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神ノ狂気  作者: 古芹坂 琉輝
第2章 神界と十聖神
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19.崩壊


「な、何だ!?何で急に壁が壊れたんだ!?」


「ちょっ、これ大丈夫!?大丈夫なやつなの!?」


 轟音を立て、砂ぼこりを上げながら崩壊していく神ノ瞳( ゴッド・アイズ)の外壁を目にして、人間達はパニック状態だった。一体何が起きたのか、自分の身に危険が及ぶのではないかと、誰一人として冷静ではいられなかった。

 一方、後継神はというと……


「フラン、あれはもしや……」


「えぇ……やってくれたわね、あの馬鹿……」


 今起きている状況を理解したのか、フォルスとフランが頭を抱え項垂れていた。


「ガッハッハッハ!悪ぃな!呑み歩いてたらこんな時間になっちまってよ!来いって言われたの忘れるとこだったなぁ!」


 今もなお轟音を立てて崩壊を続ける外壁から、それにかき消されぬ程に豪快で荒々しい声が響く。

 見ると、砂ぼこりの中に大きな人影が見え、ゆっくりとこちらに向かって来るのが分かった。


おう!おめぇら待たせたな!今どんな状況だぁ!?ガッハッハッハ!」


 砂ぼこりの中から現れた中年の大男が、巨大な斧を担ぎながら豪快に笑う。

 人間達はその姿を見て一旦落ち着きはしたものの、あまりに唐突かつ一瞬の出来事に何が起きたのか全く理解出来なかった。


「……ガノン?」


 そんな中、サラが大男……ガノンという男に詰め寄る。

 明らかに怒っている。


「これは一体、どういう事……?何で壁を壊したの……!」


 どうやら、外壁はガノンが壊したらしい。

 つい先程までゼロとロアーの激しい模擬戦を見ていたとはいえ、後継神一人の力で神ノ瞳( ゴッド・アイズ)の外壁を壊したという事実に衝撃を受ける人間達だが、


「あぁ、丁度呑んでた店がこの近くでよ!とっくに時間過ぎてるし、待たせんのも悪ぃから、近道だ近道!」


 それは、あまりにもしょうもない理由だった。


「こんな大規模な破壊を伴うなら近道しないで!修理にどれだけ時間かかると思ってるの!?」


「あぁ?そんなの、あいつに頼めば一瞬だろ!あいつ!あー……クロノスだ、クロノス!」


「クロノスは遠征中だって言ったでしょう!?それに合わせた招集だって、何度も!!」


「あぁ?そういやそうだったな!すまねぇ忘れてた!ガッハッハッハ!」


 呑気に豪快な笑い声を上げるガノンに、溜まらずサラが頭を抱える。

 そんな状況を遠くから見て、落ち着きを取り戻したコザクラは、すぐ傍にいたフォルスに声を掛ける。


「えっと……誰ですか、あの人……」


「……可能であればお察し下さい。今は非常に頭が痛い状況ですので……」


 あの皮肉で口うるさいフォルスですら、説明を放棄した。

 どうやら本当に想定外の状況らしい。


おう!そいつらが呼び出した人間かぁ!俺ぁ破壊神シヴァの後継神、ガノンだ!ついでに闘技場魔技(まぎ )部門のチャンピオンだ!まぁ、死なないように踏ん張りな!ガッハッハッハ!」


 遠くでコザクラ達を見つけたガノンは、人間達全員に聞こえる程の豪快な声で名乗りを上げた。

 色々と気になる事は多いのだが、とても聞きに行ける状況でもなければ、距離も遠く、そして……威圧感が半端なくて怖い。誰も何も聞けなかった。


「はぁ……折角いい所だったのに、興が醒めちまったじゃねぇか」


「これでは、模擬戦どころではありませんね。ロアー、申し訳ありませんが、一騎討ちの続きはまた今度にして、今は外壁の修理を――」


「あぁ!?おいおい!おめぇら二人で決闘(デュエル)ぶちかましてたのか!?」


 ゼロとロアーの話を聞き、ガノンが意気揚々と割って入って来た。


「こいつぁ楽しそうだ!俺も混ぜろぉ!!」


 ガノンが片手で斧を大きく掲げると、物凄い勢いで光を発した。

 それは、ゼロとロアーが大技を繰り出した時のものよりも大きく、辺りの空気が一気に重くビリビリと震える程だった。


「ちょっ!待てお前!今そんな状況じゃ――」


「うるせぇ!!つべこべ言ってねぇで、始めるぞおぉぉぉぉ!!!!」


そのまま斧を勢いよく振り下げ、激しい衝撃が襲う。


「おい、ゼロ!面倒な事になっちまった!今は協力してこいつ止めるぞ!」


「えぇ、それが最善ですね!ガノン、申し訳ありませんが、大人しくして貰います!」


「やれるもんならやってみろぉ!!オラアァァァァ!!!!」


 こうして、ゼロとロアーの模擬戦、もとい一騎打ちは中断され、無理矢理乱入してきたガノンを止めるべく更に激し過ぎる闘いが始まったのだった。


「あー、もう……どうしてこうなるの……」


 サラがため息を吐きながらトボトボと戻って来た。

 そして、仕方ないと腹をくくったのか、人間のみならず他の十聖神にも視線を送りながら口を開いた。


「皆には悪いけど、本来ここで行う予定の説明や今後の方針、神界については個人に追って説明する事にするわ。十聖神の最低限の認知は出来たでしょうから、今日はそれだけにさせて。わざわざ来てもらって申し訳ないけど、これから私達はあの馬鹿を落ち着かせに――」


 説明をしている最中に、サラはある事に気が付き、言葉を詰まらせてしまう。


「ちょっとミコン!勝手に帰らないで!」


 何と、待機中に木陰で読書していたミコンが、どさくさに紛れてこの場を離れようとしていたのだ。


「えぇ……全員来たんだし、予定が先送りになるならいいじゃない。さっきから我慢してたけど、五月蝿くて読書に集中出来ないのよ。それにあの馬鹿まで加勢して、殺したい気分だわ」


「殺すのは駄目だけど、まずはガノンを止めるのを手伝って!ある程度の殺意は消化していいから!」


「嫌よ、面倒臭い」


 サラの説得を一蹴し、ミコンはそそくさと帰って行ってしまった。


「あぁ、もう……!フラン!フォルス!支援をお願い!エルとチェルは、人間達を寮棟に送ってから加勢をお願い!」


 瞬時に後継神達に指示を出し、それに四人が応えて動き始める。


「はぁ……拘束して禁酒命令でも出しますか」


「絶対聞かないわよ、何年も言ってる事だもの」


 ガノンに対する文句を言いながらニ人が構える。


「皆さんは戻りましょう!こちらへ~!」


「行こ~!私も早くあっちで騒ぎたいなぁ~!」


「騒いじゃ駄目ですよ、エルさん……」


 エルとチェルは迅速に人間達を纏め、寮棟へ誘導し始めた。

 二人に付いて行きながら、コザクラがぼやく。


「ねぇ、みんな……」


「はい」


「神様って……滅茶苦茶ですね……」


「うーん……」


 さっきまでの威厳は何処へ行ったのか、今度は纏まりのない乱闘騒ぎに発展。

 完全に、神に対するイメージが崩壊したのであった。



 2章 END

 3章へ続く

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