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中年冒険者、家を買う。  作者: 小雅 たかみ
2棟目 ~北の国から~
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第85話 剣Ⅱ

「ワタシは、魔剣。魔剣ディノルート。

マスターは、アナタですね?」


独りでに喋りだしたオーガの剣。どうやって声を出しているか疑問だが、詳しく知ろうとも思わなかった。だだその剣は後半に許容出来ない言葉を発していたので、すぐに否定する。


「いや、俺はマスターなんかじゃない。ただ拾っただけだ。」


正確にはオーガから奪ったのだが、この際どうでもいいか。


「しかし、呪われている時、多少意識は存在しました。

アナタは、ワタシを使っていた。

ワタシを使うことが出来るのは、アナタだけ。

アナタが、マスターで良いではないでしょうか?」


「断る。俺がお前を使うことは今後無い。」


とても面倒だ。

良く切れる剣ぐらいなら使ってやらないことも無かったのだが、喋りだすまで突き抜けるとは予想外だ。面倒事しか起こらない。この剣を持ってない状況ですら、他人から嫉妬されて前回の事が起こったのだ。これ以上はもう無理だ。


「ヒッヒッ。やはり魔剣だったねぇ。それにしても喋るとは思っていなかったねぇ。

はて、リオよ。何故じゃ?コレを使えばお前さんは強くなれるのではないかねぇ?」


意識みたいなものを剣から読み取っていたのかある程度は想像していたような言い方だった。しかしババアは相当俺を強くしたいようだが、それは無理だと言ったはず。


「剣だけ強くても仕方ないだろ?

俺は何も変わらない。むしろその方法は悪手だ。」


俺だって若い頃はそう思ったこともある。

自分の力量に伸び悩んでいた頃、強い武器や防具があれば、その悩みも無くなるはずと。

そういった機会は結局、今の今まで無かった。だが、それで良かったと今は思う。


ひょんな事から良い武器に恵まれた冒険者は腐るほど見てきた。そいつらがどうなったか?ほとんどが死んでしまった。武器に胡座をかき、その力を使いこなせず簡単に死んでいった。


その当時、そんな良い武器を手に入れた奴と一緒に依頼を受けたこともある。最初はそいつを心底羨ましがった。

オーガの一撃を武器で受け、武器は確かに折れなかった。しかし、そいつの腕は折れ曲がり、そのまま体に風穴を開けて絶命した。

他の冒険者と力を合わせて、そのオーガは倒せたが、遺品となったその武器は誰も引き継がなかった。


武器や防具だけ強くても本人が強くなる訳ではない。長年の経験でそれを嫌という程知ったんだ。


「すまんな。俺には分不相応だ。

お前程の剣ならば、俺じゃなくても、もっと良い使い手に出逢うだろう。ただサバイバル期間で生き残れたのはお前のおかげだ。鞘作成やメンテナンスぐらいは面倒見てやるよ。」


「……。」


物言わぬ剣に対して、素直に頭を下げる中年。


経緯を知らなければ、とてもバカらしい見た目だった。

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