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彼は厄介な皇子様  作者: 秋月みお
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第17話 不安の種


 すーぅ……


 静かに消えていくスコット様を眺めていて、ぶるっと体が震えた。

「……」

 青ざめる私の腰に手をまわし、セオがさらに私を引き寄せる。

「大丈夫か?」

 心配そうに覗かれるセオの瞳を見上げ、どこかホッとした。

「……あの感覚は、二度と体験したくないと思って」

 下に引きずられるよな、落ちていく感覚。

「う……」

(気持ち悪い……)

 セオの胸の服を思わず握りしめる。

「……」

 そんな私を、セオは優しく包み込んでくれた。

 その温もりが心地よくて、私はセオにその身を任せてしまう。

「……幸せになってくれるといいナ」

 私のつぶやきに応えるように、セオが耳元で囁く。

「いつか、覗きに行こう」

「そんなこと、出来るの?」

 驚き顔を上げる私に、セオは笑う。

「お前が居れば、多分な」

 その穏やかな声に、見つめられる瞳に、

「……うん、落ち着いた頃に、連れてって」

 と、私は安心するように、小さく頷いていた。

 

 スコット様を見送った後。


「バタバタしてしまいましたね。お茶でも用意しましょう」


 と、執事のエドワードに促され、そのままセオの自室で私たちは休憩も兼ねたお茶をすることになった。

(まあ、確かにいろいろと辛い……)

 思わず体を擦ってしまう。

「……」

 ふと、私は隣に立つセオを見た。

(……本当に、戻って来れて良かったな)

 セオの顔は整っていて、かっこいい。

 そのたくましい体も……。

「!」

 セオの感触を思い出し、体がカッと熱くなる。

(何思い出して……っ!)

「……フッ」

 急にセオから笑いが漏れて、ビクッと私の体が揺れる。

(あ……、声に出さなくても聞えるんだった)

 思わず顔を隠していた両手の隙間からそっと見上げる視界に、不敵に笑うセオが映る。

「うっ!」

 恥ずかしくって、慌てて顔を逸らしてしまう。

(逃げ出したい……)

 衝動にかられた。

「きゃっ」

 急にセオに抱き上げられて、私の口から小さな悲鳴が上がる。

 瞬間的にセオの首に抱きついた私の耳に、セオが囁いた。

「逃げたら、俺が傷つく」

「……っ」

(逃げないけど……っ)

 追い詰められていく感覚がして、セオにしがみつく私に、

「リリア」

 と、セオが私の名前を呼んだ。

「な……、なに?」

 ゾクッとする囁きにどぎまぎする私を、セオは愛しそうに抱きしめ返した。

 こぼれるセオの笑みが、妙に私の胸をドキドキさせる。

 セオに抱き上げられたまま、私たちはソファーに座った。

(う……、なんか、セオが艶めかしい)

 セオの肩に顔をうずめ、ドキドキする顔を見られない様にしてしまう。

「首、締めるなよ?」

「え、あ、ゴメン」

 思わず腕に力が入っていたことに気が付いて慌てて離れる私を、セオは留めるように私の後頭部に手をまわし、もう一度抱きしめた。

「……セオ?」

「自分が、こんな感情を持つなんて思ってもいなかった」

 甘く囁かれる言葉が、くすぐったい。

「……うん」

「好きだ、リリア」

 セオの言葉が、ドキドキする。

「このまま、ずっと、くっついていたい」

「ひゃっ」

 急に耳を食まれて、変な声が上がってしまう。

「……ちょっとっ」

 逃げられない様に、セオの片手が私の頭を支えていた。

 数回耳を食まれて、ゾクゾクする刺激が全身に流れる。

 ビクつく私に、セオは満足そうにクスっと笑った。

 そのまま、セオの手に誘導されて、私はセオの肩に顔をうずめる。

 私は素直にそれを受け入れて、セオの背に回した手をしめ直した。

(はぁ……、疲れる)

 刺激から解放された体が、くたっとセオにもたれかかっていた。

 そんな私を自分の腕に抱きながら、セオの小さなため息が落ちる。

「スコットの件は、一週間もしたら彼の存在が消えてしまうから問題ないだろう」

「……そうですね」

 静かに話し出したセオの声を、私は何気に聞いていた。

「あとは……」

「?」

 憂鬱に漏れる息に、私はセオの顔を覗き込む。

「スコットが話していた事はどう思う?」

 セオの言葉に誘導されて、私は先ほどの会話を思い出す。


「待って。記憶を消しちゃう前に、君に伝えとかないと」

 スコット様が慌てたように私を見た。

「伝えたいことですか……?」

 キョトンとする私を、スコット様は見て頷く。

「僕とエダン。あ、大森のことね。で、リリア。あの事件に絡んだ三人が転生してたってことを考慮しても、その確率は少なくないとは思うんだけど」

「?」

 少し考え込むように呟くスコット様を、私は不思議そうに眺めていると。

「君、事件の事、何も覚えてないでしょ?」

 と、困ったような顔をする。

「……ハイ。多分」

 素直に頷く私に、スコット様は苦笑した。

「うん、思い出さなくて良いけど。あっちに行った時、犯人の話、出た?」

「……」

 私は、無言で頷いた。

 警察の事情聴取は出来なかったけど、大森君が教えてくれた。

 犯人の、あの通り魔の名前と、顔。

「この目で、確認してきました」

 スコット様を見て告げる私に、スコット様は小さな息をつく。

「あの時、あいつも、僕たちと同じようにあの時死んでる」

「え……?」

 スコット様の真っ直ぐな瞳が、私に向けられた。

「確かに、容疑者死亡で話が進んでるって聞いてましたけど、同時ですか?」

「うん。僕の目の前で、警察に撃たれてたから間違いない」

「……同じ時に」

 それって、と、見返す私に、スコット様はハッキリと言い切った。

「あいつも、ここに来ているかもしれないから。気を付けて」

 と。

「……」

「僕に、君たちが分かったみたいに、あいつも君が分かるかもしれない。逆も、ありえるけど。用心するに、越したことはないでしょ?」

「……分かった」

 頷く私を見て、スコット様はホッと安堵の息をついた。


「……」

 スコット様の忠告は、私が思いもよらなかったこと。

 隣で聞いていたセオも、気になったようだった。

 考え込んでしまった私は、

 むにっ

 と、セオにほっぺをつままれる。

「なっ、にしてっ」

 驚く私に、セオはため息をついた。

「一人で考え込むな」

「あ……」

 セオに言われて、私はハッとする。

 手が離れたほっぺを擦りながら、私は笑う。

「うん、そうでした。セオに隠し事は出来ないしね」

 と、暗い気持ちを吐き出すように、大きなため息をついた。

「私は、スコット様が同じ前世を持った人だって、分からなかった。だから、きっと私はわからないと思うの」

「……」

「相手も、分かるとは限らないし、そもそも、出会うかもわからないから。それは、その時考えればいいかと、思う」

 そう微笑む私を見て、セオは言う。

「俺をすぐ呼べよ」

「うん、頼りにしてます」

 心強い言葉だな、と、思っていると。

「じゃあ、目下のところ問題は、一週間後の晩餐会だな」

「一週間後?」

「ああ、婚約が発表される前に皇族が集められ、お前がお披露目がされる」

「……おひろめ?」

「顔合わせだな。親族が集まるから、叔父が来る」

 叔父、という言葉に力が入る。

 ざわッとする胸騒ぎ。

「……ルーカス公爵ね」

「ああ」

(皇帝の座を狙う公爵様、か……)

 顔を強張らせた私の頬に、セオがキスをした。

「え? セオ?」

「また、そんな顔を……。俺がいるから大丈夫だ」

「……」

「何度も言わせるな」

 フッと笑うセオの顔が近くて、胸がドキドキしてしまう。

「そんなに、怖い顔してた?」

「ああ」

「……」

 なんとなくむくれる私にセオの顔がさらに近づくと、唇が重なる。

 何度も重ねられるキスはそのうち深くなって、甘い時間がしばらく二人の間を流れていった。


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