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四十一話 宴会

 早めに離れてあわよくばそそくさ退散できれば最高だなとか思っていたが、思惑は砕かれ巌忽にある場所に連れてこられた。


「.....で、ここはなんだ?」


「ん、見てわからんか?温泉だ!」


 思わず口からこぼれてしまった言葉、それに対して巌忽からさも当たり前みたいな回答が。


 いや、それは分かっとる!宴会って言ったら旅館とか、花が咲く木の下なんかでやるもんじゃないのか。ここ銭湯だぞ、風呂は騒ぐ場所じゃねぇだろ!.....儂がおかしいのか?


「ま、まぁ、それはまだ良い。問題なのは.....気のせいかもしれんしできればそうであって欲しいが、儂の目には男女の表記がないように見えるが?」


「当たり前であろう、何故風呂を男女に分ける必要がある」


 つまり混浴であった。巌忽はこれまた当たり前と言わんばかりの顔でサラッと答える。これで誰も意を唱えないていうことは本当にこの国では混浴が当たり前なのだろう。


 こいつらは他の国の文化に触れたことないのか?まぁ、魔族は我が強いからな。特に鬼はその気が顕著、触れてたとしてもなかなか染まらんだろう。否定する気はないし、儂一人であれば違和感はあれど受け入れていただろう。この歳になったらもう特に異性に変な気は起きん、それに流石に国のど真ん中で異文化を主張し強要するほどの干渉はしたくない。


「がなぁ、今回の場合はそうはいくまい」


 儂は呟くながらある方向をチラッと目を向ける。そこにいるのは儂の娘。メルルナとジェリエ、この二人を混浴に入れるのは是が非にでも避けなければならない。


 うちの娘が変なのを覚えてはいけない、いやそれ以前に娘の裸を男どもに見せるなんざ絶対に許さん!


「最悪、男全員の目を潰すか?」


「いえ、その必要はございません。話は通しておきました」


「うおっ⁉︎いつの間に、って今の声に出てたか?」


 いつの間にか声が出ていた、その呟きに背後から声が掛かった。


 それから数分後、儂らは風呂で宴会を開いている。もちろん男女別、真ん中に巨大な仕切りがある。


「いやぁ驚いた、まさか銭湯がこんなバカでかいとは」


 ルイナが何をしたのかは知らないが、娘の裸は守られた。


 いやぁ、良かった良かった。.....にしてもでかいな、まぁ鬼自体がでかいからしょうがないんだろうが。湖くらいあるぞ、こんな場所で鬼以外が酒なんざ飲んだら確実に溺れるな。


「魔王殿、飲んでおるか?」


「.....きやがった、飲んどるよ。ていうか、全く話しかけられんな。周りは酔っ払いばかりだというに」


「はっはっは、それはそうだろう。あなたはこんなではあるが魔王だ、いくら酔っ払っているとはいえ武士。魔王殿の機嫌を損なうようなことはせんのだ」


 儂の疑問に豪快に笑う巌忽。


 お前も絡まんでくれたら酒と湯で気持ちよかったんだがなぁ!.....あ、やばいかもしれん。飲みすぎたか、理性が遠のいている感覚がする。これはまずいーーー!


「お前が言うな!なんだこのデカすぎる盃は、来客用とかでも良いから小型用も用意しとけ!若干手がジンジンしてきたわ!あとな、風呂の香りがほぼ酒に浸食されとるんだが⁉︎どんだけ飲んでんだ!」


「おぉ、良いではないか。宴会らしくなってきたな、共にとことんまで酔おうではないか!」


 もう諦めた、もう知らん、知らんぞ。こんな理性の吹っ飛んだような種族に常識で対抗しようというのが間違いだったのだ、郷に入っては郷に従えが一番の有効打だ!


「お、酒の匂いと楽しげな声に誘われて来てみれば、やはり宴をやっとったな!我を呼ばんとは何ごとじゃ!」


「はーい、嬢ちゃんたち〜?おるんやろ?ってなんや、この馬鹿でかい仕切り⁉︎」


 全てを諦めて馬鹿騒ぎに参加していたら勢いよく入ってきた奴がいた、レンセツと暗鬼だ。その瞬間、とどまるところを知らなかったその場が一気に凍りついた。


 戦争に勝利した祝いの宴に何もしてねぇ二人が来やがった⁉︎いや、マジでレンセツは今回どこにいたんだ?あ、この衝撃で正気に戻ったわ。


「魔王殿、奴を連れて来てしまったか!」


 静かになったその場所で一人だけ儂に笑いながら話しかけてきた巌忽。明らかにあいつらが現れて場の空気が変わった。


「奴はそこかしこで勝手に酒盛りを始めては注意に行った武士を次々と巻き込んで強制的に大宴会を始めるのでな、そこらの武士は少しばかり恐怖心がな?はっはっは!」


「あいつ、魔王城から出ることあるんだな。一生城の中で飲んだくれてると思ってたが、まさか他の国に迷惑までかけてたとはな」


 レンセツの迷惑ぶりを何故か笑いながら語る巌忽、把握はしているが笑い話程度しか認識していないらしい。今更驚くことではない。


「なんや、男ばっかやん。あんたらはこいつと馬鹿騒ぎしとったらええわ、私はお隣にいかせてもらいーーーっ⁉︎」


「何言うとる、宴は数が多いに越したことはなかろう。まだピンピンしとるみたいじゃし、まだまだ付き合ってもらうぞ!」


「離さんかい!十分付き合うたやろ、そろそろ解放してくれへんかな?可愛い可愛い天使ちゃんが私を今か今かと待っとるねん、その期待に応える義務があんねん!」


 逃げようとした暗鬼をレンセツが捕まえる、暗鬼は訳の分からないことを言いながら引き剥がそうとするもビクととしていない。


 なんかここに残りそうな雰囲気だな、儂としてはあいつら裸だしあっちにいって欲しいが.....いや、そんなことしたらあっちが地獄になるか。

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