二十二話 ゴスラーク観光の終わり
「.....ルイナ」
「はい、こちらに。ご用命は何でしょう?」
ジェラールに謝罪をした後、儂は誰もいない場所へ移動してルイナを呼んだ。その要件はもちろんーーー
「魔王軍のバロガードに繋げてくれ」
「かしこまりました、では.....どうぞ」
ルイナは儂の言葉にそう答えると右手を耳に当て、左手の手のひらをこっちに向けてくる。通信魔法、遠距離で会話ができる魔法。
通信魔法は本当に使い勝手が良い、魔力もほとんど使わんし何より離れたやつと会話できるのが便利すぎる。ただ一点、儂が使えないのを除いては。
『ふむルイナ殿、我輩に何かようですかな?』
数秒後、ルイナの手のひらから胡散臭い声が聞こえてくる。その声は間違いなく、バロガードだ。
よし、ちゃんと繋がったな。良かった、失敗したことはないがもし別のやつに繋がったらというのは必ず脳裏にチラつくものだ。
「バロガード、儂だ。お前に聞きたいことがある」
『おぉっ⁉︎陛下でしたか、これはとんだ失礼を。どうか、今の失言はお忘れいただきたい。ところで我輩に聞きたいことというのは何でございましょうか?』
儂の声を聞いて大袈裟も大袈裟に反応するバロガード、思ってもないだろうにスラスラと喋っている。
言っちゃあ悪いが、やっぱりわざとらしさを感じる。声だけだというのにここまで思わせるやつはこいつ以外にはいないだろうなぁ。まあ、今はそれはどうでも良い。
「お前のところにネリって名前のやつはいるか?」
そう、儂が聞きたいのはついさっきまでメルルナと対峙していたネリと名乗ったあの女についてだ。
メルルナのあの衝撃、あれを受けて立っていられる人間はどれだけ頑丈でもあり得ない。そしてあそこまで追い詰められても煽ることしか考えない奴など魔族の中でも悪魔くらいだ。さらにあれだけの魔法を操るほどの魔力量、悪魔の中でもかなりの強者。だとするならバロガードが把握していない訳がない。
『ほう、ネリは我輩の部下ですが。そのネリがどうかしましたかな?』
「お、おう。そいつに儂の娘が襲われた、どういうことか説明してもらうぞ」
案外あっさりと答えたバロガードに少し驚きつつも、儂はそう言い問いただそうと試みる。すると、
『何とっ⁉︎それは申し訳ありません、我輩の不手際で陛下のご令嬢を危険に晒してしまうとは』
何ともわざとらしい言葉遣いであたかも自分は何も知らなかったかのようなことを言う。
こいつに限ってんなことは絶対にない、120くらいの確率でこいつは絡んでるはずだ。悪いが儂はこいつにこういったことでの信用はしない。
「随分と白々しいな、もう一度聞くぞ。何をした?」
儂は出来るだけ圧を込めてもう一度問う。
『えぇ、我輩は何も知りませんとも』
「ん、知らない?」
儂はそこで気づいた、何も知らないとバロガードはそう言っている。つまりこいつは何かしたことは否定していない、それにさっきこいつは不手際と言った。それは少なくとも今回の結果にこいつ自身が関わっていることを意味する。
『はい、我輩はただ彼女を信じて一切の問いをすることなく送り出しただけでございます』
「..........」
次にバロガードから聞かされた言葉に儂は黙ってしまう、もちろん呆れだ。
あぁ、分かった。そういうことか、本当にこいつはーーー
「もう、分かった。呆れて何も言う気になれん、じゃあな」
『おや?てっきりお喜ばれになると思っていたのですが、残念です。此度の旅行のもう一つの目的、その手助けになればと思った次第だったのですがこーれは!申し訳ない!』
儂の言葉を聞き、バロガードは愉快な謝罪を残して通話が切れた。
「切られましたね、もう一度繋げますか?」
「いや、良い。聞きたい答えは聞いた」
ルイナは繋ぎ直そうとしてくれたが、儂はそれを断る。これ以上あいつと話しても儂が疲れるだけだ。
「ところでルイナ、お前帰ってくるのが遅かったようだが何をしてた?」
「はい、当初はもっと早く合流するつもりでしたし私自身そのつもりでした。しかし、ミロ様に呼び止められまして」
そう説明を始めるルイナ。
あぁ、ミロか。ん、ミロ?ああ!そういえば、ミロを置いてきてしまった!
「ルイナ!ミロはどうした!」
「ご安心ください、ジェラール様の配下の鎧騎士の方々にお菓子を貰って楽しそうにしていらっしゃいました。因みにメルルナ様が戦っておられた間にミロ様は帰りたいとおっしゃられたので馬車までお送りしました、その時にジェリエ様も同様におっしゃられたので一緒に。今は馬車から魔王様方をお待ちかと」
儂の言葉にルイナは至極丁寧に説明してくれた。
あ、そうだ。いつの間にかジェリエもおらん⁉︎気付かなかった。
「これからどうなさいますか?まだ観光はできると思いますが」
「いや、やめておこう。許されたとは言え罪悪感がすごい、さっさとここを去りたい」
儂はそう言いながらこの場所から大通りに戻る。
「あら〜、お話は終わり?」
そこでメルルナが話しかけてくる、何かあったらと思ったので一様ここで待たせていた。
「メルルナ、馬車に行こうか。もう他は戻っとるらしい」




