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ユグドラシルストーリー 完結編  作者: 森のうさぎ
7/7

完結編 第7話 決戦、夢と現実


私はアインさんを説得した後、パトリア国の円卓に戻った。


ロディ

「なんか、ヒロトが二人いると不思議な感じだな」


アイン

「完成品、お前と二人で並んで立つ日がくるとはな」


ヒロト

「俺も、夢にも思わなかったよ。お前と共闘することになるとはな」


キズナ

「父さん……」


アイン

「ん?」


ヒロト

「ん?」


同時に反応する二人の父さん。

たしかに、少し違和感を感じて少し苦笑いがこぼれる。


ロディさんの携帯電話が、また鳴り響く。


ロディ

「俺だ。……なにっ!?

 くそっ……わかった」


キズナ

「今度はどうしたんですか?」


ロディ

「こちらの準備がととのう前に向こうが先手を打ったみたいだ。

 ユグドラシルめがけて、カルコスから大群が攻めてくる」


いよいよ、決戦みたいだ。

そう覚悟した私は拳を握りしめた。


そんな私に、アインさんは肩に手を置いて。


アイン

「気負うなよ。……大丈夫だ」


続いて、父さんも肩に手を置いて。


ヒロト

「肩に力が入りすぎている、緊張感は必要だが緊張しすぎるなよ」


アカネ

「キズナちゃん、私たちも戦うから

 必ず、無事で帰ってきてね」


キズナ

「父さんたち、母さん……」


ロディ

「この戦いは、おそらくドラゴンとの最後の戦いになると思う。

 俺は飛空艇で出る。みんな、生きて帰って来いよ!」


そういって、ロディさんは円卓の間から出て行った。

私たちもそれに続く。



 @@@


最前線、敵の進行を抑えている場所だ。


三体のドラゴンと黒いアーマーギアの集団が

青いアーマーギアや紫のアーマーギアの集団を蹴散らしている。


量産型ハデス

「……」


赤いドラゴン

「急げ、先手を打たなければ我らに勝利はない!」


青いドラゴン

「我が王よ、不完全な体のまま復活させたことをお許しください」


三体のドラゴンたちの後方から体がドロドロと溶けながら空を飛ぶ

漆黒の巨大なドラゴンがいる。


ブラックドラゴンキング

「……ワシの、望んだ世界……ワシの、ワシのためのすべての……」


沢山のアーマーギアが戦う最前線が突破され、

ドラゴンや黒いアーマーギアの集団が遠くからでも見える。


ロディ

「いくぞ!」


ロディさんは飛空艇で砲弾を発射しながら突撃していく、

それに続いてジークフリートに変身した私は、黒いアーマーギアを切り伏せる。


意外にもろい……。というより、ジークフリートと私が強くなってる?

体に力を感じる。おそらく、ドラゴンたちにジークフリートが反応してるんだと思う。


アインさんもヴィントノワールに変身して、左手の大砲を撃って援護してくれる。


赤いドラゴン

「ふん、しょせんは捨て駒……裏切ったか」


ヴィントノワール

「裏切る? いいや違うな、見限ったんだよ。

 こんなくだらないことは、もう終わらせる」


その闘いの中に、父さんもいた。

巨大な2メートルはある銀色の大剣を振り回して

黒いアーマーギアを切り倒していた。


ヒロト

「研究所からもらった特別製だ、対ブラックドラゴン用のな!

 しかし、シュヴァルツハデスの大群というのは何の冗談だよ……」


???

「まったく、悪趣味にもほどがある」


そこには黒い霧をまとった、和服を着た黒いポニーテールの母さんそっくりの

女性がいた。


ヒロト

「クロユリ姉さん!」


ジークフリート

「クロユリ?」


クロユリ

「おい、キズナ。

 負けたら小遣い減らすからな!

 こんなやつらに絶対に負けるなよ」


ジークフリート

「は、はい!」


たぶんあれは母さんだと思う、けれど私の知ってる母さんとは少し違う。

母さんは赤い髪で、ポニーテールだけれど

今、前線で黒い霧を操って生身でアーマーギアを投げ飛ばしてるのは

黒い髪にポニーテールの和服の女性だ。


私の知らない、母さん……なのかな。


ヒロト

「キズナ! 黒いドラゴンが一体抜けて行ったぞ!」


キズナ

「しまった!」


急いでその黒いドロドロと溶けたドラゴンを追いかけようとする私だったが

目の前に赤いドラゴンが現れ、道をさえぎられる。


赤いドラゴン

「我らが王には近づけさせん!」


ジークフリート

「お前は、あの時の!」


にらみ合う私と赤いドラゴンだったけれど、

後方から酸のブレスを吐きかけてきた黄色いドラゴンの攻撃を

反射的に回避する。


先ほどまでいた地面はドロドロに溶けて腐敗臭がただよう。


黄のドラゴン

「王がユグドラシルを喰らえば、我らの勝利となろう」


青いドラゴンがゆっくりと翼を羽ばたかせながら降りてくる。


青いドラゴン

「この先は通すわけにはいかんな」


ジークフリート

「お前らが、父さんと母さんを……エミリオを!!」


三対一、状況的には不利だけれど

ジークフリートは何のために作られた?

ドラゴンを過去の戦いで蹴散らしたこともある。

なら勝てるはず!


竜撃砲を構えて、赤いドラゴンを狙い撃つ。

その一撃は、かすめただけで深いダメージは入らなかった。


それに対して三体のドラゴンは息を合わせてブレスを同時に吐いてくる。

私のジークフリートを三枚のシールドが高速回転しながら守ってくれるけれど

その攻撃は無傷というわけではなかった。


シールドが焼け焦げる。


左右に分散したドラゴン三体を相手に、着地しては飛び跳ねて

竜撃砲を撃つ。


ズキリと、心臓の痛みを感じる。

この一撃は弾丸だけじゃなく、己の命を削って打ち出す弾丸。


自分の命を削りながら、ドラゴンを狩る戦闘機械。それがアーマーギア。

それが、ジークフリート。


エメラルダス

「雷撃っ!」


青いドラゴンが電撃で感電する。

隙を見つけた私は、ジークフリートの竜撃砲を発射し青いドラゴンを撃ちぬいて

爆発四散させた。


振り向いたそこにはノウラさんのアーマーギア、エメラルダスがいた。


ジークフリート

「ノウラさん!」


エメラルダス

「私だけじゃないよ、里のみんなもきてる!」


遠くから沢山の緑のアーマーギアが弓や槍をもって走ってきている。


赤いドラゴン

「これでは過去の戦争と同じではないか……」


ジークフリート

「アンタたちは今日、私たち人間が倒すんだ!

 必ず、絶対にっ!」


ヴィントノワール

「その意気だ、キズナ!」


青い剣で黄色いドラゴンの羽を叩き切るアインさん。


黄のドラゴン

「おのれぇ!」


地面に落下した黄のドラゴンは、エルフの里からきたアーマーギアたちの

集団に槍で串刺しにされる。


赤いドラゴン

「我が王よ、早くユグドラシルを!」


その赤いドラゴンが炎を吐き、目くらましをしている間に

ユグドラシルの方へと飛んでいく。


逃がす訳にはいかない。

そう思った瞬間、後ろから巨大なハンマーで殴られた。


ジークフリート

「ぐはっ!」


量産型ハデス

「はぁ……はぁ……は、ははは……あははは!!」


着地を狙われた私は、

すでに黒いアーマーギアの集団に取り囲まれていることに気付く。


ジークフリート

「こいつら……」


私を取り囲んでいる黒いアーマーギアの集団の一体を切り裂く父さん。

そしてもう一体を黒い霧で包み込み圧殺する母さん。


ヒロト

「キズナ、行け!」


クロユリ

「負けるなよ!」


ヴィントノワール

「いくぞ、キズナ!」


倒れていた私は、アインさんに手を差し伸べられ

立ち上がり、そしてその場から跳躍ちょうやくした。



 @@@



赤いドラゴンの数倍はある巨大な体の漆黒のドラゴンが、地面に落下する。

その衝撃で周囲の街が吹き飛ぶ。


ブラックドラゴンキング

「ワシ……ワシは……」


赤いドラゴン

「……もうこれしか手はないか……出来れば我が王が世界を支配し

 我も甘い汁を……」


黒と赤のドラゴンに追いついた私とアインさんは、竜撃砲を撃つ。

その一撃はうまく当たらず、赤いドラゴンをかすめただけだった。


ジークフリート

「追い詰めた!」


ヴィントノワール

「諦めろ、お前らの負けだ!」


話し合う気なんてない、こいつらは完全な悪だ。

そう思って私が竜撃砲を構えたときだった。


黒い巨大なドラゴンは、大きな口を開けて

赤いドラゴンを食べ始めた。


赤いドラゴン

「ぐああああ!」


まさか、共食い……!?


赤いドラゴン

「くっくっく……、王が我が力を手に入れ……不完全とはいえ

 力を取り戻しさえすれば、貴様らごとき……ぐ……あ……」


ごくりという音と共に、赤いドラゴンを黒いドラゴンが食べてしまった。

すると、ドロドロと溶けていた顔のドラゴンは正気を取り戻したように

溶ける顔が鉄のような硬いウロコでおおわれ、からだじゅうのウロコが

太陽を反射するように光った。


ブラックドラゴンキング

「ふは、ははははははっ!」


ジークフリート

「こ、これが……ブラックドラゴンキング……」


その体はさらに巨大化し、全長100メートルはある巨大な移動要塞のような姿になった。

ユグドラシルの方に向こうとするその体。


いけない、大樹が食べられてしまう!


竜撃砲を構えて、背中に発射する。

しかしその一撃はウロコにはじかれて消えた。


ジークフリート

「そんな!」


ブラックドラゴンキング

「ん~? なんや、うるさいハエがおるなぁ」


ヴィントノワール

「ちっ!」


アインさんのヴィントノワールも大砲を撃つが、まるで効果がない。


黒い巨大なドラゴンが、口を開けて灰色のブレスを吐く。

すると周囲のものは腐敗して溶けていく。


ブラックドラゴンキング

「ワシに逆らうんか、お前ら……。

 ワシに逆らうんやったら、ぶち殺したるわ!」


灰色のブレスをギリギリで避ける私たちだったけれど

竜撃砲がブレスに当たり溶けて消えて行った。


ジークフリート

「しまった!」


首を横にひねって、黒い竜がブレスをこちらに向けて追撃してくる。

三枚のシールドが私とヴィントノワールを守るけれど

シールドが溶けていく。


ヴィントノワール

「くそっ……なんてやつだ」


ブラックドラゴンキング

「ひっひ! ワシに勝てると思うとるんか!」


こいつは、まさしく闇そのものだ。

怖い……殺されるかもしれない。


ヴィントノワール

「キズナ、びびるな! 俺がいるだろ!」


ジークフリート

「そんなこと言ったって、どうやってあのバケモノに勝つの!?」


ヴィントノワール

「……俺が隙を作る、その間に

 お前は内部からヤツを破壊しろ!」


ジークフリート

「内部からって、体内に入るの!?」


ヴィントノワール

「それしか手はない、お前の巫女の光が勝つか……奴の過去の闇が勝つか……

 頼んだぞ! あと、アカネ姉さんによろしくな!」


ジークフリート

「待って、アインさん!」


黒い巨大なドラゴンの口をつかんだヴィントノワールはその口を無理やりこじ開けた。


ヴィントノワール

「いまだ!」


ジークフリート

「っ!」


行くしかない、その巨大な口の中。まるでブラックホールのような口の中に突撃する。

そしてその口はバクンッと音を立てて閉じた。

ヴィントノワールの腕が回転しながら飛んでくるのが、一瞬だけ見えた。


 @@@


真っ暗な闇の世界、何も見えない。

体から光を感じる。体が発光している。


周囲には肉塊が見える、ここは体内?


そうだ、私はブラックドラゴンキングの口の中に入り込んだんだ。

電撃をまとった触手が伸びてきて捕縛しようとしてくる。


その触手を斬竜刀で斬りながら、奥へ奥へと進むと

その先に心臓のようなものがあった。


これが心臓部分……。

これさえ壊せば、この黒い竜を倒せるはず。


???

「ふひ、ふひひひひっ……」


ジークフリート

「!?」


その心臓部分は上と下とでつながっていた血管を切り離し

ひとりでに動き出した。


その塊はドラゴンの顔になった。


肉塊

「まさか、アカネにガキができるとはなぁ」


ジークフリート

「誰!?」


肉塊

「お前のおじいちゃんだよぉ、キズナちゃあん?」


ジークフリート

「……! モチヅキ・カズオ!?」


カズオ

「呼び捨てにすんなやこのガキ!

 ぶち殺すぞコラァ!」


ジークフリート

「私のおじいちゃんなら、なんでこんなことするの!?」


カズオ

「決まっとるやろ、世界を手に入れるんや

 金も、女も、この世界も……すべてワシのもんやからなぁ!」


ジークフリート

「お母さんは、お母さんはどうなるの!?」


カズオ

「あ? たかが一人の娘にそこまでワシが気にすると思うか?

 あれはワシが性欲を満たすためのただの道具や!」


ジークフリート

「……許せない……」


絶対に、絶対に許せない……!!


ドラゴンの顔の口から触手が二本生えてきて、その触手は

拳二つになった。


斬竜刀を構えて、ドラゴンの顔と正面から戦うことに決意を固めた私は

とびあがった後に真っ直ぐに向かっていく。


斬竜刀で斬りさこうとするけれど、その一撃は両手の拳で止められる。

武器から手を放した私は拳で殴り掛かる。


その一撃を放つ瞬間、ドラゴンの顔に頭突きされる。

そして私は両腕をドラゴンに手のひらでつかまれ

何度も頭突きされる。


カズオ

「おらおらどうしたぁ? かかってこいよクソガキ!」


ジークフリート

「ぐ……あっ……」


ミシミシと、体が割れるような痛みを感じる。

このままだと……。


そう思った時、声が聞こえた。


ヒロト

「諦めるな、キズナ!」


クロユリ

「負けたら小遣いを減らすといっただろ、私の娘なら負けるな!」


外で、みんな……戦ってる。

私だけ諦めようとしてる……。

だってもう方法が……。


エメラルダス

「アンタが諦めそうになっても、私たちは何度でもいうよ

 キズナは勝つ、絶対にって!!」


ノウラさん……


ロディ

「お前は、何のためにこの世界に来たんだ!! 思い出せ!!」


キズナ

「そうだ……私は……」


周囲が光に包まれていく。


カズオ

「なんや、この光は!?」



 ▲


ワシは金持ちの家に生まれた、

ワシの親はワシのことをいつも坊ちゃんって呼びよった。


ワシは親父とおふくろが死んだら、この家を乗っ取ってやろうと

おもうとった。

せやけど、親父は何を考えてたんかわからんが、身内より友達を大事にしよった。


その結果、だまされて借金して、破産しよった。


ワシはそのころ、ユカリノ・サクラって女と付き合うとった。

どうせ金のためやろ。


ワシはその女と結婚して、子供ができた

欲しくもないのに。


破産した親父とおふくろから離れたワシは

会社を始めた、運送屋やった。


でもすぐに倒産しよった。

それから日雇いのバイトで生活しながら、毎日パチスロ。


ああ、今日も負けて腹が立つわ。

帰ったらアカネでも殴って憂さ晴らししよか。


子供は親の所有物なんやからな。



 △



 @@@


キズナ

「お……おまえ……」


真っ白い何もない世界。

その私の目の前に、ガラの悪そうな太った男が立っている。


カズオ

「なんやクソガキ、文句あんのか!」


キズナ

「文句しかないわ、このクソ親父!

 子供の気持ち考えたことあるのかっ!」


カズオ

「じゃかましいわアホ! そんな余裕ないわ!

 ええよなぁ、お前らは余裕あって……ええよなぁお前らは金があって

 ワシにも分けてくれよ、金も、女も……この世界も」


キズナ

「お前に分け与えるものなんてない! 消え失せろバケモノ!!!」


 @@@


体が光に包まれる。強い力を感じる。

皆の想いを感じる。みんなが、私のことを認めてくれて見てくれている。


ジークフリートの体に光が集まる。

その青く輝く光は周囲の電撃のほとばしった触手や闇を一切寄せ付けない。


カズオ

「な、なんや……なんやこれ!?」


ジークフリートの右腕の拳に光が集まってくる。

左腕でドラゴンの顔をつかみ、右腕を振りかざす。


カズオ

「ま、待ってくれ……」


ジークフリート_キズナ_

「最後に言い残したいことは?」


カズオ

「ワシは、お前らを愛しとる……本当や嘘やない!」


ジークフリート_キズナ_

「さようなら、足枷あしかせ


その光り輝く拳でドラゴンの顔を思い切り殴ると

顔を貫通し、爆発を起こす。


カズオ

「いええああああああああああ!!!」



 @@@



ブラックドラゴンキングの動きが止まる。

そしてその体は膨らんだ後、破裂して

光の雪が空から降り注ぐ。


そしてそのブラックドラゴンキングがいた場所に立っている

ジークフリート。


ジークフリートの足元に父さんと母さんが走ってくる。


ヒロトとアカネ

「キズナ!」


黒い髪の父さんと、黒い髪だけど茶色の目をした落ち着いた雰囲気の母さん。

ジークフリートから分離して、生身で地面に立つ私。


キズナ

「……アインさんは」


ヒロト

「……アインは逝ってしまったよ」


キズナ

「そうなんだ……」


振り向くと、ジークフリートはじっとこちらを見下ろしていた。


キズナ

「ありがとう、ジークフリート。これで未来は変わると思う」


黙ったまま、ジークフリートはユグドラシルの方へと歩いていく。

ユグドラシルが受け入れたのか、ジークフリートは光の膜を越えてユグドラシルに触れた。


そしてその足元からツタが生えてきて、ユグドラシルと同化していく。

ジークフリートが一瞬こっちを見て、一言つぶやいた。


ジークフリート

「ありがとう、キズナ」


もう一つ、声が聞こえた。


ヴァイスフローラ

「やっと会えたね、兄さん」


ツタはみるみるうちに大きな木になり、ユグドラシルを支えた。

エメラルダスの変身を解いたノウラさんはニコニコ笑いながら

走ってきた。


ノウラ

「さぁ、戦いも終わったことだし、みんなで帰ろう!」


アカネ

「うん!」


私はその言葉をとても喜んだ、帰れるんだ。

そう思った矢先、私は体がだんだん透明になっていくのを感じた。


ヒロト

「……キズナ! お前、体が」


体が透けていっている、いや、消えていっている。


キズナ

「そっか、未来が変わったから……」


アカネ

「キズナちゃん!」


肩の力を抜いて、クスッと笑った私は父さんと母さんに最後の一言を告げた。


キズナ

「お父さん、お母さん。私のことをよろしくね」


だんだんと姿が消えていく。

あぁ、よかった……これで私の役目も終わり。


後は父さんと母さんたちやみんなが未来を創っていくんだ……。

ありがとう、そしておやすみなさい……。



ドラゴンの脅威が去った世界、ユグドラシル。

その世界は人間同士の小さな紛争はあったものの

その後、世界は平和といっていいものとなった。






 @@@






……そんな夢をみた。

ジリリと目覚まし時計の音が聞こえる。


アカネ

「ここは……」


そう、ここはいつもの牢獄。

自分の家の自分の部屋。

お母さんが事故で死んでから、父親であるモチヅキ・カズオの暴力が激しくなる一方。


アカネ

「今のは、全部……夢?」


鏡を見る私、顔にはアザがある。

そして、時計を見る、朝の7時。

右手にはお母さんが買ってくれた携帯電話が握りしめられていて。

机にうつ伏せになって眠っていたみたい。


棚の上にはロボットの人形やぬいぐるみ、本棚のところには北欧神話の本がある。


ドタドタと、廊下から迫ってくる足音が聞こえる。


カズオ

「アカネ、アカネぇ!

 この時間になったら飯作れっていつも言うとるやろうがぁ!!」


そうだ、これが現実だ……。


私は父親のカズオに平手打ちでひっぱたかれる。

いつもだったら怯えていた私だけれど、なぜか私は怖くない。


ギロリと父親であるカズオをにらみつけて一言いう。


アカネ

「これ以上やるなら、警察呼びますけどいいですか?」


するとお父さんであるカズオは顔を真っ赤にして怒り出し。


カズオ

「……このガキぃ!」


といって私の顔を拳で殴り倒した。

棚にぶつかる私、上から落ちてきた緑色の騎士のプラモデル。


カズオ

「くだらんこというとる暇があったらさっさと飯作れやコラァ!」


そういってお父さんは居間の方へ歩いていった。

口が切れて血を流している私は、その緑色の騎士のプラモデルをじっと見つめて

110番に電話した。




ガチャリと、居間の扉が開く。


カズオ

「遅いぞ、いつまで待たせる気やねん……」


私は後ろに警察官の人を引き連れて、お父さんに会いに行った。


警察

「ちょっとお聞きしたいことがあるんで、署まで来ていただけます?」


アカネ

「……」


カズオ

「……は、はい?」



その後、お父さんは児童虐待の容疑で逮捕されて

私は母方の親戚に引き取られることになった。


今は、学校に行かずに働いてる。

学校に行くことが必ずしも幸せとは限らないし、道は沢山ある。


私が15歳になったころに、単純作業の職場に新しい子が入ってきた。

親戚の男の子らしい。


おばちゃん

「アカネちゃん、昼礼はじまるよ」


アカネ

「はい、すみません……ちょっとお待ちください」


洋服のハンガーの束を針金で巻く作業を終わらせて、

そっと昼礼に参加する。


私はその男の子を見て、無言になった。


おばちゃん

「今日うちに来てくれた、ユカリノ・ヒロト君だよ」


ヒロト

「どうも、ユカリノ・ヒロトです。歳は14歳です

 よろしくお願いします」


あまりの驚きに口元を抑える私。

これは、夢の続きなの?


そっと近づいてくる、ユカリノ・ヒロト君。

そのヒロトは、にっこりと笑うと私に優しくつぶやいた。


ヒロト

「待たせたね、_アカネ姉さん_」


涙が止まらない、その涙が止まらない目で私は

周囲の動揺も気付かずに、ヒロトに抱き着いた。


アカネ

「……夢じゃ……夢じゃ、なかったんだね……ッ!」




完結編 第7話 決戦、夢と現実


 _THE END_


最後までユグドラシルストーリーの物語を読んでいただき

本当にありがとうございました!


私自身、「読みたいことを書けばいい」という考えで

この物語を書き進め、私が読みたいことを書いてきました。


ヒロトやアカネは、私が高校生ぐらいの時に設定を妄想し

ある元ネタになったアニメやゲームをプレイして

「私だったらこうするのになぁ……」と残念に思っていた時に

「あ、そうだ物語を自分で書こう!」と考えた末に行動しました。


最初に物語を読んでくれた「HN:緑の飴」様に感謝です!

いろいろなアドバイスありがとうございました!


最後に、改めまして、この物語を読んでいただいた皆様、

本当にありがとうございました!


もし、またお逢いできるなら別の物語でお逢いしましょう!

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