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四十話 言い寄られる娘

「お、なんやなんや?厳しいやないか、私はただそこの茶屋でお茶しよ言うとるだけやのに〜」


「ふふ、お断りしますわ〜。妹も怖がってるみたいなので離れてもらえますとありがたいです」


 戦争が終わり、ルイナと共に一足先に街に戻ってきた儂は一回り近いデカさの女の鬼に言い寄られるメルルナとジェリエの姿を見つけた。相手の鬼は鬼と言った通り、人間に近しい見た目で鬼の上位であることは明白。ここじゃあどいつもこいつもだが和装、桜かなんかの花があしらわれた着物。切り揃えられた長い金髪は膝近くまで伸ばされており、頭には右から一本だけ角が生えている。印象としてはノリが軽いおねぇさんと言った感じで他にはこれといって、いや耳から風鈴みたいなのがぶら下がってるな。


 なんだこの状況、ナンパ.....で良いんだよな?まぁ、言い寄ってるのは間違いなさそうだが。にしてもメルルナの後ろに隠れてる、あのジェリエが?


「あ、もしかしてお茶が苦手やった?安心してええで、今時の茶屋はジュースっちゅうのもある。いやぁ、そりゃそやわ。若いもんは苦いのは苦手やもんな!」


「そういった問題じゃありませんわ〜、なんと言われてもあなたとお茶はしませんよ」


 拒絶されているにも関わらず、なんか見当違いなことを言い出しナンパを続行しようとする鬼。


 いや、そういう問題じゃないわ!知らんやつに話しかけられて、あまつさえ店に連れ込まれそうになってることが問題なんだろうが。男なら容赦なく行くんだが、なんだこの行った方が良いのか分からん状況は。言い寄っているように見えるが見てる感じでは手は出してないんだよな、だから見方によっちゃあ純粋にお茶に誘っているようにも見えないこともない。


「なぁルイナ、あいつは誰だ?」


「あの方は暗鬼(あんき)ですね、八鬼衆の一人です」


 儂の問いに淡々とした調子で答えてくれるルイナ。


「いや、あいつ八鬼衆かよ。戦場に姿を見せないで、んなところで何してんだ!」


「「「..........え?」」」


 儂は思わず声が出てしまった、その場の全員に気づかれ思いっきりこっちを向かれた。


 あ、しまった思わず声が⁉︎バレた、まだどうするか判断がついとらんかったのに!


「なんや、にいちゃん。こそこそ見とったんかい、見せもんやないで?私はそこの可愛らしい嬢ちゃんたちに用があんねん、関係ないやつは大人しく引っ込んどり」


 どっかいけと言わんばかりにシッシッと手で促してきた暗鬼、なんかちょっと腹立ってきた。


「関係はある、儂はそこの二人の父親だ」


「.....なぁなぁ、ええやろ。なんなら嬢ちゃんの行きたいところでいいから、仲良うお話しよやぁ」


 父親だと打ち明けたが、暗鬼はちょっとの間黙った後に何故か何事もなかったかのようにメルルナたちの方に向き直りあろうことかナンパの続きを始めた。


 まじか、こいつ⁉︎親が目の前にいるのにナンパ続行するやつ初めて見たぞ、しかもナチュラルに無視しやがった。いや、父親だって聞いてたはずだよな?


「おい、話を聞け!聞いてただろ、無視するな、あと娘に言い寄るな!」


 腹が立ちすぎて、自分でも驚くほど捲し立ててしまった。


「うるさいで!私は男に興味は.....って、なんちゅうべっぴんさん連れとんねん!なんて羨ま.....いや、よう見たらルイナちゃんやん。てぇことは、もしかしてーーー」


「なんじゃ、京翠(けいすい)?お前はまたおなごに話しかけておるのか、全く悪い癖じゃのう」


 いきなり逆ギレを始めた暗鬼だったが、その言葉を途中で遮りレンセツが現れた。それになんか知り合いらしい、同じ鬼だからおかしい話ではない。京翠というのは暗鬼の本当の名前だろう、まぁややこしいから暗鬼のままとしておこう。


 あれ?レンセツの奴、儂には気付いてないのか?いや、ただ無視してるって可能性も十分あり得る。


「げぇ、なんであんたがおんねん。気分悪いわ、あんたに会うなんて今日はついとらんな。いくら私でも行き遅れのあんたはお断りなんやけど、どっか行ってくれへん?」


 暗鬼はレンセツを見た瞬間、すっごい嫌そうな顔をする。


「おいおい、老人を邪険に扱うもんじゃないぞ?ここで会ったのも何かの縁じゃ、酒飲みに付き合え」


「ちょっ⁉︎はなさんかい、私は今暇じゃないねん。そこの嬢ちゃんと.....」


 レンセツに急接近され掴まれた暗鬼、当然に抵抗する。が、


「ははは、意気がいいのう!ちょうど張り合いのいいやつを探しとったんじゃ、さてどこから行こうかのう!」


「ーーーって、話聞かんかああぁぁぁい!」


 それも虚しく連れて行かれてしまった、訳がわからない茶番が勝手に始まって勝手に終わった。


 ーーーと、


「おぉ、こんなところにおったか!これから勝利の宴会を開くことになってな、魔王殿もくるだろうから探しておったところだ。いや、見つかってよかった!」


 なんかご機嫌な様子の巌忽がなにやらワラワラと連れて、話しかけてきた。


 これだからさっさと抜けてきたつもりだったのに、あいつが娘をナンパなんかしやがってたせいで。鬼の宴会、嫌な予感しかしねぇ。

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