第8話 エルフⅢ
深夜に自分の部屋を作ることになったので、当然寝不足だ。
冒険者なので徹夜することもたまにあるとはいえ、36歳にもなってくると徹夜は堪える。
夜は寝たい。遅くまで起きてたら昼ぐらいまで寝ていたい。
それぐらいは、自分の家なら許されてもいいと思うんだ。
ジジイとババアの朝は早い。
それこそ昨晩色んなことがあったとしても普段通りに起きやがった。
しかし朝食を用意する家主はまだ寝ている。
2階へ上がるのも面倒だ。それでどうしたか?
移動する部屋を伝えなきゃ良かったと起きた時に思った。
俺の新しい部屋は2階手前の左側。では、真下の1階手前の左側は?というとロンの部屋だ。
ジジイとババアは2階に行くのが面倒という理由でロンの部屋の天井を木の棒とかでガンガン叩き出した。
どこの世界のマンション騒音問題かと思う。
マンション?まぁ何でもいいか、とにかく無理矢理起こされた。
割と響いてると思ったが向かいのエルフは起きて来なかった。
無理矢理起こされて3人分の朝食を作り、食べ終わってまったりして昼前ぐらいにやっとエルフは起きた。羨ましい限りだ。
恐る恐る1階へ降りてきたエルフは、首輪も無くなっている為か困惑した表情で……。
「△◆$◇△□〇!」
言葉がわからねぇ。
昨晩聞き取れなかったのは、そもそも言語が違うのか。
こりゃどうしようも無いとお手上げ状態だった。
「フォッフォッ。エルフ語とは懐かしい。△□□〇〇。」
「ヒッヒッ。確かにねぇ。〇□□〇○。△◆$◇××△△□。」
しかし、またしても空気を読まないジジイがやらかす。
いや、今度はババアも揃ってエルフ語とやらを話し始めた。
家主なのに一気にアウェー感を感じた俺は、とりあえず昼食を外で適当に買ってくるから、それまでに事情を聞いてどうするのかロンとミラに丸投げして逃げていった。家主なのに。
適当に屋台でかった串ものやサラダを持って家に戻ると、ロンとミラに押されたエルフが前に出てきた。
「ワタシ、キエナ。ココ、スミタイ。」
ほら見ろ。やっぱりこうなるじゃねぇか。
中年冒険者の家に、エルフが加わった。