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三話 また玉座へ

「おぉ.....メルルナは優しい良い子だなぁ」


 身体だけでなく心の芯までも温めてくれる優しい紅茶、年甲斐もなく娘の前で号泣するおっさん。だが、何よりも娘が儂のために茶を入れてくれたことが嬉しい。


 間違いなく後になって後悔で耐えられなくなるだろう。しかし!今の儂はこの感情を抑えることなど出来ん、後で自分の心がどれだけ押し潰れると分かっているとしても!


「ふふ、お父様に喜んでくれてわたくしもとても嬉しいわ〜」


 情けなく涙を流す儂にメルルナは優しく笑いかける、その様はまるで天使、いや女神だ。儂はとんでもない子をもってしまった。


 .....だが、こいつはこいつでまた悩みもある。これまでの通り、大人びている。簡単に言うなら儂が何かをしなくても十分に暮らせるくらいちゃんとしている。つまり、甘えてくれないんだ!


「す、すまんかったなメルルナ。魔王にあってはならない痴態を晒した、気持ち悪かっただろう?」


 しばらく泣いて落ち着いた儂は、自虐まじりにそんなことを言いながら再度メルルナを見る。確かに人間で言うなら18くらいと言ったがそれはあくまでも外見の話、魔族の中ではまだまだ子供。嬉しくないと言えば嘘になる。.....だがな、儂としてはやっぱり寂しい。


「わたくしはお父様がジェリエたちと何があったのかは知らないけど、もっと自信を持って接するのがちょうど良いと思うわ〜」


 メルルナは片手にティーカップを持ちながら優しく微笑む。


「自信.....儂、自信がないつもりはないんだがなぁ。まぁ、お前のアドバイスは頭に置いーーー」


「ここにいらっしゃいましたか、魔王様。四天王が揃いました」


 儂の言葉は突然背後から掛けられた声に遮られてしまう、この声はルイナのものだな。儂、今良いこと言うとこじゃなかったか?儂は部下からも舐められてるのか、流石に危機感感じてきたぞ。


「そうか、では行ってくる。またな、メルルナ」


「ええ、いってらっしゃい」


 メルルナのその言葉を最後に儂は部屋から出て、玉座の間に急ぐ。あいつらは待たせたら面倒だ、さっさと行っとかないとな。


「さてと、こっからは魔王だ」


 また、無駄に長い廊下を走って玉座の間の扉の前に戻って来た。儂は自分にそう言い聞かせる。面倒くさいが、言わなきゃならんことは言っとかねば。


「パパーー!」


「ぬおっ⁉︎」


 儂が扉に手をつけた瞬間だった、儂が開くより早く中から少女が飛び出して抱きついてきた。


「おぉ、ニュイ!お前は正直で良い子だなぁ、ほれほれ!」


 ピンクの透き通った髪の少女、服装も髪色に似合ったピンクでふわふわしたもの。顔も愛らしい、こんな少女がスライムなんて誰も思うまい。


 当然だが、ニュイと儂は血が繋がってなどいない。元々ニュイはペットだった、人間が犬やら猫やらを飼うのと同じように魔族は魔物を飼う。スライムは一般的なペットだ。


「えへへ...パパ、もっと撫でて〜」


 儂が頭を撫でてやるともっとせがんできた。ああ可愛い、癒される〜。儂はこいつのことを自分の娘同然に育てた、パパと呼ぶ理由はこれだろう。なのでこう紹介しよう、儂の四人目の娘と。


「お〜お〜、いくらでも撫でてやるぞ〜」


「パパ〜」


「いや、でもまさか最初はあんなにちっちゃくて言葉すら喋れなかったニュイが今や四天王なんてな」


 そうニュイは今や四天王の一角、人に化けるのも見違えるほど上手くなって、全く儂の自慢の娘よ。


「いえ、それは魔王様のせいじゃありませんでしたか?」


「うぐ.....っ」


 娘との楽しい時間にルイナが水をさしてきおった。だが、ルイナの言葉は間違っちゃいない。儂が調子に乗って魔力を食わせまくった結果、異常に強化され、異常に分裂を繰り返して今や千など裕に超えている。ニュイを完全に倒すのは儂でも出来るか分からん。


「ニュイ、そろそろ持ち場に戻りなさい。儂から話があるからな」


「う〜ん.....分かった!」


 儂の言葉を聞いたニュイは少しの間顔を曇らせたが、すぐに笑顔でそう言って戻ってくれた。ああ、なんて良い子なのだろうか。


「さて、儂も入るとしよう」


 儂は改めて扉を開く、和んだおかげで抵抗は綺麗さっぱり消え去った。


「........」


 中にはもう四天王は勢揃い、儂は静かに彼らの前に移動する。そしてーーー


「四天王の面々、よく集まってくれた。では、単刀直入に聞く。お前たちは、また一対一を受けいれたな?」


 儂が四天王を集めた理由、何故勇者一人だけが儂のところまで来たのか。その答えは一つ、こいつらは勇者たちの要求を飲んだのだ。


 勇者が一人というのはありえん、必ずパーティを組んで挑んでくる。そもそも魔族と人間では力に差があり過ぎる。だから四天王一人に対して勇者はパーティで挑む、少し前までは。


「前も言ったはずだ、お前たちは四天王がいる意味を分かってるのか?」


 これは言っておかねばならないことだ、何故か勇者は一対一を提案してくるようになった。まぁ、それはさして問題ではない。


 問題なのはこいつらがそれを受け入れてしまうことだ、何のつもりなのか定かではないのに簡単に受け入れるのは危険だ。なにより四天王とは言わば番人のようなもの、一人も通さないのがこいつらの役目だろうが!これは絶対にはっきりさせておかなければならないことだ、絶対に!

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