第3話 老人Ⅱ
ロンという爺さんは、なかなかに使えた。
風貌から察して有り余る程、魔法が上手かった。
風呂が欲しいという願望に賛同し、ノリノリで一緒に作り出した。
排水のパイプを魔法でサクッと通して、風呂の整形も魔法で簡単にやってのけた。
コーティングはどうするのか?とか湿気対策はどうすれば良いのか?等、俺よりも情熱を注ぎ込んでいた。
その結果2週間程で素晴らしい風呂場が出来上がった。
出来上がった瞬間は最初よりも硬い絆で結ばれた握手をし、称えあった程だ。
ただ改造費用が大幅に増えた為に、シャワー用の魔道具も、水を貯めたりその水を温める魔道具すらも買えなかった。よって、お湯の用意は魔法が得意なロンが担当し、その他食事を担当することに自然と決まっていった。
ロンが改造費用も半分出すと言ってくれたが頑なに断った。
風呂への情熱度もそうだったが、俺の家なのに乗っ取られそうと恐怖したこともあった為だった。
自分の家の為に自分のお金を使う。それは譲れなかった。
風呂が出来上がってからは、リオが作った朝食を2人で食べ、リオは冒険者ギルドへ適当な依頼をこなしたり、無ければ部屋の備品を買ったり、戻っては2階の掃除をしたりして過ごしていた。
ロンもフラッと何処かへ出掛けたり、どこから持ってきたのか沢山の本を食堂スペースでのんびり読んでたり、行く宛てが無いということがやはり嘘だと気づいたが、触れない方がいいだろうと思い何も言わなかった。そういえば、自分が家を買う前の宿屋を利用していた頃、宿屋の主人も何も言わなかったなぁと思い出し、そんなもんかと宿屋の経営を想像していた。
昼食はお互いに居ない時もあるので各々自由に、夕食は日が暮れる前に帰って2人で食べるのか日課になっていった。
リオもロンもあまり酒を好まず、たまにチビチビ飲んでは談笑する仲になっていた。
中年と老人の2人。静かな時は意外にも合っており、往年の友人同士のような関係でゆっくりのんびりとした時の流れを2人で楽しんでいた。