ちぃちゃんの大事な手
ちぃちゃんはとっても元気な3才の女の子。
毎日お外で遊び、ごはんだってたくさん食べます。
トマトはちょっぴり苦手だけど、小さく切ってあればがんばって食べます。
風邪だってほとんどひかないし、お風呂で頭までもぐるのだってへっちゃらです。
だけど、そんなちぃちゃんにも怖いものがあります。
夜お布団に入ると、なんだかとっても寂しくなって、ママの手がないと寝られないのです。
ちぃちゃんは不思議に思います。
大雨でお空がピカッと光っても、風がゴーゴー吹いて窓がガタガタゆれても、あの暖かくていい匂いのする手をぎゅっと抱いていればなんで大丈夫なんだろう。
目をつぶって真っ暗なのに幸せな気持ちになって、気がつけばいつも朝になっているのです。
それなのに……今日はママがいません。
夜ごはんも食べたし、お風呂にだって入ったのにママがどこにもいないのです。
いつものキッチンにも
いません。
おトイレかな?
いません。
お布団の中にかくれているのかも
……いません。
押入れの中だってゴミ箱の中だって、下駄箱だって探したけど、どこにもいません。
とうとうパパに「そろそろ寝る時間だよ」と言われてちぃちゃんは泣き出してしまいました。
隣にママがいないのに寝るなんて生まれて初めてで、どうやって寝たらいいかわからなかったのです。
「今日はパパの手をぎゅっとするかい?」
そう言って抱いたパパの手はなんだかゴツゴツしているし、ちっともいい匂いがしません。
「やだやだ、ママの手がいい!」
ちぃちゃんはお布団をかぶっていつまでも泣き続けました。
トン トン トン
困ったパパはちぃちゃんの背中を優しくトントンします。
しばらくすると泣き疲れたちぃちゃんは眠ってしまいました。
朝目がさめると、ママの手をぎゅっとにぎっているちぃちゃん。
背中にはパパの手がのっています。
ちぃちゃんは気づいたのです。
ママもパパもちぃちゃんが寂しい時や怖い時は守ってくれるって。
ママの手もパパのトントンも、どっちもポカポカした気持ちになれるって。
その日からちぃちゃんは、ママの手だけじゃなくパパのトントンでも眠れるようになりました。