第95話 恋のキューピット(中年)
レナとシルバは元気だった。
夜泣きも2倍。されど母親も2人。
更には父親は冒険者だ。
気配を察知する事は朝飯前。
睡眠を殆ど必要としない、喋る魔剣まで居る。
何かあってもすぐに対応した。
ロンやミラ、メイド達も手伝ってくれた。
子供達はこれからスクスクと育っていくのだろう。
ディアナとキエナの出産が無事に終わったので、ファルに話しかけた。
「ファル。本当にありがとう。
お前のお陰でディアナとキエナは無事に。そしてレナとシルバは元気だ。」
「いいえ。私はお手伝いをしただけです。ディアナさんとキエナさんが本当に頑張った結果です。」
「だとしても、ありがとうと言わせてくれ。
それで、ファル。この後はどうする?孤児院へ戻るのか?ルキウスとの仲もあるんじゃないか?
俺としてはこのまま居てもらっても構わないぞ?」
「はい。少し迷っています。でもルキ君は何も言ってくれないのです。」
そういう事か。
まぁルキウスだしな。
ファルは迷っていると言うが大丈夫だろう。
何気に唯一、ウチに滞在していて、1番普通でしっかりしているのがファルだ。
多少迷ったところで直ぐに自分で道を切り開くだろう。
だがファルの相手はルキウスだ。
あいつの相手は大変だな。
少し手伝ってやるか。
「なるほどな。そういう事なら、少しだけ力を貸そう。
そうだな。……ら、……してくれ。」
ファルと別れて、こっそりルキウスの部屋へ行きノックする。
「ルキウス。居るか?俺だ。少し話がしたい。」
部屋の扉が開いたので、そのまま中に入る。
「ふぅ。リオさん。どうしたんですか?」
「ちょっと話がしたくてな。
ルキウス。お前はファルの事、どう想ってる?」
部屋にある椅子に座って問い正す。
めんどくさいので直球勝負だ。
「ウチの嫁も出産が終わったのでな。本来ならファルは孤児院へ戻ることになっている。
まぁ、お前も孤児院通いだから、これから会えないということは無いんだがな。
だが好意があるなら決めてみてもいいんじゃないか?ファルも待ってるかもしれん。
お前達の今後次第では、2人ともウチに居てもらってもいい。神父に掛け合ってやってもいいと俺は思っている。どうだ?」
ルキウスを見ながら聞く。
ルキウスは真面目な雰囲気の俺を見て、空気を悟ったのか自分のベッドに腰掛けながら、俺を見据えて答える。
「ふぅ。リオさん。僕は大人が嫌いでした。」




