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彼は厄介な皇子様  作者: 秋月みお
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第19話 思いもよらない告白


「……?」

 私の部屋のベッドの上から、セオの自室のベッドの上に移動している。

 突然入ってきたユイから逃げるように、ここに瞬間移動してきたようだった。

「はぁ……」

 セオの面倒そうな呆れたため息が聞える。

「悪い、つい……」

 片手で顔を覆い隠し、不機嫌な顔を私から逸らした。

「お前の部屋は、邪魔が入るな」

「……」

(キスするところを見られそうだったから移動した? それとも、ユイから逃げた……?)

 私は思わず、動揺しているセオを見入ってしまう。

 セオは、その能力で誰がどのタイミングで来るのか、知ることができるはず。

 お昼のハンナも、

 セオが初めて伯爵邸に来た時のお父様も、

 病室に来る恵だって、先々から気が付いてた。

 なのに。

(ユイは、違うってこと……?)

 ひとつの答えが導かれたとたん、

「ひゃっ!」

 私はセオに組み敷かれた。

「え……、セオ?」

 覆いかぶさるセオの瞳が、真っ直ぐ飛び込んでくる。

「余計なことを、考えなくていい」

「……っ」

 セオのキスが首筋に落ちて、ビクっと体が揺れた。

 触れる首筋に、セオの温もりがゆっくり伝わる。

「ちょっと……っ」

 セオに抵抗しようと身じろぎするが、セオの手にしっかり捕まれている私の腕は動かない。

「それより、リリア」

 艶っぽいセオの声色が耳元で囁かれて、ぞわッとする。

「……きょ、今日は、無理ですっ、もう」

「……」

 セオの優しいキスを軽く拒否するように体や顔を避けるようにしながら、ギュッと瞳を閉じ、やっとのことで口にした言葉に、セオの動きが止まる。

「だから、今日はちょっと……」

 はぁ…っと吐息交じりに訴えると、セオの顔が私の目の前で赤く染まり、歪む。

「お、お前……、可愛すぎるだろ」

「んっ……!」

 急に唇を塞がれて、声が漏れる。

「なんだよ、その表情はっ! 俺を煽るのは止めろ」

 セオが困ったように声を上げるので。

「あお……っ! 煽ってません」

 と、私は慌てるが。

「明日は我慢してやる。今日は、ムリだ」

「……っ」

 余裕ないセオの瞳が、ギュッと私の胸を掴んだ。

「セオこそ……。そんな、顔で……、言うのは反則です」

 緩んだセオの手から逃れた私の手は、自分の顔を覆い隠した。

「なっ! ……お前はっ」

「きゃぁっ!」

 その手は簡単にセオに剥がされ、

 セオの余裕ないキスの嵐に、

 その夜も更けていった。



「……」

(ああ、結局拒めず、シてしまった……)

 起きたセオのベッドの中でうな垂れる。

 体はだるいけど。

 ふと頭をよぎった記憶が、思わず自分の体を確かめてしまう。

 確認して、ホッと息をつく。

 新しい痣は無かった。

(若い子と付き合うって、こんな感覚なの?)

 よく見かけた、年下の彼って設定の漫画を思い出し、頭を抱える。

「……」

(結局、ユイのことをはぐらかされた感じだな……)

 セオの寝顔を眺めながら、小さなため息が出た。

(そんな嫌がって話したくない事って、どんな事なんだろう……)

 と。

 思っていた答えは。

 意外に、

 すぐに出た。


「……」


 朝の身支度の手伝いに来てくれたヘレンとユイ母娘。

 の、ユイが、手にしていた桶の中に入っていたお湯をぶちまけて、ベッドの上でずぶ濡れなセオを、私は呆然と眺めていた。

(イヤ、寝ていたからって、セオなら避けれたはずじゃぁ……?)

 セオもセオで、何が起こったのか理解できずに、ベッドに横になったまま、ずぶ濡れなこの状況に唖然としている。

「……」

(こんなセオ、なかなか見れない、レアよね)

 私が平静を取り戻してきた頃。


「きゃ―――――っ! すみません、殿下っ! 今、タオルを! うわっ!」


 ユイの悲鳴と、何かがぶつかる音がする。

「わっ! ユイ?!」

 セオの自室の前で、セドリックとぶつかっていたようだった。

 この日を境に。

 なんとなく、気が付いたことがある。

 ユイはおっちょこちょいで、どんくさい。

 そして。

 そのすべての被害が、ほぼセオに向けられるのだ。

(私の、侍女として来たはずなのに……)

 ありとあらゆるものをぶちまけられ。

 ことごとく、私と過ごす甘い時間に水を差し。

 五日が過ぎた、今日。

 とうとう、セオの堪忍袋の緒が切れた。

 セオの体が小刻みにわなわな震える。

「これだから、お前は……」

「……っ」

 ユイが察して目をつぶった時。


「帰れ――――――っ!!!!!」


 セオの、不機嫌な大声が皇子宮の庭に響きわたっていた。

「お前は、昔からっ!」

 ガミガミ続くセオの小言に、ユイがその身を縮ませてお叱りを受けている。

 セオの声が皇子宮に響き渡ったおかげで、セドリックをはじめとした皇子宮の関係者たちが私たちの元に駆けこんできた。

 何も出来なくて、ただ二人の様子を見守っていた私の隣に、セドリックが立ち止まる。

 セオがユイに怒りをぶちまけているところを見て、セドリックが苦笑する。

「あは、懐かしい光景だなあ」

 と。

 聞けば、皇子宮に来る前までは、見慣れた光景らしい。

 人の心を読めるセオも、天真爛漫で無邪気なユイの行動は把握が難しいらしく、対応出来ないことが多いらしい。

 それが、セオがユイを苦手とする理由。だった。

「……」

 私も呆れながらその様子を眺めていると、エースが私にこそっと尋ねる。

「殿下はどうしてあんなにお怒りに?」

「え……?」

 ドキッとして、私の顔が引き攣る。

(私との時間をあまりにも邪魔するから、なんて……言えない)

「まあ、ちょっと」

 と、誤魔化す私の横で、セドリックが笑う。

「そんなの、リリア様との時間を邪魔されたからに決まってるだろ? こっちに戻られてすぐだし。お互いの気持ちを確かめられて、今一番、燃え上がる時期でしょうから」

「え、あの……、セドリック様?」

 セドリックの言いように、私の頬が紅潮する。

(あなたは、どこまで把握してるの……?!)

「ああ、恋愛に関しては、僕の方が殿下より先輩ですからね」

 あわあわする私を見て、セドリックが片目をつぶる。

「……っ!」

(ウィンクした……! セドリック様が?!)

「えっ! セドリック様、彼女がいらっしゃるんですか?」

 言葉に大きく反応したのはエースだった。

「ん? 結婚してるよ、僕」

「え!」

「うそだっ!」

 私とエースの驚いた声が同時に上がる。

「セドリック様、結婚されてるんですか?!」

「え? 家族がいるの? ほぼ一日、皇子宮に居るからてっきり……」

 信じられないと、それぞれに向けられる視線に、セドリック様は苦笑する。

「あ、ほら。彼女も皇子宮に仕えているので。そこに一緒に住んでますけど」

 そこ、と、指さされたのは、庭先にある、使用人たちのお家。

「え! 誰ですか?!」

 食い気味のエースに、セドリック様は少し引きながら。

「うん、侍女長の、ハンナだよ。僕のお嫁さん」

「……」

「……」

 笑顔で告げられた思いもよらない名前に、私もエースも、固まってしまった。


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