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清楚に静まり返った館内に、コツコツと靴音がする。警備服を着た男性が溜息をつきながら、懐中電灯を左右前後に振り回しながら歩く。常備灯の明かりと靴音だけが響きながら男性は言った。
「異常なし、次っと」
ため息交じりに一息ついて靴音が去っていくと、ふふふと笑い声が聞こえた。
ー新しい人がくるらしいよー
反対側から声が聞こえてくる
ーほ、男性かい?ー
またほかの声が聞こえる。
ーなんか、じいさんらしいけどねー
ー新入りだねー
ー仲間だねー
ーおや、けんかしないで、ほらそこー
ーいやなに、けちつけられてなー
ーいや、お前の言い方が悪くてよー
ーほ、ほほほー
ー仲良くやりましょうよー
ー新入りさん、いつくるかねー
ーこれで揃うねー
ーふふふー
常夜灯の明かりがちらちらと薄暗く、たびたび瞬く。
ーふふふー
紅葉に染まった木々が、風でひと揺らぎした。