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プリメラのパン屋さん

「覚悟決めたんですね」


 プリメラのパン屋を訪ねたわたしに、キラキラとした瞳を大きく見開いて自分の事の様に喜んで見せるプリメラ。


「ええ。あとは頑張るしかないんだけどね」

「王太子妃の試練か~うー、アレはまじキツイわぁ。それもここだと実体験する訳だし……無理無理」

「……そんなにヤバイの?」


 プリメラはゲームでの記憶を思い出したのか、両手を頬に当ててイヤイヤと首を振っている。そして眉を下げてポツリポツリと話し始める。


「んっと……取り敢えず、魔力がある事で一つ目はクリアです」

「やっぱり魔法とか関係あるのね」

「何て言ったら良いのかなぁ~……仮想空間? みたいな所に放り込まれてですねぇ」

「仮想空間……」

「んで、色々試されちゃうんです! 肉体的というよりも、精神的な面ですかねぇ。王太子妃に相応しい資質を持っているかどうかってヤツです」


 プリメラの説明ではいまいちピンと来ない。大変な事だけは分かるのだけど……。


「今の内に何かやっておいた方が良い事とかってある?」

「いや、無いですね~。もう、本人のこれまでの経験と資質の問題なので」

「そうなのね」

「あ、でもこれだけは忘れないで下さい。自分の心に嘘をついてはダメです。ついてもバレちゃいますし」

「分かったわ」


 わたしはプリメラにお礼を言うと、次の話を始めた。今日の本題はこちらだ。


「プリメラさんにお願いがあって今日は来たの」

「なんですか?」

「ここのパンをウチの店に仕入れさせて貰えないかしら?」

「え、パンですか?」

「ええ、こちらのロールパンがとても美味しいから是非ウチの店でも出したいの」

「おお、業務提携ってやつですね! 面白そうですねっ」


 プリメラがご主人のお父様である店主を呼び寄せて、話をすると驚かれたけど快く引き受けて貰える事になった。これでわたしが店に来れなくなっても、ロマノは料理だけに集中出来る。パンを焼くのも楽しかったけれど、それに時間を取られてしまっては本末転倒だもの。


◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆


 邸へ戻ると執事長から手紙を受け取った。封蝋を見ると隣国コンフォーネ王国王家の紋章だ。……リップル王女から? 急いで封を開けると、コンフォーネ王国王家の紋章の透かしが入ったとても上等な便箋が入っていた。中の文章を恐る恐る読んでみると、それはお茶会のお誘いの手紙だった。


 リップル王女かぁ……。以前お会いした時の事を思い出す。確か第一王子……今は王太子様のイーロイズ殿下の事が大好きで、いつも付いて回っていたわね。少し幼い面はあったけど、意地悪とかする様なお方ではなかった。ただ、一対一でお話しした事はまだ無いのよね。


 先日の舞踏会でも、お互いの顔は見合わせただけで会話はしていない。まさかこんな形でリップル王女と関わる事になるとは思ってもみなかったよね。彼女はロブ殿下の事をどう思っているのだろう。勿論ロブ殿下とも初対面ではないだろうし……。リップル王女側もわたしの事を警戒されてるかもしれないなぁ……。

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