二十話 メルルナvsネリ
「はははははっ!」
「.........っ⁉︎」
全属性魔法の雨から少し後、ネリとメルルナは意外にも拮抗していた。ネリの方はちょっと前から何がそんなに可笑しいのか、絶えず笑っている。
「残念だなぁ、得意の怪力も近づけなきゃ意味なし。やっぱり物理的な攻撃よりも魔法だよねー」
電気の槍を周りに生成しながら煽るネリ。
「ふふ、あなたの魔法もわたくしには届いていませんが?」
そんなネリの言葉にメルルナは変わらぬ態度で煽り返す。
まさか、煽った⁉︎あのメルルナが?かなり温厚だったと思うがな、それもここ数年は怒ったところを一度も儂が見たことがないぐらいだ。
「おい父さん、そろそろ降ろせ!」
儂がメルルナの方に意識を向けていたその時、真下あたりからそんなキツい声が聞こえてきた。そこには儂に抱かれたままのジェリエが。視線を落とすと、めっちゃ睨まれていて思わず顔を逸らしてしまう。
こ、怖っ!こっちもいままで一番怖い顔しとる、ものすごい怒ってるなこれ。咄嗟だったとはいえあれは悪手だったか。
「す、すまんすぐに降ろす」
儂は慌ててジェリエを降ろす。
「........」
ジェリエは儂が降ろすやいなや即座に距離をとった、そこからまだこちらを睨む。
あーあ、もっと嫌われた。
「やはり魔王様とあの娘さん方は親子のご様子、ワタシの言ったことは間違っていなかったようですな!」
儂の気分が沈んだところに耳に響く生気のこもった元気な声、ジェラールだ。
「こんな時に何の話だ、別に儂は否定はしとらんかっただろ!」
「まあ、それはさておいて。魔王様の娘さんが戦っておられる彼女、どう見ますかな?」
ジェラールは儂の言葉を無視し、強引に話を曲げる。その視線はメルルナたちの方を向いている。
話の逸らし方が強引すぎるだろ!本当にこの人は何故こうも.....いや、そんなことは考えるだけ無駄だ。とりあえず言われた通り今はメルルナだ。
「まだまだぁっ!私の魔法はそう簡単に終わらないよ!」
儂が視線をメルルナたちの方に戻すと、ちょうどネリが魔法を撃つところだった。また、槍の形の魔法が浮いている。
五大属性全てを使えるのを見た時は驚いたが、バカの一つ覚えだな。さっきから同じことばかり、それにここまで見て分かったが思考が幼いな。こりゃあ、人間じゃあ無さそうか?
「あなたのそれも見飽きたわ〜、それにもう大体読めてきたしそろそろーーーっ!」
ここでメルルナが仕掛けるらしい、言葉が終わったその瞬間に地を蹴って一気に間を詰めに行く。
「そんなの許すと思う?真っ直ぐなんて分かりやすすぎ、やっぱり脳みそも筋肉なのかな。今度こそ、串刺しにしてやる!」
直線にメルルナが突っ込んだため、ネリはここぞとばかりに煽りながら魔法の槍を放つ。が、
「..........っ!」
「え、ちょっ⁉︎待ってよー、何でー!」
次の瞬間、ネリの顔が困惑に変わる。それもそうだ、メルルナはネリの槍に対して一切減速しないままに有り余る力を使って体を逸らし、全て避けながら接近を続けているのだから。
さっきまでとはやり方を変えたな、全ての魔法をハンマーで弾いていたのとは全くの真逆のやり方。ネリも突然のことに対応出来てない、さすがはメルルナだ。
「あら〜、もうここまで着けちゃいましたよ!」
あっという間にメルルナはネリをハンマーの間合いの中に捉える、それと同時にハンマーが目にも止まらない勢いで振り抜かれる。
「待って待って、早すぎ!まだまだ私は負けたくない、そうはいかせない!」
ネリは半分駄々っ子のようなことを言いながら土魔法で盾の形を作り、防御する。しかし、簡単にぶっ壊れた。
「うぐっ!どんな馬鹿力だよぉ⁉︎ーーーっ⁉︎」
ネリは発狂にも似た叫びをした後、ハンマーに.....当たらなかった。土魔法の盾によってハンマーがずれたからだ、しかし風圧は別だった。ネリはそれに当たり、大きく後ろに吹っ飛んで建物の残骸に盛大に突っ込んだ。
「あら〜、わたくしとしたことが力加減を間違えていたわ。もう少し力を入れておくべきだったみたい」
それを見たメルルナはとんでもないことを口にした。
おいおい、あれでまだ力を加減してたのか?全力だと思ってだが、こりゃあ本格的に怒らせるのはやめとこう。
「ぐ、うぅ.....酷いじゃないか」
数秒後、瓦礫の中からネリが出てくる。早すぎる、思い切り瓦礫に突っ込んだのにすぐに起きてきた。しかし、今のは効いているらしく片腕を押さえ足を引きずっている。ローブはボロボロで中の服装が見える状態になっていた。中は紫を基調とした袖口なんかにフリフリがついた服にスカート、まあ年相応の格好だ。
「あら〜、まだ動けるのね。もう一戦する〜?」
メルルナはそんなネリを見て、ハンマーを構えながらそう問う。




