第17話 猫人族Ⅲ
地下室で説明されたことは、全然頭に入っていかなかった。
自分の家で普通の部屋だと思って開けたら、見たこともない地下室へと続いていました。
ビックリするでしょ?
でも俺以外誰もビックリしてないんだぜ?
それにもビックリするでしょ!
え?俺だけが知らなかったの?
ってなるよね?こう見えても俺、家主だよ?
や・ぬ・し!
嘘だろ。めっちゃ広いじゃん。
何でこんな素敵空間を一枚噛ませてくれなかったのか。
一緒に作りたかったとか。
なるでしょうよ!普通なら!
そこはスルーしてシリアス調に移行されてもねぇ。
全然頭に入ってこねぇ。
「ヒッヒッ。言わなかったかぇ。」
「フォッフォッ。言ってなかったのぅ。」
ジジイとババアはとても申し訳なさそうにしているが、これこそが一番の問題であると思った。
なぁ何時からだよ。
もしかして割と初めの方から作り出してたんじゃねぇのか?
そういえばキエナが襲われてるときも全くの無反応だったなぁ。
もうあの頃から作ってたのかよ?
と、まぁ心の中で叫んでもどうしようもない。
既に立派な地下室が出来上がってしまっているのだから。
フーーと割と長めのため息で心の鬼を封じ込め、とりあえず今回どうするかを考えようと思った。
そのため息でジジイとババアはビクッとしてたがいい気味だ。
少しははっちゃけ具合を治した方がいいと思う。
「まず、俺の問題はほぼ片付いたと言っていいんだな?」
「フォッ。まぁそうじゃのぅ。」
「じゃあ後はそっちの猫人族だ。おぃ。お前の名前は?」
「……ネル・クル。」
「じゃネルでいいや。でだ、ネル。お前は今後どうしたい?」
「……別に。もう何もしたくない。」
「なら。ココに住人として住め。お金があったら宿泊費が欲しいところだが、それは期待してない。だから手伝え。掃除、洗濯、なんでもだ。ディアナとキエナの買い物の護衛でもいい。とりあえず生きろ。いいな?」
「……。」
「い・い・な?」
「……ん。」
渋々といった感じがしたが、ネルは頷いてくれた。
「よし、じゃあ婆さんネルを出してやってくれ。」
「ヒッヒッ。ホントにそれでええんか?」
「最初に言っただろ?しくじったって。ネルを見つけた時、また住人が増えるのかと思ってしまったから、こうなったんだ。それならコレでいいと思う。」
「フォッフォッ。相変わらず面白いやつじゃ。」
「爺さんと婆さん程じゃない。」
肩を竦め応えることでロンもミラもホッとしたのかお互い笑いあっていた。
ディアナとキエナも笑顔だ。
これにて一件落着だといいな。
中年冒険者の家に、猫人族が加わった。




