第92話 境遇Ⅱ
納得の行っていないアキヒコと兄妹を並べて、優しく語りかける。
「アキヒコ。そしてお前達も。
俺には既に家族が居る。お前達よりも幼い子供も居るんだ。すまんな。」
「うぅ。リオさんなら……」
「アキヒコ。俺はそこまで万能じゃない。
お前の時とは状況が違いすぎる。この子達はあの時のお前よりも幼い。独り立ちもまだまだ先だ。
その親代わりを俺にしろと言うのか?レナとシルバはどうする?ディアナとキエナに何て言うんだ?」
「……。」
アキヒコは黙る。
まだ納得出来ないでは居るが、反論も出来ないでいた。
確かにアキヒコが言うように、今まで沢山拾ってきたかもしれない。
だが、どいつも親が必要な年齢は居なかったんだ。皆ある程度自立している奴ばかりだ。
この兄妹はレナとシルバより2〜3歳上だが、まだまだ自立は不可能だ。
そんな子供を引き取るには、今の状況じゃお互い幸せにならないと思った。
だから、ハッキリと兄妹へ言う。謝罪と共に。
「お前達。確かに、これは俺の逃げだ。言い訳かもしれん。
俺はお前達の両親がとても凄いことをしたのを目の前で見た。誇っていい。だからその想いを無くしてほしくはないんだ。
そして、その凄い両親の代わりに、俺は成れそうもないんだ。すまん。」
兄妹へ頭を下げる。
父親から託されたかもしれないが、助けたことで勘弁して欲しい。
むしろ、あの両親を背負って兄妹は生きて欲しいと思っていた。
「勿論、可能な限り助けるし、何かあれば何でも言ってくれ。
もう少し大きくなってからになるが……冒険者になりたいや、強くなりたいと思った時は尋ねて来い。その時は迎え入れよう。
それにだな。
これからお前達が入る、受け入れ施設が心配か?
安心しろ。俺の友人がもうすぐ来る。あいつならお前達のこともしっかり見てくれるさ。」
そうだろ?ルキウス。
父親から俺に。そして俺からクズじゃなくなったお前に託す。
兄妹の頭をポンポンと撫でて元気付け、ついでにアキヒコにも同じことをする。もう子供じゃないと少し恥ずかしそうにしていたが、素直に撫でられていた。
「ハッ。リオさん!
もうすぐ来る友人って、ルキウスさんか!?」
「ああ。ラキティスから伝言があった。ファルと一緒に来るらしいぞ。」
「ファルさんも来るのですぅ!なら大丈夫ですぅ。良かったね!あの2人なら安心ですぅ。」
タロトとパルムは、ルキウスとファルのとこを尊敬しているようだった。
孤児院出身の2人が、これから孤児院へ行く兄妹に色々と伝えており、その中でもルキウスとファルの太鼓判を押していたので相当だな。
そのお陰もあり、兄妹は多少安心したようだった。




