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十八話 娘と揉め事

 儂は娘たちが揉めているその場所までたどり着いた、位置としては儂は娘たちの背中側の方で娘たちはメルルナを後ろにしてジェリエが相手と対峙している。


 なんだなんだ、何が起きてるんだ?さっきの言葉を聞く感じだと相手から喧嘩をふっかけられたみたいだが。


「おい、何がーーー」


「……(シー)」


 儂が二人に話しかけようとしたその時だった、メルルナが先に儂に気づいたらしい。こっちを向いて人差し指を唇に当て、静かにしておけというサインを送ってきた。


 な、メルルナは何を考えてる?どうするか、この状況で親が出ないことがあるか?……だが、娘を裏切ることはできん。今はメルルナを信じるか、危なくなれば儂が出れば良い。心配だが、そうするか。


「ふむ、まるで自分の身内かの如き形相で向かっていましたのでてっきりそうかと思ったのですが。本当にワタシの言った通り見物でしたかな?」


 緊迫している状況、ジェラールは一切の躊躇なく儂に話しかけてくる。


 まじか、この状況を少しは考えろ!しかも一瞬だけ良いところまで気付いてたぞ。全く、この人は勘がいいのか悪いのか。それにーーー


「ジェラール、ここの奴らは本当に関心がないな。見物どころか見ている奴がちらほら居る程度だぞ」


「何を言いますか、ゴーストに危機感もクソもないでしょう」


 ちょっと気になったから聞いてみたが、概ね思った通りの答えが返ってきた。


「あんだよ、いきなり攻撃してきたかと思えば自分の言いたいことばっか抜かしやがって!謝罪がねぇなら容赦しねぇ、どうせわざとだろぉーが!」


「ジェリエ、お相手がただの事故だったにしても故意だったにしても喧嘩腰は駄目よ〜」


 儂の方にサインを送ったメルルナとは対照的にジェリエは全く儂に気付いていないようで、聞いているだけでも耳が痛くなるほどの乱暴な言葉遣いで相手を捲し立てている。メルルナはそんなジェリエに再度注意を促している。


「おやおや、随分と汚い言葉遣いだね。ちょ〜っと、威嚇してみただけなのにそんなに噛みつくことないんじゃない?」


 どうやら相手も相手だ、おそらく危害を加えた側なのにジェリエに対して恐怖や申し訳なさよりも挑発で返している。ジェリエに挑発とも取れる言葉を返しているその女性、不気味なほど真っ黒なローブに身を包んでいる。フードは付いているが被ってはおらず、顔はしっかり確認できる。長い黒髪を後ろで一つに括って顔には右目を隠すように包帯が巻かれている。肌の色は白に近いピンク色で薄すぎずといった感じ。手には木製の古風な杖が握られていて、背は大体ジェリエと同じくらい。


 こりゃあ、ヒートアップ待ったなしだな。ジェリエの言葉も注意したいところだが、あっちもあっちか。いけないこととわかっちゃいるが、ジェリエにもっと言ってやれと言いたくなってきた。ところであいつは人間か?見た目じゃあ種族がわからんな。見た目の年齢は大体ジェリエと同じくらいか、魔族だったら外見年齢なんぞ意味はないか。


「あぁ?謝る気のねぇやつに、んなこと言われる筋合いはねぇよ!」


 相手の挑発にさらに怒を強めるジェリエ。


 少し分かるぞ、ジェリエ。儂もちょっと腹が立った。儂が出ていってやりたい、が儂は一旦は見守ると決めた腹が立ったなんぞという理由でメルルナを裏切るわけにはいかん。


「もう、怒りすぎだって。まあ良いか、そんなことより……いや君じゃあ駄目か。そっちのお姉さんに答えてもらおうかな、君たち何者?」


「ふふ、見かけるや否や名乗りもせず攻撃を仕掛けてくるような無粋な方にお応えすることはありませんよ〜」


 相手の女は言葉の途中でジェリエでは意味がないと瞬時に理解し、メルルナに聞いてきた。が、メルルナは笑みをこぼしながらも冷たい言葉を返した。メルルナの後ろにいるからよく分からないが多分笑顔なんだろう、奥に怒りを含んだ。


 流石のメルルナもあいつの態度に腹が立ってるんだろうな、まあそれもしょうがないか。むしろ我慢が効いているジェリエに驚きだな。それにしても、ジェリエは本当にどこで覚えたあんな乱暴な言葉遣い。


「そっか名乗りを忘れてたよ、私はネリ。見ての通りの魔法使いだよ。じゃあ、君たちも答えてもらおうか」


「はぁ?ざけんな、誰が答えるか!」


 何故か上から目線かつ、堂々すぎる態度でそう名乗った女。ジェリエたちに再度促すがジェリエが独行否定する。


「……はぁ、無駄か。なら良いよ、私が自分で確かめるから」


 ジェリエの言葉を聞いたネリは不穏なことを呟くと、二人の方に杖の先を向ける。


 ……っ!こいつまさか、魔法を撃つ気か!


「なんだ、やる気か?上等だ、やってーーー」


「待ちなさい、ジェリエ。わたくしにやらせて?」


 ネリに対してジェリエが武器を構えようとしたその時だった、メルルナがそれを制止した。

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