十七話 ゴスラークの主
「はぁはぁ.....つ、疲れる」
「満足、父良いことした」
ルイナが側を離れてからすぐ儂とミロは菓子屋に入った、その数分後にこの状態だ。まだまだ馬車には多くの菓子が残っているというのに、持ちきれないほどの菓子を買わされた。この中には服や本なんかは一切ない、全てお菓子。
ま、前が見えん.....ミロは限度を知るべきだな。それに満足そうにするのは良いが、自分で持とうという気も全くないのか?
「おやおや、大変そうですな。良ければ我々がお持ちしましょうか?」
我関せずの姿勢のまま前を歩くミロに頑張ってついて歩いていた時だった、何やら聞き覚えのある礼儀正しい声に話しかけられる。
「ああ、頼めるか?流石にこの量は儂でもきつい」
「はい、もちろんですとも。皆、お持ちして差し上げろ」
「「はっ!」」
その人物以外に複数の声も聞こえ、儂の抱える菓子がどかされてやっと視界が開いた。
「で、何でいる?ジェラール殿」
儂は開いた視界に話しかけてきたその人物を捉え、問う。全体的に青く生気のない顔の黒髪の男、着ている服は元々は豪華だったであろう面影を残しながらも無惨なほどズタズタ。髭なんかはないが、顔には深いシワが刻まれてかなりのおじさんといった見た目。足はスネあたりから何故か途切れ、代わりに何やらふよふよした何かが伸びている。
「はっはっは!殿など要りませんよ、ワタシはあなたが敬意を払う必要もないただのゴースト。どうぞ呼び捨てくだされ!」
儂の言葉にジェラールは豪快に笑いながら返してくる。
「そういうわけにもいかんだろう、あなたはここの主である自覚を少しは持て。後、質問に答えていないぞ」
儂はそんな様子のジェラールに対し、呆れつつも注意する。ジェラールはここ、ゴスラークのトップ。見た通りゴーストにしては生気のこもった声と態度、一国の主にしては軽すぎる。
毎度思うが、この人は本当にゴーストか?ゴーストはあんまり誰かに興味を示さない基本暗い種族なはずだ、陰湿なやつが多い中で何でこんなに元気なんだ。
「これは手厳しい、先ほどルイナ様を見かけましてな。魔王様とご一緒でないのは珍しいと少し話しかけてみたのですよ。するとあちらさんもワタシに用があったようで、魔王様がここに訪れていることについての挨拶を聞きまして」
でかく元気な声で説明してくれるジェラール、相変わらずの生気のこもった声だ。どうやらルイナから聞いたらしい。
ああ、そうだ。そりゃあ魔王なんだから魔界の国に訪れたら一つ挨拶くらいはするものだな、娘たちに意識をとられて忘れてたな。連れてる兵士がちょっと多いのはルイナが予測して伝えたのか?
「..........」
そんな会話の中、ミロはと言うとずっと黙っている。
お、そこにいたのか。ジェラールの存在感のせいか、一瞬どこに行ったのかと思ったぞ。
「おや、そちらのお嬢さんは誰ですかな?もしかして魔王様のお子様だったりするのでしょうかな?」
そんなミロに気づいたジェラールが儂に冗談混じりにそんなことを言う。
「その通り儂の娘だ、ミロという。今は家族旅行中だ、ルイナから聞かなかったのか?」
儂はそんなジェラールにそう返す。
本気か、冗談か?分からん、ジェラールの冗談と本気は区別がつかんから困る。
「いやはや、冗談だったのですがまさか当たるとはルイナ様からは魔王様が来られているとしか」
「そうか、それにしてもほんとゴーストにしては生気のこもった声だな」
「ほう?魔王様は少しゴーストという種族について勘違いしておられるな、魔王様が思っていらっしゃるほどーーー」
ドゴォォォォン!!!
儂の言葉を聞いて、ジェラールが答えようとするもその言葉が爆発音らしきものに遮られる。
「.....っ!何だ?」
「ふむ、何やら揉め事でも起きたのですかな?」
儂もジェラールもその音が聞こえた方を見る、ちょうど一直線上の場所だったらしく崩れた建物が遠目に見える。ついでに二人の少女の姿も見える、片方はわかりやすく白いドレスだ。
ん?いや、待て。あれは.....っ⁉︎
「すまん、儂はちょっと見てくる」
注視してあることに気づいた儂はジェラールに断りを入れ、即座に走りだす。
「見物ですかな、面白そうですのでワタシもぜひに!」
何故かジェラールがついてきたが、儂は気にせず走る。
あれは間違いない、あの衣装は儂の娘ジェリエだ。一体何に巻き込まれた!
「何だ、いきなり攻撃してきやがって!」
「ジェリエ、喧嘩越しは駄目よ〜」
近づいてきてメルルナとジェリエの二人の声が聞こえてきた。
「とぼけても無駄だよ、その魔力はそんじょそこらの魔族のものじゃない」
二人の声に答える聞き慣れぬ誰かの声、女性の声だということ以外はまだ分からない。




