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神ノ狂気  作者: 古芹坂 琉輝
第2章 神界と十聖神
18/20

17.試合開始


「えっと、模擬戦って……お二人がこれから戦うって事ですか?それがエルさんの言ってた決闘デュエルって事でいいんですかね……?」


 よく分からないなりに、コザクラが考えてフォルスに聞く。


「飲み込みが早いですね、その通りです。一対一の実戦勝負を決闘デュエルと呼びます。色々とルールや掟はありますが……まぁ、人間界における武道などの試合を、後継神の力を使って行うと思えばいいです。今から行うのは模擬戦なので、厳密には練習試合やウォーミングアップと言うべきですが……それでも、二人の勝負は貴重なものですよ」


「後継神の力を使ってって……それって、魔法を使った勝負って事?」


「そう答えた筈ですが?」


「あっ、はい……すいません……」


 思わず謝ってしまう。

 とは言え、人間界では決して見ることの出来ないものであり、それを神界に来てからまだ半日も経っていない身で聞かされても、素直に納得するのは難しいだろう。

 フォルスにとっては日常かもしれないが、人間達にとっては非日常なのだ。

 だからこそ――


「魔法を使った戦い!?すっげー面白そう!」


「そんなゲームみたいな事まであるのか、この世界!」


「見たい見たい!そんなの見られるなんて思ってもいなかった!」


 殆どの人間達は、テンションが上がっていた。

 コザクラのように、疑問に思う事も、考える事も放棄して、ただ聞いただけの話を鵜呑みにして盛り上がっていた。


「全く、本当にお気楽ですね……ご自身の立場をお忘れではないでしょうね?」


「多分忘れてるわよ、分かって取るようなテンションじゃないわ」


 フォルスとフランは揃って呆れる。

 そして、ゼロとロアーはサラと共に訓練場の中央に向かい、互いに間合いを取る。

 サラは二人の間合いに挟まれるように立った。


「審判は私が務めるわ。二人とも、戦闘態勢」


「おう!」


「はい!」


 サラの掛け声に、気合いの入った声で応える。

 すると、二人の周りに光の粒のような物が集まり、ロアーの腕と脚にガントレット、ゼロの手に十字の槍となって具現化した。


「何か出て来た!武器か!?」


「すっげぇ!本当に魔法みたいだ!」


 今まで見た事のない、ファンタジーのような不思議な現象に驚き、喜々と盛り上がる人間達。

 それとは対照的に、コザクラは驚きつつも何が起きたのか疑問に思っていた。


「ど、何処からあんなものが……?さっきまで何も持ってなかったのに……」


「あれは、装備にご自身の神力を纏わせて、ゼロさんとロアーさんの器の中に仕舞っていたんですよ~。それを今取り出したという事です」


「じ、自分の中に……?」


「神界では、自身の神力を纏う事で、生物以外の物体を体内に仕舞えるんです。仕舞える物の大きさや量は後継神の器量によって異なりますが、出したい時に神力を使って引き出したり装備したり出来るんですよ。私のこの指揮棒(タクト)も、こうやって……」


 説明をしながらチェルが指揮棒(タクト)を取り出すと、それが光りだし、粒となってふわりと消える。

 そして今度は、光の粒がチェルの手に集い、先程消えた指揮棒(タクト)がまたチェルの手に現れた。


「そんな事が出来るの?凄い便利ね……」


「神界では、基本的なテクニックですよ~。殆どの方が出来る技ですね」


 その話を聞き、ふとコザクラは別の疑問が浮かんだ。


「で、でも、私達が廃墟にいた時、サラさんは神の証拠で空間から何か出せって言われ時に、そういうのは苦手って言ってましたが……」


 コザクラ達が目覚めてから間もなく、サラを神だと認めず逆上したメグムが、勢い任せにそう言った。

 その後メグムはサラの反撃を喰らうのだが、サラはその時に、そういう事は苦手だと確かに言っていた。

 チェルの話とサラの発言は、辻褄が合っていなかった。


「まさかあいつ、本当にその基本的な事も出来ないの?ププッ、だっさぁ~」


「あんたも出来ないでしょう、神じゃないんだから」


「痛い目見たのに本当に懲りてないんですね……」


 サラが近くにいないのをいい事に、煽るように嘲笑うメグムにユミとコハルは呆れていた。

 しかし、その疑問にフォルスが口を開き、淡々と答えた。


「当然サラも出来ますよ。ですがサラはその任務の時は、自身の器に何も入れてないようでした。本人から聞いただけで真偽は不明ですが、もしそれが本当だとしたら、今後その様な事は止めて欲しいものですね。幾ら人間の引率とは言え、愛用する剣の一つも持たずに向かうと不測の事態に応えられませんので危険です」


「な、何も入れてない……?どうして……?」


 フォルスは深く溜め息を吐いてから、静かに答える。


「何も持たない方が良い……そう思ったみたいです」


「えっ?それってどういう――」


「そんな事より始まりますよ。黙って観戦してください」


 意味深な答えだけを伝え、話を半ば強制的に切り上げて訓練場の中央にいるサラ達を指さす。

 ゼロとロアーは間合いを取りながら身構え、サラの号令を待つ。


「それじゃあ、用意――」


 静寂が訪れる。

 そして、


「――始め!」


 サラが試合開始を告げた、その瞬間、


「!?」


 地響きと共に強風が吹き、大気がビリビリと震える程の衝撃が走った。


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