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三十話 重鎧の武士

「ちょっと待ってください、篭煙(ろうえん)将軍」


「そうでございまする、敵の手の内が分からぬ間は迂闊に動くのは。我ら犬死にはーーー!」


 武士たちの不満の声が聞こえてくる、あっちもなかなか理不尽なところがあるらしい。


 魔族も人間も変わらんか、まぁこっちはもっと混沌としとるがな。さてさて、新しく出てきたやつは一体誰だ?将軍っていったら相手さんの要にも近い存在のはず、となればあのもう一人が優秀かあるいは.....いやないな、経験則ではあるが自分を着飾ってる奴が強かったためしはない!


「やかましんだよ、叔父貴がやれっつったらやる!歯向かうやつは俺様が斬っちまうぜ?」


 将軍と呼ばれる篭煙とかいう男に不満を飛ばす武士たちに対し、もう一人の男は容赦のない言葉を言い放つ。その男だがその異性とは裏腹にかなり重そうな重装備で身を固めている、赤を基調とした他とあまり変わらない鎧ではあるが何倍も厚さが違う。そして、その男自身もかなりの大柄。


 金髪にいかつい顔、その身体と同じくらいにでかい薙刀。兜は被っとらんな、鎧に隠れて見えんがその下にはどんな筋肉を隠してんだ。人間にしてはかなりの図体、一瞬鬼かと思ったぞ!


「流石は甲斐樹郎(かいじゅろう)、流石は豊羽(とよば)家の長男よ!そうじゃ、将軍家の産まれたるもの部下を正さねばならぬ」


 そんな横暴な付きの男に対し、満足げに褒める篭煙。どっちも碌でもない性格をしている。


「それによぉ、叔父貴。気づいちまったんだよなぁ、当然叔父貴も気づいてたとは思うがあの壁の上にいる女。あいつだろ、さっきからちまちまやってやがんのは!」


 甲斐樹郎とか呼ばれた男がニヤッとした思いきや、いきなりそんなことを言い出した。


 何っ⁉︎気づかれたか、遅かった。あいつ、力任せと見せかけて周りをしっかり見てやがる。失敗した、ああいう奴で強かった奴があまりいないから舐めてた。


「お、おう。そうだな、あの女だな。間違いない、分かっていたさ」


 そんな甲斐樹郎の言葉になんとも歯切れの悪い答えを返す篭煙、絶対気づいていない。それどころか、


 今、確実に言ったな。『そ、そんなやつどこにおるというのじゃ?ワシには全く見えんぞ』と、魔法を使っとるから聞き取れたがかなり小さく呟いとったな。まあ、どうでもいいが。


「叔父貴、分かったついでだ。ちぃと行ってくらぁ!まぁすぐ戻ってくる、遠くからチクチクしかできない雑魚一匹を潰してくるだけだからなぁ!」


「そうじゃな、許可しってもう行きおったか。少しばかりお転婆が過ぎるな、教育が足りておらんかったか。お前は勇者一向にも選ばれ、兄上そしてワシの自慢でもあるのじゃ。決して恥など晒して失望などさせてくれるなよ?」


 上の許可を聞くより早くこっちに向かって突っ込んでくる甲斐樹郎、その目は真っ直ぐジェリエの方を見つめている。間違いない、あれは単なるハッタリでも冗談でもない、気づいている。


「言わんこっちゃない、早くジェリエのところに!」


 儂は即座に走り出す、とにかく早くジェリエの元に。


 早くしないとあんな奴をジェリエに近づかせるわけ、には.....いや、待てよ?よく考えたらこの高い壁を登るなんざそう簡単なことじゃない、あまり急ぐ必要はないか。


「ん?何だあいつ、俺を見てやがるのか。はっ、所詮は人間だろ!ーーーなっ⁉︎」


 儂が流行る足を止め、歩きに変えたくらいの時だった。ジェリエの声が聞こえてきた、余裕が見られた最初、そして剣を振り下ろして表情が一変した。


 剣が止められたな、多分鎧のせいだろうな。ジェリエの弱点がきたな、あくまで間合いとして捉えることができるだけ。だから止めることができる、硬い鎧、またはタイミング良く防御をする。あくまで物理の攻撃で気づけば止めることができてしまう、それが難しいんだけどな。まぁ避けることもできるがな、難易度はどっこいどっこいかな?


「はははぁぁぁっ!小賢しい手を使いやがって待ってやがれ、俺様が今すぐ辞めさせてやるからよぉ!」


 あっという間に甲斐樹郎は壁の下まで到達した、そしてそんなことを言ったかと思ったらーーー


「「..........なっ⁉︎」」


 次の瞬間、儂とジェリエの声が重なる。何故か、甲斐樹郎が壁を垂直に走って登り始めたからだ。


 ば、ばかな!嘘だろ、九十度の平面を垂直に走ってやがる。あんな重そうな鎧着てどうやって、てかあいつは本当に人間か⁉︎


「何だ、何なんだあいつ!くそ、来るなぁ!」


 ジェリエは甲斐樹郎に大いに怯え、剣を何度も振るう。がしかし、入るはずもなくその大男の姿が目前まで迫ってきた。


 .....はっ⁉︎ま、まずい!あまりの光景に意識が集中しすぎた、あの男に接近を許すわけにはいかんというのに!儂が判断を誤ったばかりにーーー


「ま、間に合わん!」


 儂は全力で走るが時すでに遅し。


「覚悟しやがれぇ!」


「.....っ⁉︎」


 甲斐樹郎の薙刀がジェリエの剣とぶつかり合ってしまった。

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