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三十一話 防壁上の争い

「おいおい、何だぁ?近づいてもちっちぇな!」


「.....っ!」


 防壁の上、甲斐樹郎が薙刀でジェリエを攻め続けている。ギリギリでいなしてはいるものの、明らかに力の差がある。何とか捌くので精一杯といった感じで、安心とは言えない状況。


 ジェリエ、今行くぞ!儂が気を取られんかったら間に合っていたというのに、こんなことならニュイを付けさせておくんだった。儂がいるから大丈夫などと慢心したばっかりに!


「ルイナとニュイは作戦会議の席を任せてしまったから、今は儂しかおらんというのに!」


 儂は全力で走る、ジェリエがギリギリ耐えられている間に。


「こういう遠くからチクチクしか脳がないヤツァよ、近づいちまえばこんなもんだよなぁ!」


「舐めんじゃねぇぞ、人間がぁ!」


 押されている中、態度だけは張り合い続けるジェリエ。


 そう簡単には折れない心。ジェリエに言葉を教えた奴、ありがとう。多分そいつのおかげだ、今回初めて心の底から感謝を伝えたい。『絶対殺す!』おっと.....何とか間に合いそうだ。


「ジェリエ、だーーー」


「ジェリエ、無事かしら!」


 儂の言葉が横からのそんな声に遮られた、その声はよく知っている。


「め、メルルナっ⁉︎」


「姉さんっ⁉︎」


 その方向を向いて見て驚き、何と宙にメルルナの姿が。


 ん?どうやって登ってきた?あいつと同じく走って登ったなら流石に音が聞こえるだろ、それはなかったはず.....ん⁉︎ということはまさか、ジャンプで⁉︎


「んだぁ、また女か?全く何考えてやがる、魔族も勇者mっ、様も」


 メルルナの姿を見て甲斐樹郎は薙刀を止め、不満たらたらに文句を言い始める。なんか今、呼び捨てしかけたな。


「あら〜、わたくしにご不満が?」


 防壁の上に着地したメルルナはそんな甲斐樹郎に対していつもの静かな、ふわふわした口調で話しかける。


 メルルナよ、あんまりそいつには話しかけない方が良いぞぉ?正直言っちゃあジェリエに悪いが口調はかなり似てる、つまり聞くだけで耳が痛くなるってことだ。まぁ、ジェリエの場合は耳じゃなく心が直接痛くなるが。


「まぁた何だ?お嬢様って感じの奴が出てきやがったな、フリッフリの服なんざ着やがって。今から戦に参加しようって奴の格好か、テメェなめてんのか!」


 メルルナの言葉に甲斐樹郎は捲し立てるように怒号で答える、とんでもなくやかましい奴だ。


 あ〜もう、やだよ儂は。こういうのはジェリエだけで十分だってのに、増えるんじゃねぇよ!耳がヒリヒリ、いやジンジンしてきた。というか、娘もこいつも儂に気づいてないのか?かなり近いと思うんだが.....


「.....ありがとう、姉さん」


 一方ジェリエはそんな中、ボソッと礼を言いながら静かに退く。


「あら〜、それはごめんなさい。気を害してしまって、ではお互い気分の良いものでもありませんし〜さっさと終わらせましょう?」


「.....っ⁉︎ぐぬぅ.....!」


 メルルナの丁寧ながらもどこか不気味さを覚えてしまう口調、それが突如雰囲気が変わった。かと思いきや間髪入れずにハンマーが甲斐樹郎目掛けで振るわれる。甲斐樹郎の方は何とか反応し、防御するもそのまま押されて後ろに退く。


「あれで終わりかしら?大きなお体をしていらしたので、弾かれてしまうかと思いましたが」


「な、なんちゅう馬鹿力してやがるぅ.....っ!」


 退いた先のその場所で前屈みになり、薙刀を持つ手をもう片方の手で押さえて痛そうに声を振るわせる。


「だがどんだけ力が強かろうが女は女、鬼も同じく女になんざ頼る腰抜け集団だっつぅことが分かったなぁ?」


 しかし、すぐに姿勢を戻し元のような態度でメルルナに話しかける。


 さっきので腕が痺れるほどの衝撃を受けておいて、痩せ我慢もいいところだな。話し方を強くすると神経も図太くなるのか?


「いらないことを喋っている余裕があるかしら〜?」


「ふざけやがってぇ.....女が戦にしゃしゃり出てんじゃねぇよ!」


 メルルナの余裕たっぷりな言葉に腹を立てた甲斐樹郎、一気に距離を詰めて薙刀を振り上げる。


 それにしてもかなり強い思想を持ってるな、人間はともかく魔族は昔から男も女も関係なく戦うし戦争にも参加してきた。もう世界的にもそれが当たり前として定着してるはずなんだがな。それに今更突っかかってくる奴がいようとは、ちょっと驚いたな。


「舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!」


「........」


 甲斐樹郎の怒号と共に振り下ろされた薙刀、それを軽々と避けてしまったメルルナ。薙刀はそのまま下に、壁の上の足場へと激突。すると、この大きな壁面に巨大な亀裂がーーー


 なっ⁉︎この頑丈な防壁に亀裂を入れた!どんな力だ、こいつは本当に人間か?


「チィッ!避けてんじゃーーー」


「.....っ!」


 甲斐樹郎がそんなことを言いながら顔を上げようとした時だった、メルルナを視界に収めるより前にハンマーを振った。声を上げる暇もなくその体は敵陣の奥の方まで飛んでいった。


「な、あ.....えぇ?今あいつ話を終わらすどころか、顔すら上げ切ってなかったぞ。エグいことをするな」

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