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彼は厄介な皇子様  作者: 秋月みお
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第28話 再会の再会


「大森の知り合い?」

「あ、ハイ。ちょっと前に、もう会うことはないだろうってお別れしたばかりの……」

 なにそれと、大森くんと一緒にいる女性が笑った。

 キラキラしたその笑顔の女性が私の視線に気が付いて、軽く頭を下げる。

「あ……っ」

 私も慌ててその頭を下げた。

(ヒナ先輩だ……)

 元気そうなヒナ先輩にホッとしながらも、ズキンと胸が痛む。

 可愛がってもらっていた先輩が自分のことを忘れてしまっている。

 その事実が、辛かった。

「……」

 セオと生きることを選んだ私に、ここでの居場所はもうない。

 押し寄せる不安に飲み込まれそうになりながら、気持ちを奮い立たせた。

(大丈夫。セオは戻ってくるって言ったんだからっ)

「新幹線の時間までまだあるから、ここで一旦解散しようか?」

 ヒナ先輩の声に、ハッと私は我に返った。

「いいんですか?」

 少し驚いた声を上げる大森くんに、ヒナ先輩は微笑んだ。

「うん、当たり前。じゃ、後で駅に集合ね」 

 大森くんと私に手を振って、ヒナ先輩は去って行った。

 その後姿を見送っていた私に、大森くんは寂しそうに声をかける。

「櫻木のこと、覚えてるのは俺と恵さんだけだよ」

「え……? 恵も覚えてるの?」

 大森くんの言葉に驚いて、私は大森くんを反射的に見上げた。

「うん。櫻木を見送ったからかな? 俺にはあっちの記憶もあるし」

 座ろうか?

 と、木陰のベンチに促され、私と大森くんは隣同士に座る。

「もう、会うことは無いと思ってたから、驚いた。恵さんに言ったら羨ましがられるだろうな」

 フッと柔らかい笑顔に、なんだか安心する。

「恵と、仲いいんだ?」

「ん? だって恵さん、櫻木のこと大好きじゃん? 覚えてるの俺だけだから、話によく付き合わされてる」

「そっか」

 嫌ともいわずに恵に付き合ってくれる大森くんの姿を想像して、小さく微笑む。

「渡辺先輩も、目を覚ましたよ。事件のことも、転生してたことも、覚えてないみたいだったけど、頑張れば社会に復帰する日も遠くないって」

「あ……、良かった」

 大森くんからの渡辺先輩の現状を聞いて、安堵のため息が漏れた。

 それでもなお、晴れない私の表情を見て、大森くんは何かを察したように言葉を述べた。

「何かあった? 戻って来たからには、それなりの理由があるんだよね?」

 覗き込まれるように問われて、私は助けを求めるように大森くんに話をした。


「なるほど。それで、戻って来たんだ」

 俺たち以外の転生者ね、と、大森くんは大きなため息をついて空を仰ぐ。

「うん。スコット様……、渡辺先輩から犯人も転生してるかもって言われてたから、他にも転生者が居てもおかしくないとは思っていたんだけど。こんなに短期間で他の転生者に会うなんて思ってもなかったから、戸惑ってる」

「……だね」

 空を見上げたままの大森くんから聞えてきた何気ない同意。

「そんなに転生ってするものなのかな……」

 ぼそっと呟く私を横目に、大森くんはゴソゴソとポケットからスマホを取り出した。

「これは、俺の推測にしか過ぎないんだけど」

 と、何かを検索し、私に見せる。

「彼らと俺らの共通点があるとしたら、多分、この事件だと思うよ」

 心当たりがあるかのように、大森くんは事件をサッと調べてくれた。

 ネットの見出しが、私の目に飛び込んでくる。


 高校生男女の遺体、見つかる


「……高校生?」

 サッと血の気が引いた。

 日付や場所、状況からして、二人から聞いていた事件で間違いない。

 ただ、年齢は聞いていなかった。

 それは、本人たちも曖昧だったせいもあるのだけれど……。

「二年前の事件だけどね。あの犯人ね、余罪があったみたいなんだ」

「え?」

 大森くんの言葉に、私の目が軽く見開いた。

「その人たち、この事件の被害者じゃないかな?」

 スマホから顔を上げた私と大森くんの視線が合った。

「信じがたいけど、同じ犯人。だろうね、僕たちと」

 大森くんは切なそうに笑みを落とす。

「……」

(あの二人は、私たちと同じ人物に殺されているってことっ?!)

 かもしれない事実が、ざわッと心を波立たせる。

「……あいつ、何人殺してるのよっ」

 ついこぼれる言葉には、悔しさが滲む。

「櫻木、二人はこっちに戻ってきたいって言ってるの?」

「んー……、まだ決めかねてる」

「そっか。あのさ、思うんだけど、彼女たち、俺たちが今いるこの時点でもう亡くなってるんだよね」

「……」

 大森くんからの意味深な言葉に、私はハッとする。

「二人が自分の名前を覚えてないのは……?」

「うん、もう亡くなってしまっているから」

 私の瞳に、大森くんが頷いて見せた。

「二人は帰れないかも、しれないね」

 そう寂しそうに言われるも、私はどこか納得できなくて。

 だって、セオが居れば戻れるのではないかって、思えてしまうから。

(私がこうして戻ってきているように……) 

 私は自分の手元を見下ろす。

「でも、もし……亡くなってることになってる二人が戻って来たら、未来が変わったりするのかな?」

「……」

 不安げに呟く言葉に、大森くんは驚いたようだったけど、すぐに笑い飛ばした。

「今更、俺たちがそれを言う?」

「……そうだけどっ」

 笑う大森くんは、何とも言えない表情をしているだろう私に微笑んだ。

「気にしなくていいんじゃない? だってそのために、櫻木が超能力者だっていう皇子と出会ったのかもしれないし」

「え?」

 大森くんからの意外な言葉に、驚きの声を漏らしてしまう。

「櫻木がその皇子と出会って、あっちの世界に残ることを決めて。それから知り合った二人。偶然じゃなく必然だったとしたら、って話」

 大森くんは目を見張る私に笑って見せる。

「彼女たちが戻るにしても、戻らないにしても、それは必然だったって事で。櫻木が気にすることないよ」

「……大森くん」

 じわっと涙が出そうになった。

(大森くんて、こんなに頼りになる人だったっけ……?)

 過去のことを思い出しても、私たちに接点は仕事だけだったけど。

 不安な気持ちが、一気に晴れた気がした。

「あー、ねえ、ちょっと思ったんだけど」

 キラキラと見つめていた私を、大森くんは覗き込んだ。

 その瞳が、何か思いついたんだと言っている。

「あっちの世界の櫻木の名前、教えてくれる?」

「?」

 突然のことに、私は目を瞬いた。

「俺が櫻木の名前呼んだら、あっちに戻るかもしれなくない?」

「……」

 目を見開く私に、大森くんは苦笑する。

「名前呼んでみるだけだし、試す価値、あるでしょ? もしそれで戻れたら、次来るときも俺を捜してくれたらいいよ」

 と、言ってくれた。



「じゃあ、呼ぶよ。リリア・クロフォード」


 ぐらッと視界が歪んだと思えば。

「……」

 ハッと目が覚めて、私は戻ってきたことを悟る。

 セオと共に移動した、公園の一角。

 リリアの姿の私。

(大森くんは、もういない)

 ほんの少し、寂しさ胸に広がった。

「……本当に戻ってきた」

 けど。安堵する暇はなかった。

(セオは?)

 アイナ王女もオリヴァーの姿も見えない。

「……」

 周りを見渡しても、人影はない。

(……セドリック様やエースも居ないとなると)

 何かあったのは、間違いないのね。

 不安が確信に変わった時。

 草陰から囁くように私を呼ぶ声に気が付いた。


「リリア様っ」


 目を向ける私の視界に入って来たのは……。


「あなたがどうしてここに……?!」


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