二十一話 ゴスラークの戦い終了
「いやいや、こんな状態じゃ無理でしょ。私の負けだよ」
ハンマーを構えたメルルナに慌てた様子で否定するネリ、流石に焦りが出てきたか。
それにしても随分頑丈なやつだ、当たらなかったとはいえあれだけの風圧を受けて骨が数本逝った程度か。こいつ、まさか?
「そう、ならさっさとわたくしの前から消えてくれるかしら〜」
「へぇ、見逃すの?」
ネリは次にメルルナの口から発せられた言葉に意外と言ったような顔をする。
「わたくしに戦意喪失した相手を一方的に痛ぶる趣味はないわ、だってそんなの面白くないでしょ〜?頼まれれば別だけど、さっき否定されたしね」
メルルナはやはりおおらかな表情でネリにそう言う、声色は優しいが感情は平常なわけはない。
「そっか、じゃあお言葉に甘えて逃げさせてもらうとするかな」
ネリはメルルナの言葉を聞き、足元に落ちている杖に手を伸ばす。
.....ん、何をする気だ?杖を持ったところで何が出来る、あれだけ魔法を乱射したんだから流石に魔力は残っとらんと思うが。
「「「.........」」」
そこにいた全員がネリの行動を黙って見守る。それからしばらくしてネリの下の地面が光り出す。これはーーー
転移魔法、だな。驚いた、まだ魔力が残ってたのもそうだが転移まで覚えているのか。儂はちょっとあいつが許せんが、まあメルルナが逃す選択をした。儂が手を出すのは違うか。
「.....流石がは魔王様の娘だね」
沈黙の中、ネリは何やらボソッとおかしなことを呟いた。
.....っ⁉︎今、魔王の娘って言ったか?何であいつがそのことを知ってる?
「.....今の言葉はどういうーーー」
「そーしーてー!」
儂と同じようにネリの言葉に気づいたメルルナだが、その言葉はネリの元気の良い声に阻まれる。そして、
「.....え?」
次の瞬間、メルルナが発した言葉はまるで思いもよらぬことが目の前で起きたかのような。
ん、あいつの傷消えてないか?
「やっと気づいたみたいだね、残念!私の傷は跡形もなく消えました、あれだけ魔法が使えて回復魔法が使えないわけないよねぇ!バーカ、アッハハハハ!」
メルルナの顔を見てネリは傑作といった風に豪快に笑い、転移の光の中に消えてーーー
「ーーーーっ!」
いく直前、メルルナが地面を蹴って目にも止まらない速さでハンマーを振るう。その時の顔は見えなかったが、おそらく.....
「まったく、最後まで煽って消えていったな」
遅かった、ハンマーがネリに当たる直前にネリは消えた。その後に起こったとばっちりの衝撃は.....何とか回避した。儂は残ったメルルナに話しかける。
あいつは本当とんでもない捨て台詞を残していきやがって、おかげでこっちは肝が冷えたわ!一様距離を離してたのに、まさかあんなにとは。
「ごめんなさい、お父様。わたくしとしたことが頭に血が上りすぎてたわ〜」
儂の言葉にメルルナはこちらを振り向き、いつも通りの優しい笑みでそう言う。
いや、十分我慢してたほうだ。儂なんか、割り込んで殺してやろうかと何度思ったか。それを考えれば、メルルナは偉い。.....なんてことは言えんな。
「良いんじゃないか?儂らは魔族だ、むしろ被害が抑えられた方だろう」
そう言いつつ、儂は改めて辺りを確認する。周りの建物は軒並み倒壊状態、見回してみても瓦礫の山が目に入る。
いや、やり過ぎか?こ、これはやばいかもしれん。魔王城の経費で落ちるか?いや、そもそも近くにここの主がおるんだが。
パチパチーーー
「いやぁ、久方ぶりに素晴らしいものが見れました!このジェラール、感服致しましたぞ!」
儂が恐る恐る後ろを確認しようとしたその時だった、拍手とともにジェラールの愉快そうな声が聞こえてきた。
な、何だ?あまりの惨状に頭がイカれたか?
「ジェラール、何を言ってる?」
「........」
儂はわけわからん状況に戸惑いつつもジェラールに問う、メルルナは状況が掴めているわけがなく黙っている。
「言葉の通りですとも、ここ数年あれほど心躍るものは見なかった!彼らにも良い刺激となったでしょう!」
ジェラールはそう言い、大仰に腕を広げる。多分周りのゴーストらのことを言っているのだろうがいかんせん無反応、にわかには信じ難い。
っていうか、
「倒壊した自分の街に何か言うことはないのか、それとも本当におかしくなったか?」
「ははは!おかしくなくてはゴーストなぞやってはいけませんよ、それに建物が崩壊した件はご心配なく。我々の時間は無限にも等しい、むしろそんな我々に直すという目的を与えてくださったことに感謝すらあるのです!」
ジェラールはメルルナのやってしまったことに怒るどころか歓喜している。
わ、わけわからん、ゴースト系統は全く理解できん。まあ、とりあえず許されたってことで良いのか?それなら、
「そ、そうか。まあ、わかった。でも謝罪はしておくべきだ、すまない」




