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俺と壊れた世界と機械仕掛けの女神様  作者: 遠近
1章 こんにちは、壊れた世界。
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36 新生活

 まさかそんな機能まであるとは…。

 リバクロにはなかったはずなんだけど。

 それとも週末ログインしかしない俺が知らなかっただけか?

 いや、HABのギルドハウスになかったんだから実装されてなかったんだろう。


 そう頭の中をぐるぐると巡る考えをちょっと置いといて、俺は部屋作りシステムに注視した。


 基本パックという名の、部屋のトータルコーディネートができるセットがいくつか用意されていた。

 こういうのとても助かる。

 憧れの間接照明、ガラス張りのローテーブル、そんなアイテムを思いつくままに設置したら、俺のセンスでは大事故になる未来しかない。

 落ち着いたとか、大人のとか、憧れはあるものの、俺はもうシンプルにいくしかない。

 それにお洒落な部屋は掃除が面倒くさそうだ。

 黄色のセットはシズが使っていた。

 それをちょこちょこいじってあの部屋になったっぽい。

 オシャレレベルが低い俺はその策に全力で乗る所存。

 目に優しい緑?

 大人の落ち着きアピールで青?

 安定のモノトーン?


 ここで俺は現代での俺の部屋を思い出した。

 壁紙は白、床は普通のフローリングだった。

 そしてそこにある家具は黒。

 家電は白。

 見事に色気のないモノトーンだ。


 ならばこの世界では冒険したっていいんじゃないだろうか?


 ただな? 冒険の仕方がわからないんだぜ?

 いきってもジキルに「ださっ。」って言われて終わりそうだ。

 シズにまで目を逸らされたらもう、俺のメンタルぼろぼろよ。


 ならばモノトーン一択しかない。

 そのセットを選択すると、壁紙が白に、床は暗めのフローリングに変化した。

 そのまま黒い家具が設置された。

 フレームの黒いベッド、暗い灰色のソファとローテーブルのセット、そして黒いチェスト。

 ところどころに銀色の金具がついているせいでそこまで重たくはない。

 うん、何がダメなのかわからないし、場所の良し悪しもわからない。

 つかってみてダメだったら物を変えたり移動したりすればいいんじゃないだろうか。

 その前にジキルに鬼のようにダメ出しされそうだ。

 

 うん、潔くオシャレ人間に頼ろう。


 そう決めるとスッキリして、ベッドに横になった。


 もう外は日が落ち始めている。

 今日は本当に色々あった。

 水槽から出されたと思ったらサービス終了したゲームの世界。

 それも500年以上経ってるとか。

 アニメや小説で見る召喚や転移とは一味違った復元。

 どう考えてもゲームのサーバーデータからのサルベージとしか思えないけれど、そんなんで普通に生きているのが謎だ。

 リアルの俺はどうなっているんだろうか?

 こんな状況なんて知らないで、普通に生きてるんじゃないだろうか?

 でも、今、この世界で俺は俺である自覚がある。

 そして、ジキルとシズとの出会い。

 2人はこの世界についてどう思っているんだろうか。

 2人はあのままログアウト出来たかもしれないのに、俺の話を聞いて残った。

 シズには聞いたけれど、ジキルにもリアルで何かあったのかもしれない。

 俺はどうだろう?

 毎日働いて家に帰って寝るだけの生活。

 週末と休みの日は買い出しとリバクロだった。

 リバクロのなくなったリアルの俺はどうしているんだろうか?


 


 そんなことを考えていたら寝ていたらしい。

 シズとジキルが俺の顔を覗き込んでいた。


「セイジ起きた。」

「見ればわかるよ。バルミエさんが、邸で夕飯どうですか?だってさ。」


 ジキルも作業着とは違う格好に着替えている。

 今度もフリヒラしているが色は白っぽい。

 そして今度はツインテールだ。


「いけそう? この家まだ食べ物何もないからできれば食べときたいんだけど。」


 頷けばジキルが手を差し出してくれて、その手を掴んで起き上がる。


「これからは自炊メインかもしれないし、いい物食べておこうぜ?」

「うん。」


 シズも賛成のようだ。


「オムツドラゴンに聞いたら、カップ麺ないって。大変。」

「…そう。」


 まだ、バルゾフさんのこと、それで呼んでるのか。

 ちょっと呆れつつ相槌をうつとシズはまた頷いていた。


「シズ、バルゾフさんのことまだそれで呼んでるんだよ? あのおじいちゃん、目ん玉かっぴらいてたんだから。」

「え…また喧嘩にはならなかったの?」

「それがシズが全く相手にしないせいでならないんだよ。」


 後でバルゾフさんに謝っておこう。

 俺は堅く決意した。


「ごはんごはん〜。」


 ウキウキしているシズを見て思う。

 この子は俺とジキル以外、頑なに固有名詞で呼ぼうとしない。

 フリオさんは銀髪ドラゴンだし、アミナさんは赤ネコだ。

 その辺も色々あるんだろうが、今はとりあえずお腹がすいた。


 シズの先導の元、倉庫のそばにある使用人用らしい扉から中に入る。


「さっきシズと探検したんだ。お風呂すごい広かった。」

「ドラゴンが水吐いてた。」

「え、何そのマーライオン。」


 ジキルとシズの探検の成果を聞きながら、そのまま食堂へ。

 先ほどはいなかったメイドさんがその扉の前にいた。

 ロングの黒いメイド服。

 ちょっとときめくが、おそらくこの人もドラゴニュートだ。


 そこで気付いた。

 2人ともケモ耳はつけたままだが、シズはワンピース、ジキルはフリヒラしているがジャケットを着ている。

 それに対して俺は初心者アサシンセット。

 これ、ドレスコードアウトでしょう。

 そこで思いつくのは、装備セット3の一般人擬態セットだ。

 ベストにジャケット、ネクタイは締めていないけれどまだマシだろう。

 それにあれにスクリロメノンは含まれていない。

 一瞬にして着替える。

 もちろんケモ耳は残したまま。

 視界の端でメイドさんが一瞬ピクッと反応したが、何も見ていません聞いていませんの態度を貫いていたのでセーフ。


「うん。ネクタイないのが残念だけど、こっちの方がマシだね。」


 ジキルのチェックが即入った。


「すみません、バルミエさんに呼ばれて来ました。」


 そしてそのままメイドさんに話しかける。


「お待ちしておりました。」


 そう言うとメイドさんが扉を開いた。

 室内には想像通りの金持ちの食卓。

 なっっがいテーブルにフリオさんが座っていた。


「おや、セイジさん着替えたのかい?」


 その後ろにはバルゾフさんが控えている。


「いや、こちらのドレスコードがわかりませんで申し訳ありません。」


 室内にいたメイドさんに促されるまま席につきつつそう言うと、フリオさんは笑った。


「そんなもの気にしないでください。食事は気楽に食べようじゃないですか。」


 フリオさんの左手側に俺。

 右手側にジキルとシズが並ぶ。

 フリオさんが合図を送るとメイドさんたちが配膳を始める。

 どうやら現代のコース料理みたいな感じだ。

 テーブルマナーなんて大昔にチラッと研修でやっただけで、記憶はあやふやだ。

 そもそもそのテーブルマナーが通用するのかもわからないが。

 チラリとシズとジキルを見れば、2人とも不安そうな顔をしている。

 そんなやりとりを見てフリオさんが苦笑する。


「マナーを学びたければバルゾフに習うといい。とりあえず今は…食べようか?」


 バルゾフさんも頷く。

 そのやりとりで力が抜けたのだろう。

 ジキルに笑顔が戻った。

 が、すぐ真顔になる。

 どうしたのか心配すると、俺の目を見てジキルは言った。


「あのさ、セイジの部屋、ひどくない? やばいよ? せめて観葉植物でも置きなよ。」


 え、今その話する?

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