第4話 老婆
そんな日常にもなりつつある光景を過ごしている昼下がり。
リオは冒険者ギルドの依頼にしっくり来るものがなく備品や食材を片手に抱え家に帰る為に歩いていると、少し前を歩く老婆が他の通行人とぶつかり倒れるところを目撃してしまった。
さすが王都。都会である。誰も助けない。
ぶつかった通行人も急いでいたのか、申し訳なさそうな顔をするだけで足早に去っていった。
俺も都会人?の一人として申し訳なさそうな顔だけして通過しようとしたが、顔を向けたのが間違いだった。目があってしまった。
都会人?の嗜みならば、颯爽と歩くべきだったのかもしれない。
こうなると話しかけるしか無いのか、老婆の方も若干顔に嬉色が彩っている。
「婆さん、大丈夫か?」
「アイタタ……あ、足が……。」
よく見れば足を挫いたのか足首をさすっており、元々足腰が弱かったのか杖も傍に落ちていた。更に面倒なことにその杖もポッキリ折れていた。タイミング良すぎじゃね?
さりとて特に予定も無く、ただ家に帰るだけであった。
老婆を背負いながら行く道を聞く。
しかし、老婆は人を探しているが、どこに居るかはわからないと曖昧な返事であった。
その胡散臭さは最近デジャブってたので、休憩と治療も兼ねて家まで背負い連れていった。
胡散臭さ同士で仲良くなってくれることを願いながら。
老婆を背負い行く光景が傍から見たら誘拐してるように見えたかもと、挙動不審になったが、その行動はさらに疑惑を掻き立てることになった。
しかし、通報されることは無かった。さすが王都。都会である。
家に帰るとロンはいつもの様に椅子に座って難しそうで分厚い本を読んでいた。
「フォッ?もう帰ってきたのかぃ?ブフォッ、アルメルダ??」
「助かったよ。ヒッ?その声は、ボーザック!こんな所にいたのかぇ!」
やはり胡散臭いもの同士、知り合いだったみたいだ。
そして老婆の探し人はロンということになるが名前がどこかで聞いたことがあるのは気のせいか?
まぁいいか。積もる話もあるだろうし、ここは胡散臭いもの同士で話し合ってもらうのが一番だろう。
ヤバそうな雰囲気からの戦略的撤退でもあり、嫌な予感もする。
理想は、2人が出会ったことで目的ができ、どこかへ行ってくれるのではと期待しているが……。
なんとなく……、いや恐らくは……。
老婆もここに住むことになるのではないかと、冷や汗を流す。
そうなると1階は風呂場部屋を抜いて2部屋。
2階に老人、老婆は当てずらいことにより、今の俺の部屋は老婆に明け渡すことになるだろう。
ならば先に2階の部屋を自分用にしておいた方がいいだろう。
あれ?おかしいな。
家主なのに部屋がどんどん追いやられていく気がするぞ?
目からも汗を流しながら2階の1番手前右側の部屋を粗方整理し終わると、どうやら話し合い?尋問?拷問?も終わったようだ。ロンの髪と髭の白さが更に漂白されたようになっていたのは苦笑いしかでなかった。
俺が1階へ戻ってきた早々、老婆はニヤリと人一倍胡散臭さを込めて、
「ヒッヒッ。ワシもここで厄介になりたいのだが、いいかねぇ?」
本当に厄介だ。
中年冒険者の家に、老婆も加わった。