四十四話 ニュイラム王国
「お前たち!我らが大主人が来てくださったぞ、忠義を示せ!」
「「「大主人!ようこそ、お越しくださいました!」」」
儂はバウと共にこの国『ニュイラム王国』のど真ん中に位置する巨大な城、の城内にお邪魔したのだが。そんな儂を出迎えたのは綺麗に整列し、練習したのかと思うくらいに同時に言葉を発する獣の兵たち。バウの咆哮にも等しい号令を始めとし、驚くほど綺麗な流れだった。
うおっ!バウの声で全ての兵が、これは圧巻だな。.....だが、そんな大々的に大主人はやめてほしいんだが。
「ば、バウ、早速ニュイのいる場所まで頼めるか?あとすまんが、大主人というのはやめさせてーーー」
全員が誰一人ブレることなく同じ体勢で整列、儂はこの状況に居心地の悪さを感じバウに話しかける。当たり前だが、ニュイのペットの兵たちは狼だけではない。トラやキツネ、タカなんかもいる。ここから見えるだけでもかなりの種類が確認できる、本来は共存などできない種族同士もここでは同じ使命を持っている。
「そうでした!我らがご主人は今この廊下の先の玉座におられます!現在、少々揉めておりまして私ではどうも力不足で。すぐに行ってあげてください」
儂の言葉にバウは食い気味に返してきた、儂の言葉を遮る勢いで。
そうか、玉座か。なら揉めてるのはーーー
「何を言われても変わらないわ!私はもう我慢ならないの、反乱軍は皆殺し!」
「やめなさい、そんなことをすればどれだけの反感を買うか」
あれからすぐに玉座の扉前まで来たら、何やら言い争う声が。だが何かおかしい、どちらの声も同じ声。間違えるはずはないあの声、ニュイの声。
.....やっぱり揉めてるのはスイラムとか。
「おいおい、自分でなんとかできるとか言ってたらしいのに随分手こずってるな」
「「パパっ!」」
儂は扉を開き、中に入る。儂の言葉を聞いて中で言い争っていた二人が同時に反応する。片方はニュイ、そしてもう片方はニュイと顔立ちは同じだが背は頭ひとつ分くらい小さい。名をスイラム、ニュイの初めての分裂体でこの国の王を務める。赤を基調とした美しいドレスを身に纏っている可愛らしい少女、と見た目で騙されそうになるがバカにできない力を持っている。
「「なんでパパがここに?」」
「なんだ、父親が娘を心配するのはおかしいか?にしてもまた自分同士で揉めてるのか」
スライムという生き物は分裂で増えるってのは誰でも知ってるが、分裂体は本体から分かれるだけだから姿形、声すらも同じ。人間化こそすれば個々の違いがあるが、スライム状態のやつを見分けるのは至難の業。そんなスライムだが分裂すると性格だけは別物になる、まぁ儂もニュイではじめて知ったことだが。そのせいで独り言にしか聞こえない言い争いとかいう紛らわしい事態が起きてしまう。
儂も最初は驚いた、しかも本人同士はあくまで自分だって認識のせいで余計に紛らわしい。そもそも記憶も思考も共有してるくせになんで性格だけ別物になるんだ?
「「パパ、聞いて.....ちょっと、今私が話してーーー!」」
二人とも全く同時に口を開き、言葉が重なりに重なり最終的にはお互いに見合ってしまう。話が一向に進む気配がない。
二人以上揃うとこんな風に同じタイミングで同じこと喋るから若干困惑しそうになるが、まぁ喋れるやつはここにいるやつ合わせて四人しかおらんから困ったことはあんまりないから別に良いが。
「こういう時に困る、こうなったら話が進まなくなるからな。さて、どうするか」
「ご主人の代わりに私が説明します、まずこの国で起きている行方不明事件はご存知ですか?」
話が進まないのを悟ったか、バウが口を開く。
「行方不明?」
「やはりご主人に話していませんでしたか、このニュイラム王国では数ヶ月前より我らが同胞が次々に姿を消しているのです」
ニュイからは一切聞いていない、ルイナも知らなかったのを見るにそれどころかおそらく誰にも相談すらしていないのだろう。
だが、おかしいな?行方不明ったってニュイが一人で解決できないほどか?そんなに上手い奴がやってるのか、それとも何かあるのか。ん?そういえば.....
「バウ、あいつはいないのか?確か騎士団の副団長をやってたはずだが、名はキャウだったか。これまでにどこにもいなかったがあいつは元気か?」
「「「..........」」」
儂はそこで一つ頭に浮かんだ疑問を問う、それに対して返ってきたのは思っていたより重い沈黙。
ん?どうした、おかしなことを言ったか?儂はただキャウがどこにいるか聞い、て.....
「おい、まさか行方不明になった奴の中に」
「はい、大主人の察した通りです。キャウは行方不明の物を探して反乱軍に乗り込み、そのまま.....」
あ〜、ニュイがわざわざここにきた理由が分かった。




