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俺と壊れた世界と機械仕掛けの女神様  作者: 遠近
1章 こんにちは、壊れた世界。
36/47

35 建立!俺たちのギルドハウス!

「へぇ〜…っ。」


 なんとも情けない声だが、フリオさんの声なんだぜ?


 俺が目を開けると、そこには先ほどまでなかった家が出来上がっていた。

 倉庫と合わせてえんじ色の屋根にクリーム色の壁なので馴染んではいる。


「がわはできたけど中はまだだから…とりあえず入ろっか?」


 そうジキルとシズに声をかけると、2人は目を輝かせて俺の腕にしがみついた。


「すごい! 僕たちの家!」

「家!」

「内装なんかはたぶん直せるから、見て気に入らなかったら教えてね。」


 そう言っても聞こえているのかいないのか、2人の視線はギルドハウスに吸い付けられている。


「これは何とも面妖な…本当にぼっちゃまのおっしゃる通りで…。」

「な? 言った通りだろう? 建築予定地って看板のついた目隠しが出たと思ったら、何の音もせず家が建ってしまうんだ。」

「あの目隠しの中、何が動いた気配さえないのですよ!?」


 あ、やっぱりゲームシステム通りなんだ。と、フリオさんの発言からわかる。


「こんな…え、資材はいつ運び込まれたわけ!? 職人は!? それに時間よ、時間!」


 アミナさんもわけがわからないと家と俺を交互に何度も見ている。

 そう見られてもどんな仕組みか知ってるわけないじゃん、システムなんだもの。


 シズとジキルに両腕をとられ、引っ張られるようにギルドハウスに入る。

 玄関から真っ直ぐ開けた空間。

 その周囲に扉が並ぶ。

 右側手前だけ扉がなく、その中にはシステムキッチンがあった。


「キッチンじゃん!」


 ジキルが走って中に入るのをシズと追う。

 何も入っていない戸棚を開けたり閉めたりしているジキルは楽しそうだ。


「…ねぇ、セイジ?」

「なんだ、シズ?」

「セイジは料理できる?」

「簡単なやつならな。」

「…ならよかった。私カップ麺なら自信ある。」


 シズ、それは自信を持っていいものじゃないと思うぞ。


「僕、お菓子しかつくれないからセイジよろしくね!」


 え?

 

「お菓子作れるのすごい。」

「セイジがご飯作れるみたいだしよかったよ〜。」


 2人はキャッキャしているが、飯を作れないとは…どうしよう。

 まぁなるようにしかならないか。


 再び中央の空間に戻ってくると、今度はそれぞれの個室が気になったようだ。

 キッチンの隣にジキル。

 その正面にシズ。

 シズの隣、玄関を入って左にはトイレがあり、2人ははしゃいだままそれぞれのスペースに行った。

 ドアが2つあって、片方が私室、もう片方がアトリエだ。

 一応中で繋がっているので、どう使うかは本人次第だろう。

 俺も自分のスペースを確認した。

 広めな方をアトリエに。

 狭めな方を私室にすればいい。

 あとは問題は家具だ。

 錬金術で何か作れればいいんだけど、リバクロには家を充実させるようなシステムがなかったせいでレシピがない。

 最悪DIYだ。

 そんなことを思いながら中央の空間に戻ると、玄関のドアがノックされていることに気付いた。

 何だろうと思いドアを開けると、フリオさんにバルゾフさん、アミナさんが揃っていた。


「すまないね…何故かドアが開かなくて…。」

「…あっ。」


 思い出した。

 ギルドハウスはそもそもギルドメンバー以外は入れない。

 他ギルドと話し合いをするなんて場合は、その都度入室許可を出す必要がある。

 慌てて3人に入室許可を出し、改めて中に入ってもらう。


「おぉ….これが謎の家の中。初めて入ることができたよ。」


 まだ何もない空間だが、フリオさんは感激している。


「本当に家ができている…。」


 ドアが6つ並んでいるだけの空間だが、まぁあの短時間でできる建築物ではないな。

 ちなみに俺たちの個人スペースの間には倉庫と風呂がある。


「ちょっと何よこれ!?」


 アミナさんが叫んだのはキッチンだった。

 まだ何もないはずだけどとそちらへ行くと、アミナさんはシステムキッチンにご執心だ。


「キッチンですね。」

「どんな魔道具よ!?」


 電力をどこから引いてるか皆目検討もつかないが、IHの三口コンロだ。

 シンクも試しに蛇口を上げてみればちゃんと水が出る。

 これもどこから水道を引いているのだろうか。


「なにそれ水を出す魔道具!? それになによこの箱! …あら、中は冷たいのね。」

「食料を保存しておくやつですね。」


 うん、冷蔵庫だ。

 冷凍庫に野菜室もあるしっかりとした作りの冷蔵庫。

 

「なによ、今度は氷の魔道具だっていうの!?」


 これは嫌な予感がする。

 風呂トイレも散々突っ込まれそうな気がする。

 何故かシステムキッチンに冷蔵庫、これらがどう見ても日本のものがベースになっているからだ。

 もしや、俺がギルドハウスを建てたせいで、俺の記憶がベースになっているんじゃないだろうか。

 そうなれば風呂やトイレも日本基準だ。


 キッチン前のカウンターのスツールに腰掛け、アミナさんが拗ねたように言う。


「何よこんなデザインのやつなんてみたことないわよ。」


 アミナさんが言うには、基本一般家庭にキッチンはないらしい。

 皆、食事は外で食べるか買ってくるかなんだそうな。

 フリオさんみたいな上流階級の人は家にキッチンがあり、そこで働く料理人を雇っているとのことだ。

 家にキッチン的なものがある一般家庭といえば、昔ながらな生活をするエルフとかの家の竈門がそれにあたるそうな。

 申し訳ないが現代人なので、火起こしとかできる気がしない。


「ねぇ、もしかしてバスルームとトイレもすごいんじゃないでしょうね!?」

「…さぁ?」


 俺の記憶ベースならば、おそらく風呂には追い焚き機能があり、トイレは温水洗浄便座なはずだ。

 あれは確実にアウトだろう。


 アミナさんはすくっと立ち上がるとキッチンから出る。


「で、トイレは!?」


 俺は色々諦めてアミナさんを案内した。

 勿論その後ろからウキウキしたフリオさんと、それに付き従うバルゾフさんもついてきている。


 玄関を入って左側。

 おそらくトイレだろう場所のドアを開ける。

 右手側に手洗い場。

 その下は収納だろう。

 そして真ん中に鎮座する温水洗浄便座。


「ねぇ…なにこれ? トイレだと思うけど見たことないんだけど!?」


 案の定な様子に掻い摘んでトイレの説明をすると、アミナさんよりフリオさんが食いついた。


「これがヒューマンの技術力ということかい!?」

「…さぁ?」

「このボタンはなんだい!?」


 止めないと顔面ウォシュレットをしでかしそうなので一応止めといた。

 バルゾフさんにしばかれたらたまったものじゃないし。


「次はバスルームね!」


 そうアミナさんが言うと、そのタイミングでシズの個人スペースのドアが開いた。


「あれ、アミナじゃん。どうしたの?」


 ジキルだ。

 そしてその横のシズは満足そうだ。


「どうしたもこうしたもないわよ!? なんなのこの家! 見たことないキッチンにトイレ! 魔道具ばっかりじゃない、いくら掛かってるのよ!?」

「う〜ん、細かいとこはセイジがやってくれたからよくわかんないんだよね…。」


 丸っと全てぶん投げてきたジキルに恨みを込めて視線を送るが、その明るい笑顔に跳ね飛ばされる。


「それよりセイジ見てよ! シズの部屋、なかなかいい感じになったんだから!」


 家具もないのにいい感じとはなんぞや?

 そう思って室内を覗くと、そこにはおとなしめな女の子の部屋があった。

 壁紙はクリーム色、床は明るめの木。

 あとは床より少しだけ暗い木製のベッドや机、本棚、箪笥などが並んでいる。

 中央には大きな長めの毛のラグが敷かれていた。


「自分の部屋は裸足がいいから土足厳禁。」


 そういうシズは既に裸足だった。

 服もいつの間に着替えたのか楽そうなワンピースを着ている。


「僕も自分の部屋、かわいくしよーっと。」


 そう言っていつの間に出したのかサンダルに足を入れるとジキルは向かい側の自分の部屋へと向かっていった。


 おい、あの家具どこから出した。

 俺にもくれよ!?

 そう思っていたら、シズに袖を引かれた。


『シズ:個人スペースに入ってメニューいじるといろんなアイテムがあって、部屋いじれる。セイジの部屋楽しみ。』


 何その機能!?

 俺もウキウキと自分のスペースにダッシュした。

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