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俺と壊れた世界と機械仕掛けの女神様  作者: 遠近
1章 こんにちは、壊れた世界。
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09 ロストテクノロジー

 目付きのおかしいフリオさんがとにかく怖い。

 浪漫紳士とか言ってる余裕はなくて、ただ狂いかけのドラゴニュートって感じだ。

 間違った発言をしたら、冗談じゃなく頭かち割られそう。


 それでも俺の頭の中はこの水晶の中のアーケインでいっぱいだった。

 どうみてもリアルLINDAの林田茜ちゃんの顔。

 それでも水晶ごしだし、何より1度しか会ったことがない。


「この水晶の分析とかって済んでるんですか?」

「分析?」

「この水晶をどけないと…女神様本体を調べられなくないですか?」

「あー……鑑定でも出なかったし、傷1つつけられないんだよね。」


 そうだ、この世界『鑑定』もクソだった。


 となると、問題はこの世界の工具に使用される金属だ。

 リバクロでは銅や鉄なんかの普通の金属の他にファンタジー恒例、ミスリル、ヒヒイロカネ、オリハルコン、アダマンタイト、ダマスカス鋼とあった。

 その他にもリバクロオリジナルだろう、スクリロメノンという最上位武器を作るのには欠かせない金属もあったが、あれは一般流通なんてしていない。

 更にそれらの合金、属性付与までいれるとかなりの量になる。


「何で掘削しようとしたんですか?」

「ミスリル製のドリルだね。」


 ミスリル。

 あれは別に硬くない。

 炭素をごく少量含んだ鉄よりは硬いけれど、だったら物によるけどダイヤモンドの方が全然硬い。

 単純な硬さならアダマンタイトやダマスカス鋼のほうが向いていると思う。

 まぁ、スクリロメノンには勝てないだろうけど。

 

「もっと硬いやつはないんですか?」


 フリオさんは俺をじーっと見ると笑った。


「やっぱり、君は金属に知識があるね?」

「いやいや、ドワーフには負けますよ。」


 そう、ドワーフ。

 圧倒的鍛治への適性持ちの種族だ。

 NPCだろうけど、ドワーフの多く住む鉱山都市にある店には時価と書いてある武器があって、あれはアダマンタイト製だとの話だった。

 ならば、ミスリルより硬いドリルを作れるドワーフがいてもおかしくはない。


「それが、ここで使ったミスリル製のドリルもドワーフが作ったやつなんだよね。」


 そうだ、NPCも消えたんだった。

 ならば、この世界の本来の鍛治がどのレベルかわからない。


「鉱山都市に行ったことは?」

「あります。」

「ならば、行ってもあまり期待しないことだ。」


 確かにドワーフの総本山の鉱山都市に行ったことはあるが、あそこに期待もクソもないと思う。

 幾重にも連なる鉱山の山肌に穴を開けたり、掘った坑道を活かして暮らしていたドワーフ。

 王城はドワーフらしく金属製でかっこよかった記憶があるが、いかんせん鉱山の中にあるせいでそこまで高さがない。

 むしろ山上に王城のがわがあって、中に入れば上ではなく下に向かって広がっていく、そんな城だった。

 まぁイベントで数回しか入ったことはないけれど。


「今や真面目に鍛治を行うドワーフの方が少ない。」

「え、何でですか?」


 種族的に職人気質な人が多いはずだ。

 腕に比例するように酒を飲みまくるけれど。


「例の件で鉱山都市は焼失があっただけで焼けはしなかった。女神はヒューマンが作り出したもの、関わったものを焼き尽くしたからね。飛び火はもちろんたくさんあったけれど。」


 ドワーフの街だ。

 ドワーフのプレイヤーもいたけれど、皆あそこにはまず住まない。

 あそこだけだと鍛治の材料がそもそも足りないし、プレイヤーがゲームを始めた時点で既にあの街は完成されていて、新しい家なんて建てられなかったからだ。


「あれから100年くらいは頑張っていたんだよ? でもね、1人、また1人と諦めていって、もう本物を見たことがある人がいなくなっちゃったんだよね。」


 頑張る?

 本物?


「ヒューマンを囲っていた人たちの中でも強いやつだけが持っていた武器に使われていた金属さ。」


 あ、スクリロメノンですか。


「どこのドワーフがうったんだってなったんだけど、蓋を開けてみれば、それは皆ヒューマンを囲っているドワーフだった。不思議なもので、そのドワーフたちはどこの出身かわからない。おそらく、彼らの生まれたか育ったかした地の固有金属だったんじゃないかと言われている。」


 あら、壮大。

 あのドワーフたち?

 セルフィオーネさんたちが俺を復元したデータに眠っていると思うよ!


「それをドワーフたちは再現しようとしたんだ。名前もわからない金属をね。」


 スクリロメノンは、ドワーフにはちょっと無理だと思う。

 あれ、厳密には鉱石じゃなくてしかも高ランクの錬金術師に錬金してもらう必要がある。


 そう思った瞬間、思い出した。

 ビーノからもらったアイテムに、結構な量のスクリロメノンの原材料があったことを。


「他にも名前がわかっているオリハルコンやアダマンタイト、ヒヒイロカネにダマスカス鋼も研究された。」


 ヒヒイロカネはまず無理だと思う。

 あれ、「異世界の神々」っていうイベント限定のレアアイテムだし、そもそも和風の武器作るのにしか使えないから需要がない。

 出来た武器も装備も赤くていい感じなんだが、コーディネートしにくいという最大の弱点があり、初期からやっているプレイヤーしか持っていないというプレミアはついていた。

 が、これもビーノとアカツキから大量にもらった。

 2人とも


「いつか復刻あるかもしれないし、第二弾くるかもしれないじゃん!?」


 と、鬼死蔵させていたからな。


「オリハルコンはなんとかなったんです…ですが、あれは武器には向かないでしょう。」

「えぇ、アクセサリー用って感じでした。」

「アダマンタイトは鉱石があるという文献が発見されましたが、探索はされましたがどこにその鉱石があるのかまではわからず…ヒヒイロカネは赤いということしかなく、本物を見たものがまず少ない。」


 概ね予想通り。


「ダマスカス鋼は鋼と名がつくものなので研究はされていましたが、未だその硬さを出せる鋼は出ず。」


 そりゃそうだ。

 現代でも本来のダマスカス鋼は再現できていない。

 リバクロ内では特殊な鉄鉱石を得ることから始まるので、鑑定が使えないと話にならない。

 と言うことは、俺も鍛治スキルをとってもダマスカス鋼は作れないということになる。


「セイジくん、君、どれか作れたりしませんか?」

「残念ながら、鍛治師ではなかったので…。」


 うん。俺嘘言ってない。

 俺、マサハル(ヒューマン)の方はストレージとアサシン。

 メインでドラゴニュートのセイジは竜騎士と錬金術師だったもん。

 LINDAのもアカツキのもμのもビーノのも、スクリロメノン作ったの俺だけど。

 そして皆ビーノに加工してもらった。


「友人にドワーフの鍛治師がいたんで。」


 フリオさんは残念そうにため息をついた。


「ご友人ということは…例の件でセイジさん同様消えている。ということですね。」

 

 こんな感じの世界ならば、あの鍛治の腕を持つビーノなら無双できただろう。

 俺はフリオさんに気になっていたことを聞いた。


「あの、俺を復元したデータみたいなので他の種族もできないんですか?」

「実は…まず、どれがヒューマンかが区別がつかないんですよ。研究所の皆が規則性や様々な条件でやってはいるものの…タンクの前の培養の段階で育たなかったものがヒューマン以外だというのが1番有力な仮説です。」


 確かにIDをどう分類するんだと言う話だ。

 しかも、そのIDはメインとサブの2キャラで共有されている。


「…復元体2体の内、どちらかが鍛治師の可能性にかけるしかないか…。」


 復元体を起こす。

 ならばジョブを片方捨てさせるしかない。

 ジョブを片方『ストレージ』でなくさせれば、おそらく彼らは動けるようになる。

 手持ちのアイテムを大幅になくすというデメリットがあった上で。

 だが、このまま耐えれば彼らはあと数時間で元の世界、リアルに帰れるのだ。



 これはもう本人に選択してもらうしかない。

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