第20話 迫り来る影
ラキティスが来るといっても、まだしばらくは時間が掛かるだろう。何せ他国だ。
俺達ですらここに来るのには時間が掛かっている。
ジジイとババアは転移魔法を使っているので論外だ。
部屋の準備もメイド隊のお陰で手早く済んだ。前の家よりも部屋数が多いはずなのだが、もう半分以上埋まってしまった。
ペースが早い。
いっぱいになったらメイド隊の個人部屋を複数人で詰め込むか?メイド隊はもう1部屋貸した創作活動部屋に入り浸っているみたいだし。必要になりそうな時そうしよう。とゲスい考えでいた。
メイドや執事が居ることになったリオ家なので、俺が家でやる仕事はほとんど無くなった。
肩の荷が降りてスッキリしていたギルド職員に嫌がらせも兼ねて、ラキティスが来るまで冒険者らしく依頼でも受けまくろうと再度ゲスい考えをし、またギルドへ向かう。
スッキリしていたギルド職員へ声をかけると、顔が能面のようになっていた。それだけでスッキリした。
「リオさん。また戻ってきて、どうかしたんですか?」
「いや、ラキティスが来るまで暇だからな。何か受けようかと思って来た。」
「そうですか……。」
ギルド職員は能面からゲッソリに変化した。
更にスッキリした。スッキリついでに聞きたいことがあったので聞いてみた。
「そういえば、ここへ初めて来た時、定番の絡みは無かったが、俺がC級って知っていたのか?」
初めてギルドに来るヤツへ、ギルドで待機している冒険者が絡んで来る定番イベントだ。
アホな奴が来ないようにとか、無茶する奴への牽制だったりと色々理由があったりするので、大体どこのギルドもやっていることだ。
「アレは酷かったですね。私達ギルド職員はラキティス様よりリオ家取扱説明書を頂いていますので知っていましたが、冒険者は知りませんでしたよ?」
「取扱説明書!?ラキティス、そんな事をしてるのか?」
「ええ。ソレが無ければ私達では対応しきれませんでした。」
「だが、冒険者は知らないなら何故絡みに来なかった?」
「既に絡んでいたじゃないですか?ボサボサの髪の男性と腕を絡ませて……。アレを見て絡みに行こうとする冒険者は居ませんよ。」
「あぁ。そうか。ブラントと一緒に来たんだった。」
「『何事も無ければ安全。だけど油断は禁物。彼らの発想や行動は、人がどうこう出来るものじゃない。』ラキティス様の教え通りでしたね。」
ラキティスを神聖視しまくってるな。
実際に会ってないから分からないのか。
「おいおい。あまりラキティスを今のうちから高評価しない方がいいぞ。あいつだってウチの住人だからな?似たようなもんだ。むしろ前の国では、俺を振り回していたぞ?」
「まさか!?嘘ですよね?」
「ま、会ってみてからのお楽しみだな。」
ゲッソリから青ざめた顔にまで変化したギルド職員の反応を楽しみ、適当な依頼を受けて暇を潰すことにした。




