第24話 屋敷殺人事件Ⅱ
ともかく、この屋敷は同窓会で貸切状態だった。そこに部外者が1人追加される。
事件が起こっているなら、絶対に説明しておかないといけないだろう。
管理人の男性から紹介するのでついてきてくれと言われたが、ずぶ濡れだ。
玄関口なのでここならいいが、部屋に行くにはちょっとダメだろう。
外套は脱いで適当に絞りつつ玄関口へ置かせてもらった。
服は流石に脱ぐワケにも行かず、しかしそこまで濡れていないのでこのままでいいだろう。
問題は靴だ。ぐっしょぐしょで気持ち悪い。しかし裸足で歩き回るワケにもいかない。
するといつの間にか消えていた管理人の女性がタオルと貸出用の内靴を持ってきた。
流石、管理人。十数人相手に2人で切り盛りするだけのことはある。
礼を言ってタオルと内靴を借り、管理人の男性の後を追う。
案内された先は広く、ふかふかのカーペットが敷かれ壁際にはソファーも置かれていた。
恐らくパーティ用の談話室になっており、事件があった為かほぼ同窓会のメンバーがそこには居た。
管理人の夫婦の後ろから続いて入ると、珍客に皆ギョッとしていた。
管理人の男性が俺のことを説明しようとする前に、詰め寄る男女。
パッと見、このグループの取り纏め役だろう。
気の強そうな委員長タイプの女A(同窓会メンバー1人目)。
詰め寄る女Aをなだめる副委員長タイプの男B(2人目)。
他は、チャラ男C(3人目)とギャル女D(4人目)が同じくギャル女E(5人目)を慰めている。
恐らくギャル女Eの彼氏が死んだと思われる。
また部屋の隅で小さく蹲っている地味女F(6人目)も居る。その彼氏でも死んだのかなと思う。
2人の男が死んだということで、雰囲気としてはあっているはずだ。
あとは行商人風の男G(7人目)と、新人冒険者っぽい格好の男H(8人目)、女I(9人目)。
全員20歳前後ぐらいであったが、新人冒険者はやたらと落ち着きがない。
前の国で、冒険者として鍛えたアキヒコ達の方が年下のはずなのに落ち着いているように見える。勇者であるアキヒコや暗殺者だったネルは参考として不適切かもしれないが、孤児院出身のタロトやパルムと比べても、ここに居る新人冒険者は弱そうだった。師匠が居ないとこんなものかもしれない。
そして、死んだ男J(10人目)と男K(11人目)。
もちろんここには居ない。
最後に、話を少し聞く限りでは、生きているのに、ここに唯一居ない、学者の男L(12人目)。
どうやら言い争いを聞いていた奴らしく、出ていけば殺されると言って部屋に引き篭っているらしい。返事はするようで死んではいないみたいだ。
管理人の夫婦2人と俺を併せて、合計15人。
死んだ2人と俺を抜けば12人。
この中に人殺しの犯人が居るはずだ。
外は豪雨。殺害現場に水滴がまったく付いて無いことから、俺が犯人では無いと管理人の男性は察したのだろう。現にタオルで服や髪や体を拭いているが、まだポタポタと水滴が落ちている。なので、外に居る別の誰かが犯人の可能性も考えにくい。
管理人の男性が説明してくれたが、理解出来ないチャラ男Cが絡んできた。
「お前が犯人じゃないのか?」と俺の襟元を締め上げてきた。が、襟元もまだ濡れており、チャラ男Cの手もびしょびしょになってしまった。管理人の男性が現場は濡れていなかったので彼は違うとフォローしてくれて、その場はなんとか収まった。
だが2人目の犠牲者が出たばかりで、皆バラバラだった。泣く者、落ち着かない者、管理人夫婦に詰め寄る者。俺以外、誰一人として冷静そうな者は居なかった。
数字が残されてる以上、犯人はあと3~4人を殺すことになると誰もが予想出来た。それもあり『自分が殺されるかも?』と考え、冷静になれる訳が無かった。
「まぁなんだ。とりあえず、全員落ち着け!」
そう言って、腰に付いているサイドポーチから2つの小さな丸い物を取り出す。
1つは飴玉で自分の口に含み。
もう1つは…
煙玉だった。
いきなり部屋の中央で煙玉を叩きつけ、白い煙が勢いよく吹き出し、談話室全てを包む。
1分もしないうちに、談話室で立っているのは1人になった。




