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十二話 盗賊交戦

「何じゃ何じゃ、ゆっくり揺られてちょうど良い眠りを堪能しとったというのに。何急に止まっとるんじゃ、おかげで覚めたわ!」


 馬車が急に止まって儂がルイナと話してから少し後、何やら不満じみた声が屋根から聞こえてきた。外を確認するとさっきまでとは違い、岩場のような場所だということが分かる。


 レンセツめ、寝てたな。真面目にやりそうな雰囲気だけ立派に見せといて結局こうなのか。


「おい、テメェら!まさかこの俺様バガンの前をただで素通りできるたぁ、思ってねぇよな」


 盗賊の中でいかにもボスみたいなごつい男がこちらに向かって口を開く。青い髪に長く蓄えられた髭、相当鍛えているのかなかなかの筋肉を持っている。背中には大きな剣を背負っている。


 って、結構近くまできてるじゃねぇか。何でこんな距離までほっといた、本当にこいつは!にしても、柄の悪い連中だな。まぁ、魔王の儂が言えたことでもないか。


「おい、レンセツ。仕事だ、無駄口叩いてないで早くいけ」


 儂は馬車から降りると顔をしかめて物言いたげなレンセツにそう話しかける。


「はいはい、分かっとるよ主。さっさと片付けてくれば良いんじゃろ?」


「は、主?」


「今は依頼主と用心棒の関係じゃろ、忘れたのか?まあいい、我は行ってくるぞ」


 儂の言葉にさも当たり前のようにそう答えて、盗賊の方へと向かっていったレンセツ。


 今の今まで屋根の上で気持ちよく寝てたやつが何を言うか、それを言うならちゃんと仕事を全うしてからにして欲しいものだな。


「おい、何のようじゃ?こっちは楽しい旅行中じゃ、あんまり邪魔はせんで欲しいんじゃがなぁ」


 レンセツは盗賊の近くまで行き、一切臆することなく話しかける。


「おいおい、何だぁこのチビは?」


 そんなレンセツに対し、さっきバガンと名乗った男が口を開く。


 まぁ、こんな場所にいるだけあって人間では無さそうだな。オークにミノタウロス、スケルトン他数種類の種族が見える。おおかたはみ出し者を寄せ集めた集団と言ったところだな、あのボスも人間化は上手いがなんかの魔族だな。


「子供は帰りな、怪我だけじゃすまないぜ?ま、逃がさねぇがな。がっはっはっ!」


 バガンは目の前のレンセツに対し、余裕の様子でバカ笑いする。


「ほう、嬉しいのう。そんなに若く見えるのか」


 なぜかレンセツは満更でもなさそうに照れた様子を見せる。


 余裕なのは分かるが、仕事だぞ。くだらん話をしてないで真面目にやれ!


「お待ちください、ボス。この少女頭に角が生えています、おそらくは鬼かと。そうなるとたとえ少女と言えど侮れません」


 バガンの隣にいるメガネをかけたガーゴイルらしきやつが突然口を開き、盗賊らしからぬ丁寧な口調で話出す。


「ルーク、お前なぁ。こんなちびに何が出来るんだよ?」


 そんなガーゴイルの言葉にバガンはバカにしたような口調でそう返す。


「ボス!馬車の中に女が三人もいますぜ、どれも高く売れそうだ」


 そこで盗賊の一味の一人が口を開いた。


「お、マジだ!」


「俺は我慢できねぇ、行くぜ!」


「おい、ずりぃぞ!俺もだ!」


 最初に喋ったのを皮切りに他の連中も喋り出し、馬車の方へと襲い掛かってきた。盗賊なだけあって、統率は一切ないらしい。


 内の娘たちが汚い男どもに品定めされたと考えると、何だ無性に腹が立つな。


「おい、テメェら!俺様が良いって言ってねぇのに勝手にーーー」


「全くじゃのう、護衛役である我を差し置いて本命を狙うとは」


 部下の様子に腹を立てたバガンの言葉を遮るようにレンセツは言い、馬車に襲い掛かろうとする山賊の方に手のひらを向ける。すると、


「どわっ⁉︎」


「ぐおっ⁉︎」


「がぁっ⁉︎」


 その盗賊全てが吹き飛ばられる。


「なっ、このクソガキ!」


 それを見たバガンがレンセツめがけて剣を振り下ろす。が、


「.....は?」


 その大剣はレンセツに届く前に地面に落ちた、バガンの腕ごと。


「な、何だコイツァ!」


「風使いでしょうか⁉︎ボス、お逃げください!」


 今のを受けてやっと焦り始める盗賊、バガンはガーゴイルの言葉を受けて腕を抑えながら逃げていく。


「待て待て、張り合いがないのう」


 レンセツはそんなバガンの後を追う、他を放って。


「弓、全てやつを狙え!ボスに追いつかせるな!」


 それを見たガーゴイルは即座に叫ぶ、すると岩場の陰から何本もの矢がレンセツめがけて飛んできた。しかし、


「そんなもの、効かんわ!」


 レンセツは走りながら自分に飛んできた矢を身もせず、全て刀で弾く。


「何っ⁉︎風使いな上に剣まで出来るのか!」


 その様子を見たガーゴイルは驚愕している。


 まぁ、あっちは順調そうだな。レンセツのやつ護衛対象を忘れやがったか?いや違うか、最初から適当だったな。


「へへ、あいつがボスにいってる間俺たちは楽しませてもらおうか!」


 一方馬車の近くまで迫ってきていた盗賊の一味はボスの心配など一切してない様子でこっちに向かってくる、やっぱり統率はないな。


「仕方ない、こいつらは儂がーーー」


「いえ、お父様。わたくしにやらせてもらえない?」


 儂の言葉の途中、遮るようにして馬車から一人の声が聞こえてきた。

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