第71話 猪突猛進
数日かけて、まず一つ目の街へ着く。
至るまでの野営の際も念入りに打ち合わせを行った。
馬車組はやはり経験者が多く色んな事がスムーズに進んだ。
アキヒコ達もそんな先輩方に色々言われて落ち着きを取り戻していた。
ただ1つ、重大で不幸なことが起きた。
馬車組だけでも先の街へ進もうと決まった直前に、街の【救援】から【奪還】へ正式に決まってしまった。
非常に残念だ。
だが、これで終わりでもない。
街の【奪還】に向けた準備も必要になってくる。
最悪の場合も想定していた打ち合わせ通り、前線拠点構築へ出発する。
落とされた街の近くの草原に拠点を構築し防衛、徒歩組を待ち、合流したら一気に奪還するのだ。
アルバはA級なので主力だがソロであり、共に居るのはC級の俺と、同じくC級のアキヒコ達パーティ。
全員、たまたま居合わせた国外の冒険者でもあった。
大量のゾンビ相手だと、他との連携もあり、あまり期待されていなかったのか、馬車の列が最後方になっていた。
だから気づけた。いや、どこに配置されても気づいたことだろう。
なんたって、この場において誰よりも索敵範囲が広いポワポワが居るのだから。
予定された前線拠点までの道のりで、森を迂回していた時、ポワポワが森の奥に潜む集団を察知した。ただの魔物の群れにして規模が大きいらしい。
先行く馬車に気になる事が出来たと伝えて馬車を停め、アキヒコ達も呼んで皆で相談する。
アルバに偵察を頼んで、確認してもらうと、案の定ゾンビの群れだった。
場所的に非常に不味い。
予定された前線拠点を後ろから挟み撃ちも出来るし、冒険者達をスルーして一つ目の街も強襲出来てしまう。
「リオ。どうする?」
「知能があまり高くないゾンビ共がこんな所で潜んでるんだ。確実にまとめてるヤツが居るな。
本命の上級悪魔が居るとは思えないから配下の悪魔だろうな。」
「頭を潰せば、後は楽チンだね。
ボクの感覚だと、頭も楽勝だヨ。」
「そうか。強襲してまとめてるヤツを真っ先に倒すか?」
「それが良いヨ!アキヒコ。アレやろう!【猪突猛進】作戦だヨ!」
「うぅ。アルバさん。一緒に組む度にソレばっかりじゃないですか!
名前が気に入ったようで言いにくいですが、毎回名付けた僕が、皆から責められるんですからね。」
詳しく聞けば、アルバが目標に向かって一直線に薙ぎ払い突き進み。その出来た道をアキヒコ達が後ろで必死に着いていく、作戦と言っていいのか分からない代物だった。
アルバの力がずば抜けているから成り立つ作戦だ。そしてソレについて行けるアキヒコ達も、なんだかんだ力を付けているのだろう。
「なら、俺は後方待機で馬車を守ろう。お前達の作戦についていける気がしないからな。」
「リオさん。1人だけズルいですぅ。この作戦、本当に地獄なんですぅ。」
「だが、お前達はパーティだろ?パルム1人残ったら、アキヒコ達が厳しくなる。まぁ頑張ってくれ!」
ニヤニヤしながら、アキヒコ達を死地へと送り出す。
「……いじわる。」




