18.激闘
突然の事に何が起きたのか分からず、人間達は目を瞑り、顔を腕で隠した。
そんな状態の中、ゆっくりとゼロとロアーの方を見ると――
「反応が速いな。流石は騎士団長、ガードが固いな……」
「ロアーこそ、この速度と重さ……特攻隊長の名に恥じぬ力量ですね」
ゼロが槍の柄で、ロアーの右脚の蹴りを防いでいた。
先程の地響きと強風は、それによって発生した衝撃波だったのだ。
「ふん!」
小言も束の間、ロアーが連続で殴りかかる。
しかし、ゼロはそれを全て見切り、槍で防ぎ、時には紙一重で躱し、一切の攻撃を通さなかった。
そして、
「はぁっ!」
一瞬の隙を突き、今度はゼロがロアーの脇腹を狙い、槍を振る。
「くっ」
ロアーは即座に反応し、脇を締めてガードする。
しかし、不意の一撃によって微かに体勢が崩れ、その瞬間をゼロは見逃さなかった。
「火龍槍!」
ゼロの槍が炎を纏い、ロアーに向かって連続攻撃を仕掛けた。
「やるな……!」
今度はロアーがゼロの攻撃を防いでいく。
連続で襲い掛かる斬り、突き、飛び散る炎を躱す。
しかし、あまりの広範囲攻撃に全てを避けきれず、少しずつダメージを負いながら、じわじわと追い詰められて行く。
そして、
「っ!」
仕返しと言わんばかりに、今度はロアーがゼロの隙を突き、行動に出た。
ロアーが突きを躱すと同時に、前屈みになってゼロに向かって突進し、そのまま右手を強く握って構える。
――殴られる。
即座に反応し、ゼロは槍を引いて防御体勢に入る。
その瞬間だった。
「なっ――!?」
ロアーはその槍を左手で素早く掴んだ。
そのまま力一杯、槍を引っ張るとゼロの体勢が崩れる。
「絶襲脚!」
「ぐぅ!!」
ガラ空きになったゼロの脇腹に向け、回し蹴りを打ち込むと、その一撃に耐え切れずゼロは吹き飛ぶ。
しかし、吹き飛びながらも体勢を立て直し、槍を地に刺す。
ガガガ、と音を立てて槍は地を斬り裂いて行き、それによって衝撃は和らぎ、次第に勢いは止まっていった。
「やりますね……!」
「まだまだ、これからだろっ!」
そして二人は互いに突撃し合い、再び攻防が繰り広げられる。
そのあまりの激しさに、人間達は驚き、呆気にとられる。
「な、何だよこの激しさ……俺達の知ってるスポーツじゃ、こんな風にならないだろ……」
「そうね、マナの無い人間界では実現不可能な戦いよ。しかも、あの二人は私達の中でもトップクラスの武闘派……その練習試合ですらこの激しさよ。本気を出せば、こんなものじゃ済まないわ」
「えぇ、十聖神は皆、戦闘スタイルや役職が違うにしろ、あの戦闘に入っていけるだけの実力を持っています。貴方達はそれ程の相手を敵に回したという事です。せいぜい、今後の選択と判断を見誤らない様、お気を付けくださいね」
フランとフォルスが、まるで警告の様に冷たく言い放つ。
しかし……
「わ、私はあんな闘いは出来ませんけど~……」
「チェルは治癒術士ですからね、肉弾戦は不向きでしょう。まぁ、言った手前ではありますが、僕も付与術士なので接近戦は苦手ですがね」
チェルとフォルスは、激しい戦闘を行うのは苦手なようだ。
ただ二人共小柄な体格な為、見た目通りではある。
「はぁ……はぁ……」
「くっ……」
激闘はその後も続き、どちらもダメージが重なり、息を切らす。
そんな二人に、審判のサラが声を掛ける。
「二人とも、まだいける?」
「当然だ!」
「当然です!」
ゼロもロアーも、 笑いながら答える。
すると……
「な、何……?凄い光が……」
ゼロの槍には深紅の光が、ロアーのガントレットには漆黒の光が集い始めた。
そして、膨大な力が溜め込まれているかのように、次第にその光は強く大きなものとなる。
「大技が来る……勝負に出るようね」
「おぉ!いけいけ~!どっちも頑張れぇ~!!」
フランの冷静な一言に、エルはテンションが上がって大声を上げる。
「狙ったら逃がさねぇ……!血に飢えし猛獣、骨まで喰らい尽くせ!」
「灼炎よ、我が剣となれ!悪しきを滅し、覇道を貫く!」
そして――
「覇王劫咆牙!!!!」
「炎緋滅導斬!!!!」
ロアーが右腕から放った衝撃波が、巨大な狼の姿と化してゼロに向かい襲い掛かる。
ゼロが炎を纏った槍を大きく振ると、業火の斬撃がロアーに向かって一直線に襲い掛かる。
二人の強大な大技は、そのままぶつかり合い――
「うわあぁぁぁぁ!!!!」
地響きと共に、大きな衝撃波が一帯を襲う。
十聖神はその衝撃に耐えているものの、人間達は殆ど耐えきれず、中には衝撃に乗って飛ばされる者もいた。
そのまま二人の技は拮抗し合っていたが、遂に――
「くっ!」
あまりに強大な力に耐えきれず、爆発して相殺された。
「……やるな、ゼロ」
「そう言うロアーこそ」
二人は再び笑い合い、そしてすかさず突進する。
「まだまだ終わらねぇぞ!もっと、もっと行くぞ!!」
「えぇ!私も、まだ終わりませんよ!!」
戦いをまだ終わらせまいと、勢いよく接近するゼロとロアーが衝突しそうになる。
その時だった。
ドゴオオオオォォォォン!!!!
「!?」
大きな衝撃音が響いた。
それは、二人の戦闘とは一切無関係に発生したものだった。
突然の出来事に二人は止まり、音が響いた方向へと視線を移す。そして、直ぐに衝撃音の正体に気付いた。
それは、訓練場の奥にそびえ立つ壁……神ノ瞳の外壁が、粉々に破壊された音だったのだ。




