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十四話 初めの国への到着

 かなりの時間盗賊をメルルナが殴り飛ばしていたが、その間一切帰ってくる気配が無かったぞ。あいつは護衛役の自覚はあるのか!いや、そんなものは最初からなかったな。


「良かったのか?せっかくの衣装が台無しに」


 戦闘が終わり、一息ついているメルルナに儂は話しかける。


 あーあー、せっかくのドレスが返り血と泥で汚れてしまって。.....ん、何故ドレス?


「あら〜、お父様。旅に汚れは付き物、ちゃんと分かってるわ」


 儂の言葉におおらかな表情で答えるメルルナ。


 さすがはメルルナだな、しっかり自分で分かっているらしい。だが、なおさらなんでドレスを選んだ?


「おおー!どうじゃ、主よ。盗賊の頭を斬ってきたぞ!」


 そこであまりにも能天気な声が聞こえてきた、レンセツが帰ってきた。


「........」(ちょいちょい)


「ん、なんじゃ、どうした?」


 儂はただ静かにレンセツに手でこっちへ来いの合図をする、レンセツはキョトンとした顔で儂の元まで近づいてくる。


「このっ!」


「.....ぬおっ⁉︎」


 ある程度近づいてきたところで即座に胸ぐらを掴んで引き寄せる。


「お前は護衛の意味が分かってないのか!儂の娘が危うく薄汚い奴らに傷物にされるところだっただろうが!」


 儂は至近距離でレンセツに思い切り怒号を浴びせる。


 当たり前だ、結果的にどうにかなったとはいえこれは許せる範囲を超えとるわ!護衛対象をほっぽり出して敵を深追いする護衛がどこにいるか!


「すまんすまん、ここにいる全員が心配しようがないほど強いから頭から抜けておったんじゃ」


 流石に悪いとは思ったらしく、おとなしく謝るレンセツ。儂はそれを見て、胸ぐらを掴む手を離す。


「でもどうしてじゃ、あくまで護衛役じゃろうに」


「確かにそうだ、実際のところこれは普通の家族旅行をするためのただのいち役者に過ぎない。正直それだけなら誰でも良い、だが儂はお前が適任と見込んで任せた。その意味を考えろ、万が一という時もある。そんな時にお前がまたこんな様子じゃあ、困るんだよ」


 まだも納得は言っていない様子のレンセツに儂は出来るだけ冷静に戻って、そう答える。


 本当に頼むぞ、レンセツ。お世辞にも頼りになるとは言えん、しかしこいつの強さは本物だ。いざという時にはこいつが役に立つはず.....だ。


「まぁ、分かった。お前がそこまで、いや主がそこまで考えていたのは意外じゃったな。我もちょっとは真面目にやるとするかな」


「ああ、そうしてくれると助かる。.....いや待て、お前自覚があった上であれだったのか!」


 レンセツの言葉の違和感に気づいた儂は即座にそう返す。


 まさか、分かっててあんな。こいつはやっぱりダメかもしれん。


「チッ!いつまで話してんだよ、終わったならさっさと出発しろよ!」


 何やら馬車の方から舌打ちが聞こえてきた、間違いなくジェリエだ。


「おーっと、お嬢様が怒り心頭のご様子じゃなぁ」


 レンセツはやったと言わんばかりにそう言うと、そそくさと馬車の方へと向かいだす。


「待て、これだけ聞かせろ。あの盗賊はどうだった?」


「そうじゃな、あいつを追ってアジトらしき洞窟まで行ったがかなりの数揃えておったぞ。死体も複数あった、こんなところで陣を構えておったのを見るに魔王城に向かう勇者でも襲っておったんじゃろうな」


 儂の問いにそう答えるレンセツ。


「じゃが、気になったのはやはりあの軍師かのぅ。明らかにあいつの存在であの盗賊はある程度の統率が為されておった」


 さらに続けて話すレンセツ。


 確かにそれは儂も気になっていた、盗賊に普通あんな奴がいるのはおかしい。だが、それより気になるのは、


「で、ガーゴイルはどうした?」


「あの軍師か?我はあいつは斬っとらんぞ、てっきり主たちがやったのかと思ったが。まぁ大丈夫じゃろ、考えすぎるなよ」


 レンセツはそうとだけ言い残すと一足先に馬車へと歩いて行った。


「考え過ぎか、そうかもしれんな」


 儂はレンセツの今の言葉に少し楽になった気がした。


 そして、


「........」


「あんだよ、こっち見んな!」


「父、もぐむぐ.....さっきから黙ってどうしたの?もぐんぐ.....」


 また、馬車の中の気まずい空気が帰ってきた。相変わらずジェリエは睨んでくるし、ミロは儂の膝でバリボリ食ってメルルナはただただ微笑んでいる。


 そうだった、馬車の中は本当に居づらい。居心地が悪すぎる、家族でいるだけなのにこんなに居心地が悪いことなんてあるか?早く目的地に着いてくれーーー!


「着きました、魔王城より最も近い現旅行の初めの観光地です」


 着いた、今回の旅行の初めの目的地に。儂の願い虚しくあれからかなり時間が経ってのことだった。

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