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神ノ狂気  作者: 古芹坂 琉輝
第2章 神界と十聖神
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14.十聖神


 コザクラの一件が落ち着いたその時、寮棟内にアナウンスが流れた。


『業務連絡です。現在、神ノ瞳( ゴッド・アイズ)にいる十聖神の皆様は第四訓練場に集合して下さい。繰り返します――』


 そのアナウンスを聞いたゼロが、コーヒーカップをテーブルに置いて立ち上がる。


「時間のようですね、ではご準備を……皆様も、私達と共に第四訓練場までご一緒願います」


「第四訓練場……今のアナウンスで流れていた場所ですか?私達の事は何も言ってませんでしたが、私達もお呼びなんですか?」


「えぇ、とある事情で、貴方達の事は可能な限り内密にしておりますので……予め、私達が貴方達をお連れするように仰せつかっております。因みに、拒まれた場合はこの寮棟から地下牢へ強制連行との事ですが……」


「優しい顔で怖い事言わないで下さい」


 爽やかな笑顔から出た言葉に、コザクラが真顔でツッコミを入れる。

 処刑を言い渡されたコザクラ達にとって、それは冗談には聞こえず、そもそも冗談を言っているような口調でもなければ、冗談を言うような人にも見えなかった。

 正直、リアルにドン引きする程怖い。


「ゼロ〜!私達お呼びだよ!十聖神、集合〜!」


「私は人間の皆さんに、食器具の回収も兼ねて声を掛けてきますので、お二人はこちらでお待ち下さい〜」


 チェルがコーヒーとクッキーを乗せたワゴンを手に、押し動かしながらコザクラ達の元から離れて行く。

 その先々で他の人間に声を掛けては、コーヒーカップや、クッキーが乗せられていた皿を回収し、また別の人間に声を掛けてを繰り返した。


「皆様がお持ちのものは、こちらのテーブルに纏めさせて頂きますので、私の方から回収させて頂きます。まだお飲みの最中でしたら、そのままお持ち頂いて結構です」


「ど、どうも……」


 コザクラがゼロに食器具を渡すと、ユミとコハル、メグムも同じく彼に食器具を渡しに立ち会がる。

 そして、ユミがアナウンスで聞いた言葉について問い掛ける。


「ねぇ、その……十聖神って何?あんた達がそれに当てはまる人なの?」


「はい。十聖神――それは、闘技場の殿堂入りチャンピオンに与えられる称号で、十に分けられた闘技部門それぞれに該当する方がいらっしゃいます。その名の通り十人の聖なる神、十聖神という事です」


「要するに、メチャクチャ強い神様って事だよ〜!あ、私は『魔術部門』のチャンピオンで、ゼロは『能力部門』のチャンピオンなんだ!」


「そうですね。そして、私とエルのみならず、チェルも『回復術部門』の殿堂入りチャンピオンです。どなたも私にとっての誇り――名実共に、チャンピオンの名に恥じない素晴らしいお方ばかりです」


「あっはは!畏まっちゃって〜!ゼロの方がよっぽどじゃ〜ん!」


 和気藹々と、お互いを讃え合うエルとゼロ。

 そんな二人の話を聞いて、メグムは驚きを隠せなかった。


「強いって、あのサラって人よりも強いって事?この二人が、あの馬鹿力より……?」


 自分がやられた事を思い出し、それ以上の実力を持っているのかと思うとゾッとする。


「馬鹿力……ですか?何の事を仰っているのかは分かりませんが、サラは――」


「お待たせしました~!こちらは回収が終わりましたので、遅れないように余裕を持って向かいましょう!」


 ゼロがサラについて何かを言おうとしたその時、食器具の回収を終えたチェルが戻り、同時にチェルに声を掛けられた人間達も集まって来ていた。


「そうですね。では申し訳ありませんが、このお話は後程――チェル、こちらのテーブルにも纏めましたので、こちらも回収して置いておきましょう」


 話を中断し、残りの食器具をワゴンに乗せると、その場にワゴンを手放した。


「それでは参りましょう。皆さん、私達に付いて来て下さい」


「レッツゴー!」


 ゼロ、エル、チェルの三人を先頭に、再び移動が始まる。

 そこから歩いて数分後、神ノ瞳( ゴッド・アイズ)敷地内の屋外にある、広大なグラウンドに到着する。

 ここが第四修錬場のようだ。


「早かったわね、お疲れ様」


「えぇ、ご苦労様です」


 そこには、フランとフォルスがいた。


「お二人も、お勤めご苦労様です」


「おつおつ~!」


「お疲れ様です♪」


 三人が軽く挨拶を交わすと、またしてもメグムが先に着いていた二人に突っかかる。


「ちょっと、何でまたあんた達がいるのよ?ここに来るのって、私達と……ナントカって集団じゃないの?」


「十聖神です。何一つ情報もヒントも無くナントカと言うとは、やはり知能の低さが異常ですね。それで理解出来てしまう僕達の身にもなって下さい面倒臭い」


「本当にうっさいわね、このクソガキ!」


「貴方がですよ不機嫌サド」


「その呼び方やめろ!!」


 顔を合わせて間もなく、一発触発の雰囲気だった。

 そんな二人を落ち着かせようと、ゼロがフォルスに声を掛け、宥めようとする。


「フォルス、いけませんよ。貴方はただでさえ誤解を招きやすいのですから、人間の方々と喧嘩はなるべく避けた方が……」


「別に喧嘩などしてませんよ。あのハエが勝手に騒いでるだけです」


「誰がハエよ!人をサドとかヘドロとかハエとか散々馬鹿にしてきて、あんたどんな教育受けたのよ!?何が純真な心よ、親の顔が見てみたいわ!」


 宥めるどころか、より激しい口論へと発展してしまった。

 メグムのその言葉を聞いて、ゼロは焦る。


「フォルスに家庭の事は――!」


「ゼロ」


何かを言おうとするゼロを、名前を呼ぶだけで止めると、フォルスは不敵な笑みを浮かべる。


「僕の親の顔ですか。そんなに見たければ、どうぞ勝手に探して勝手に見に行って下さい。僕はあんな方々の顔など二度と見たくありませんし、親とも思っていませんので、紹介も案内も一切致しませんが、それでも良ければ、どうぞご自由に」


 焦るゼロをよそに、変わらず余裕のある態度のフォルス。

メグムはそんなフォルスに対して苛立ちを覚え、まだ何か言いたげに唸り声を上げながら手を握り締めていた。

 そんな二人の様子を傍観しているコザクラは、一抹の不安を覚えた。


「もしかして、また地雷踏んだんじゃ……」


 サラの怒りを買った時のように、また何か触れてはいけない事に触れてしまったのではないか。

 フォルスの余裕のある不敵な笑みの中には、何処か憂いも感じる。

 それが一体どんな意味を持つのか、どんな事情があるのか、何も分からない。

 分からないからこそ、より不安を恐怖を増長させるのであった。


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