第2話 老人
それから3日程は掃除や小物購入に費やした。
とりあえずは、まだ独り。
2階を使うことはほとんど無いに等しいので1階を重点的に住める環境へと整えていく。
この世界では魔物が出る。剣と魔法の世界。
魔王とか勇者とか上を諦めたC級には、縁のない世界なので知りもしないし関わることもないだろう。
魔物は魔石を持ち、その魔石を使った魔道具がある。
魔力を通せば起動し、火を出したり水を出したりと多少値ははるが便利な道具である。
いくつか購入してキッチンやトイレ等、すでに設置済みだ。
光の魔道具も欲しかったのだが、部屋が多く家も広いし、まだ独りなので、今しばらくはロウソクとランプでしのごう。
ある程度1階の掃除が終わったので、修理と改造をしようと思う。
建造からそこまで日が経ってるようには見えないが木造だ。
隙間が出来たり腐っていたりするところを補修しながら、自分の好きなように改造しようと思う。
なんたって自分の家。何をしてもいい。
1階左側の1番手前を自分の部屋としており奥のトイレの隣は風呂にしたい。
元宿屋だったときは、階段の先の裏口から猫の額程度の庭を抜けて100m程にある井戸から水を持ってきて湯浴みする方式だったようで、風呂が無い。
せっかく自分の城を持ったのだから風呂が欲しい。
風呂でゆっくりしたい。風呂でイチャつきも……ゲフンゲフン。
キッチンやトイレは元々備わっていたので地下の下水道までパイプが通っており、風呂の部屋にも通すため床をひっぺがして穴を掘る。鍛冶屋にパイプを注文し風呂用のセメントを購入。
業者に頼むと場所も辺鄙な為、運搬とかな手間がかかりすぎてとんでもない金額になる。
金は無いが時間はある。
ゆっくり自分の力でやって行こうとセメントを担ぎ家に戻ると、家の前に老人が倒れていた。
70歳ぐらいの長い髭を蓄え、頭髪も髭も白で染まりフード付きのローブを来ている。
その風貌はまさに魔法使いである。
残念なことにそれっぽいワンドが見当たらず手ブラで行き倒れているジジイだった。
「爺さん、大丈夫か?」
「み……水を……。」
ぶっちゃけ、関わりたくないが何せ自分の家の前だ。
ここで死なれても縁起が悪い。
仕方がなく助けることにし、老人を家まで運び、キッチンから水をだし食堂スペースの椅子に座らせる。
「ぶはぁ。フォッフォッ。助かったわぃ。」
よほど喉が乾いていたのか、かすれ気味の声もすっかり元気になって老人との会話が始まる。
簡単にまとめると道に迷って行き倒れていたっぽい。
ジジイは何か濁しているような感じだけど、正直知りたくもないし、関わりたくもない。
すぐにも出ていって欲しいのだか、行くあても無いようだ。絶対あるだろうと思う。
運の良いことなのか悪いことなのか、ここは元宿屋だけあって部屋はある。
金は多少あるみたいなので仕方なく、しばらくは泊めさせてあげるとするか。
2階はまだ全然掃除してない。
1階は自分の部屋と風呂用の部屋に挟まれた部屋も掃除はしたがベッドが無い。
ジジイにベッドを運べとは言えず、自分の部屋を提供して隣に移るのが無難と思えた。
見ず知らずの人をいきなり泊めるのもどうかと思うが、まぁジジイだし大丈夫だろうと軽く考え、椅子から立ち上がり握手を交わす。
「リオだ。冒険者でC級。この家はついこの前買ったばかりでな。」
「フォッフォッ。ロンという。これからよろしくのぅ。」
「どうでもいい。これから爺さんと呼ぶ。」
「フォッフォッ、ならばこちらは小僧と呼べばいいかのぅ?」
「やめてくれ、もうそんな歳でもない。」
「フォッフォッ。」
中年冒険者の家に、老人が加わった。