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神ノ狂気  作者: 古芹坂 琉輝
第2章 神界と十聖神
19/21

18.激闘


 突然の事に何が起きたのか分からず、人間達は目を瞑り、顔を腕で隠した。

 そんな状態の中、ゆっくりとゼロとロアーの方を見ると――


「反応が速いな。流石は騎士団長、ガードが固いな……」


「ロアーこそ、この速度と重さ……特攻隊長の名に恥じぬ力量ですね」


 ゼロが槍の柄で、ロアーの右脚の蹴りを防いでいた。

 先程の地響きと強風は、それによって発生した衝撃波だったのだ。


「ふん!」


 小言も束の間、ロアーが連続で殴りかかる。

 しかし、ゼロはそれを全て見切り、槍で防ぎ、時には紙一重で躱し、一切の攻撃を通さなかった。

 そして、


「はぁっ!」


 一瞬の隙を突き、今度はゼロがロアーの脇腹を狙い、槍を振る。


「くっ」


 ロアーは即座に反応し、脇を締めてガードする。

 しかし、不意の一撃によって微かに体勢が崩れ、その瞬間をゼロは見逃さなかった。


火龍槍(かりゅうそう)!」


 ゼロの槍が炎を纏い、ロアーに向かって連続攻撃を仕掛けた。


「やるな……!」


 今度はロアーがゼロの攻撃を防いでいく。

 連続で襲い掛かる斬り、突き、飛び散る炎をかわす。

 しかし、あまりの広範囲攻撃に全てを避けきれず、少しずつダメージを負いながら、じわじわと追い詰められて行く。

 そして、


「っ!」


 仕返しと言わんばかりに、今度はロアーがゼロの隙を突き、行動に出た。

 ロアーが突きをかわすと同時に、前屈みになってゼロに向かって突進し、そのまま右手を強く握って構える。

 ――殴られる。

 即座に反応し、ゼロは槍を引いて防御体勢に入る。

 その瞬間だった。


「なっ――!?」


 ロアーはその槍を左手で素早く掴んだ。

 そのまま力一杯、槍を引っ張るとゼロの体勢が崩れる。


絶襲脚(ぜっしゅうきゃく)!」


「ぐぅ!!」


 ガラ空きになったゼロの脇腹に向け、回し蹴りを打ち込むと、その一撃に耐え切れずゼロは吹き飛ぶ。

 しかし、吹き飛びながらも体勢を立て直し、槍を地に刺す。

 ガガガ、と音を立てて槍は地を斬り裂いて行き、それによって衝撃は和らぎ、次第に勢いは止まっていった。


「やりますね……!」


「まだまだ、これからだろっ!」


 そして二人は互いに突撃し合い、再び攻防が繰り広げられる。

 そのあまりの激しさに、人間達は驚き、呆気にとられる。


「な、何だよこの激しさ……俺達の知ってるスポーツじゃ、こんな風にならないだろ……」


「そうね、マナの無い人間界では実現不可能な戦いよ。しかも、あの二人は私達の中でもトップクラスの武闘派……その練習試合ですらこの激しさよ。本気を出せば、こんなものじゃ済まないわ」


「えぇ、十聖神は皆、戦闘スタイルや役職が違うにしろ、あの戦闘に入っていけるだけの実力を持っています。貴方達はそれ程の相手を敵に回したという事です。せいぜい、今後の選択と判断を見誤らない様、お気を付けくださいね」


 フランとフォルスが、まるで警告の様に冷たく言い放つ。

 しかし……


「わ、私はあんな闘いは出来ませんけど~……」


「チェルは治癒術士ですからね、肉弾戦は不向きでしょう。まぁ、言った手前ではありますが、僕も付与術士なので接近戦は苦手ですがね」


 チェルとフォルスは、激しい戦闘を行うのは苦手なようだ。

 ただ二人共小柄な体格な為、見た目通りではある。


「はぁ……はぁ……」


「くっ……」


 激闘はその後も続き、どちらもダメージが重なり、息を切らす。

 そんな二人に、審判のサラが声を掛ける。


「二人とも、まだいける?」


「当然だ!」


「当然です!」


 ゼロもロアーも、 笑いながら答える。

 すると……


「な、何……?凄い光が……」


 ゼロの槍には深紅の光が、ロアーのガントレットには漆黒の光が集い始めた。

 そして、膨大な力が溜め込まれているかのように、次第にその光は強く大きなものとなる。


「大技が来る……勝負に出るようね」


「おぉ!いけいけ~!どっちも頑張れぇ~!!」


 フランの冷静な一言に、エルはテンションが上がって大声を上げる。


「狙ったら逃がさねぇ……!血に飢えし猛獣、骨まで喰らい尽くせ!」


「灼炎よ、我が(つるぎ)となれ!悪しきを滅し、覇道を貫く!」


 そして――


覇王劫咆牙(はおうごうほうが)!!!!」


炎緋滅導斬(えんひめつどうざん)!!!!」


ロアーが右腕から放った衝撃波が、巨大な狼の姿と化してゼロに向かい襲い掛かる。

ゼロが炎を纏った槍を大きく振ると、業火の斬撃がロアーに向かって一直線に襲い掛かる。

二人の強大な大技は、そのままぶつかり合い――


「うわあぁぁぁぁ!!!!」


 地響きと共に、大きな衝撃波が一帯を襲う。

 十聖神はその衝撃に耐えているものの、人間達は殆ど耐えきれず、中には衝撃に乗って飛ばされる者もいた。

 そのまま二人の技は拮抗し合っていたが、遂に――


「くっ!」


 あまりに強大な力に耐えきれず、爆発して相殺された。


「……やるな、ゼロ」


「そう言うロアーこそ」


 二人は再び笑い合い、そしてすかさず突進する。


「まだまだ終わらねぇぞ!もっと、もっと行くぞ!!」


「えぇ!私も、まだ終わりませんよ!!」


 戦いをまだ終わらせまいと、勢いよく接近するゼロとロアーが衝突しそうになる。

 その時だった。





ドゴオオオオォォォォン!!!!





「!?」


 大きな衝撃音が響いた。

 それは、二人の戦闘とは一切無関係に発生したものだった。

 突然の出来事に二人は止まり、音が響いた方向へと視線を移す。そして、直ぐに衝撃音の正体に気付いた。

 それは、訓練場の奥にそびえ立つ壁……神ノ瞳( ゴッド・アイズ)の外壁が、粉々に破壊された音だったのだ。


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