんな回りくどいことを、こんなことしてバレたら潰される口実を作ることになるだけだぞ?
「反乱軍は最近になって活発に動き出したの、私たちも最初は特に危険視はしてなかった。けどそれと同時に行方不明になる子が急に現れ始めた、まだね、その時点だと言い切れなかった。けどけど、その後反乱軍の処理をしてる最中に消えてることがわかったの!」
儂の言葉にスイラムが答える、最初こそ冷静っぽかったが後半は怒りが込み上げ声に怒気が強まっている。
気持ちは分かるが、だからって反乱軍の皆殺しはできん。ニュイが人間の出入りを許可しているこの現状、そんなことしたら都合の悪ければ人間を殺すという印象を与えかねない。
「えー、失礼。お取り込み中申し訳ないのですが、スイラム王はおられますか?」
儂らが話し込んでいると、何やら聞き覚えのない声が聞こえて来た。
見るとそこには長い赤髪、メガネの男が立っていた。分かる、こいつは人間だ。顔立ちや雰囲気から大体二十とちょっとといったところ、礼儀正しい印象を受ける。シャツにズボンと特におかしな格好はしていないが、その上に白衣を羽織っている。なんかどこかで.....
「.....?誰だ」
「あ、ジンカイさん、何かご用?」
「いや〜それがですね。.....おや、初めましての方がいらっしゃいますね」
スイラムにジンカイと呼ばれた赤髪の青年、口を開き何かを話そうとしたが途中で儂に気づき言葉を変える。
「あなたは魔族〜ですかね、いや初めまして、僕は最近この近くで研究所を持たせてもらっているジンカイと申します」




