四十三話 ニュイの国
千歳京を出て半日、儂はある都市までたどり着いた。朝に出たのでまだ明るいのは幸い、結局ニュイには追いつけなかった。大体の国がそうだがこの国は城を中心に街が広がり、さらにその周りを壁で囲った形になっている、そして基本開門状態のため儂は馬車を街中のちょうど良い場所に停めた。
ふぅ、ついたな。ちょっと無理しすぎたか、尻がいてぇし腰もズキズキしてきた。
「ついたぞ、ミロは大丈夫か?」
「ん、全然。ただ、かなり溢れた」
馬車から降り、一息ついた儂は中にいるミロに確認を取る。そしたらなんか不穏な言葉が聞こえた。
.....っ!まさか、
「溢れたって、ぶちまけたんじゃないだろうな!」
儂は即座に馬車の扉を開く、そこには案の定菓子のくずが散乱したなんとも汚い光景があった。しかも今回に限って食べていたのがスナック菓子だった、窓は飛び散ったくずから出た油で若干テカっている。満足したのか食べ終わったのか、もう食べてはいない。
まじかぁ.....溢れた時点で食べるのをやめて欲しかったなぁ、なんで意地でも食べ続けるんだこいつは。っていうか、その袖でよく掴めるな。
「父、うるさい。そんなに急がなくても、どこにも行かない」
「あ、あ.....」
不満そうなミロ、だが儂はあまりにも呆れ果ててしまいもはや声すら出なくなった。ミロには迷惑になるとか怒られるからやめておこうという思考は皆無、ミロの変な方向への根気強さと胆力はどんな時も変わらない。
「あー、掃除しねぇと。でも今は急いどるし、とりあえず置いとかにゃならんか。とりあえず、ミロ早く出てこい」
できればシミにならないように今すぐ掃除したいところだったが、ニュイが危ないかもしれない。苦肉の決断だ。
「おーけー、じゃあ.....ん」
儂の言葉を聞いてミロは馬車から降りてくる、かと思いやなぜか両手を前に伸ばし何かを促す体勢を。その姿はまるで.....
見るからにおんぶか抱っこだな、しかしなんだこの気分は?普通娘からせがまれたら嬉しいはずなんだがな、こいつからはコキ使おうとする根性が丸わかりなせいで素直に喜べん。むしろ、無性に拒否したい!
「んん〜、分かった。早く乗れ」
「くるしゅうない、では」
数秒間の逡巡ののち、儂はおんぶを選択。ミロの前で後ろ向きにかがみ込んでミロを待つ、すぐに調子の良いことを言いながら背中に乗っかってきた。
よし、乗ったな。全く、なぜ馬車から降ろすのにこんなに時間がかかってんだ儂は!
「じゃあ、行くぞ!」
ミロが乗ったのを確認し、儂は即座に走り出す。目指すはニュイがいるはずの王宮へ。
「目的地は真ん中の城だ、このまま行くが平気か?」
「いちいち言われなくても.....もぐ、分かってる。平気.....あ、そこに土産屋がーーー」
「おい待て待て、何背中で食い始めてんだ⁉︎今すぐ片付けろ、あと一様言っとくが今は急いどるから菓子を買ってやる時間はないぞ?」
さっきからなんか腕の負荷が増したなと思ったら、まさか人の背中で菓子を食べ始めたミロ。気づいた儂はすぐに後ろに向かって抗議する。
人の背中でもお構いなしか、今ので菓子は片付けた.....よな?っていうか、本格的に拉致があかん!もう覚悟して行くことだけ考えるか。
「今のお声は、やはり大主人!」
儂がミロと騒いでいると、突如話しかけてきた声があった。そっちに視線を向けるとまず目に入ってきた白銀輝く美しい毛並み、そして鋭い目つきと立派な二本の牙。その人物は薄い青色の鎧を身にまとい本来頭が乗っかっているはずのそこには凛々しい狼の頭が。もちろん二足歩行である、その人物以外にも後ろに何人か確認できる。
ああ、ニュイのペットの。確か名前はバウだったか。あと大主人って、主人の主人だから間違ってはないんだろうが。なんか大旦那みたいで、儂は親父ではあるがまだ爺さんって歳じゃねぇぞ。
「おう、どうしたバウ。そんなぞろぞろ連れて、何かあったのか?後、その大主人ってのやめーーー」
「そのことなのですが!今ご主人の本体が帰ってきてくださったのですが、少し困ったことになっていまして」
儂の問いにバウはドギマギしながら答える、何故か歯切れが悪い。
ちなみにバウがニュイのペットなことからも分かる通り、この国の統治はほぼニュイのペットで構成されている。何故か?それはこの国は一度人間に攻め落とされ、つい五、六年前までは人間の国だった。それをニュイがペットと共に攻め落とし、今の形になっている。ニュイが四天王に選ばれたのもこれが大きい。さらにこの国はニュイが許可しているのもあり、人間も普通に入れる珍しい国でもある。
「お、やっぱりニュイはここに来てたか。どこにいるんだ、案内してくれるか?あとな、大主人ってのーーーー」
「ええ、もちろんです!大主人であればそう言っていただけると信じておりました」
う、う〜ん.....!




