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アーティファクト  作者: 〜神歌〜
✯第一章 西の国〜後編〜✯
39/154

36話✯さていつ気づくのかなぁ? 一文字間違えてるの……✯




「セリア?何でここに」

その槍は聖炎の槍、今はセリアが持つ槍であった。


「何で天使さんをやっつけたの?」

セリアが静かに聞いた。



「今の天使さん、精霊さん達と遊んでるの見たことある!

いい天使さんだよ‼︎」

セリアが純粋な瞳でロアに言った。



「えぇ……天使らしい、いい天使だったわ……」

ロアが静かに答える。



「ロアさんの話……

ロアはさんは悪い天使だけをやっつけてるんじゃないの?


いい天使でも嫌いなの⁈


お姉ちゃんが天使になったら嫌いになっちゃうの?」

セリアは隠さず聞きたい事をロアに聞いた。


「悪い天使になったら容赦しないわよ……


あなたでもね……」

ロアは冷たく言う。


 セリアは気付く、ロアの心に得体の知れない何かを、凄まじく憎むもう一人のロアがいることに、だがそれは眠りについてる様でほのかにその存在を感じる程度だが……目覚めたらどうなるのかセリアには想像出来なかった。



「ロアさん……憎んで楽しい?」

セリアは静かに聞いた。

 その存在の気配を数日前、あの白く朽ち果てた木があった場所で感じていた。

 セリアはロアがしたのだと理解して聞いた。

 ロアはさっき大天使に言った事を言い返された気がした。



「さぁ?解らないわね……

憎まなきゃ私は死んでいたし、今の私じゃなかった……


それにあの天使は、私への憎しみを一万年も抱きしめていたわ……

だから魂を解放してあげたのよ……


大切な人を追いかけられる様にね」

ロアはそう静かに言った。


「魂の解放?」

セリアは聞いた。

「リベラアニムス……

神聖魔法よ、この魔法使えるの今は私だけかな……


憎しみや悲しみ、それから生まれる復讐……

そう言ったものに囚われてしまった魂を解放してあげる魔法よ。



ただ殺す気になれなくて……

綺麗な姿で恋人に会える様に送ってあげたの……

全部私が悪いから……」

 セリアはロアの言葉に優しさを感じて槍を引いた、難しい話でまだ十七歳のセリアには少ししか理解出来なかったが、ただロアが過去に苦しめられている様に感じていた。


「ロアさんの夢って?」

セリアが聞いた、以前から気になって気になって仕方なかった。


「最近解らないわ……

まだ話すなら座らない?」

ロアが言うとセリアは静かに座りロアも静かに横に座った。


「セリア?あんたのせいよ……」

ロアがふいに言った。

「え?何が?」

セリアが言う。



「私の夢は死にたかったのよ……

エルフに戻って、静かにその命を楽しんで……

もう疲れちゃってさ……

シャルルを守るだけに生きて静かに死ぬ……

そう思ってたわ」

 ロアが話すがセリアはそれが半分嘘で半分本当だと思い、聞こうとしたときロアが話を続けた。


「でもね、あんたと知り合ってからいつも振り回されてるシャルルやみんなを見てるとね……


なんかね……

そう考えるのが馬鹿みたいに思えて来たのよ。


この前もシャルルを投げてたじゃない?

あれ見てたのよ私。

なんかおかしくなっちゃってさ、隠れて笑っちゃったよ」

 セリアはロアの口調が少し変わった気がし嘘じゃないと感じて聞いていた。



「ハラハラして楽しいって思えること、なんか増えたんだよね……

だから夢が解らなくなって来てさ……」


 ロアが静かに目を伏せながら言う。



「ロアさん!

さっきの魔法……なんだっけ?」

相変わらずセリアである、魔法の名前を忘れたようだ。


「リベラアニムス?」

「そう!それ教えて‼︎」

セリアが元気に言う。


「神聖魔法は難しいけど……

セリアなら出来るかもね」

「頑張る!」

セリアは元気に言い続ける。



「憎いって思ってるロアさんがいるから!」

セリアは言った。

「ちょっと私を燃やす気?」

ロアは笑いながら言うが、セリアならやり兼ねないと思った。



「だって誰かを憎んでもつまらないじゃん‼︎

何かあったら私がロアさんの憎しみを燃やしてあげる‼︎」

セリアらしく何も考えずに、そのまま言っている。

 ロアはさっきの天使にそう言ってあげれなかった事に気づき、そっと微笑んだ。



「そうならない様に気を付けないとね」

 そう言いながら立ち上がり魔法で文字を描き始める。

「全ての文字を素早く描いて見なさい、出来るだけ綺麗に丁寧に……」

ロアが教える。

「全部の?」

セリアが聞く。


「いつか解るわ、だからやりなさい……


それとこの文字を描く方法は誰にも教えない……

いや……信じられる人にしか教えないって約束してね。」

 セリアは笑顔で頷き、ロアの言う通りに描きはじめる。



 ロアはそれ以外の事も同時に教えるつもりであった。

 一万年かけて編み出して来た一つの秘術を、セリアに譲る気で丁寧に教えはじめる。


 ロアは長い間、黎明の母として戦わず魔鏡の魔女として戦っていた。

 その魔法は魔鏡を使う魔法メインだが他の魔法も幅広く使いこなしている。

 ロアに恨みを持つ天使や魔女は星の数程いるが、ロアが本気を出さずに生き残って来た秘術を、セリアに教える事にした。


 セリアはやはり魔法のセンスはズバ抜けている。

 普通なら時間のかかる方法だがスラスラと描いていく。

 ロアもその隣で全ての発音を美しくしなやかに描いていくが、セリアをチラ見した時、?と思った。


 描いた文字は僅かに輝き消えていくがセリアは気付く、その文字は消えてるのではない魔力を残し無秩序に散らばって行く。


 そしてロアが描き終わり、セリアが描き終わるのを待つが、すぐにセリアも描き終わる。



 ロアは静かに最後を描きはじめる。

その美しくしなやかな指先で、リベラアニムスと描くと、今まで書いた文字全てがリベラアニムスの詠唱の順番で素早く輝き始めた。


 複数ある文字の部分はその文字がその回数分輝き、魔法の文字が凄まじい速さで詠唱して行く。


「綺麗……」

セリアが見惚れている。


 ロアは離れた場所に咲いている花にリベラアニムスを放つ。

 花は憎しみも悲しみもなく咲いていて燃やされる事は無かった。

 ただ神聖な輝きに包まれただけであった。


「やって見なさい」

ロアが言いセリアが静かに、真剣にリベラアニムスと描く、セリアの真剣な眼差し、普段とは違うセリアがそこに居た。

 その場の空気が変わり緊張感が漂っていくが、緊張していたのはセリアだけであった。

 ロアはまるでどうなるか知っている様だ。



シーン……

何も起きず静寂が訪れる。



「えっ……」

魔法の文字は発動しなかった。

 ロアはプッと小さく笑い、セリア悲しそうな切なそうな表情でロアを見る。

「えーなんで出来ないの⁈」

普段のセリアが騒ぐ。

「ロアさん!

なんで字が輝かないの?

なんでなんで‼︎

間違って無いよね⁈」


セリアがジタバタしている。


「私が一万年かけたのよ、一回で成功したら私の立場が無いわよ」

 ロアが笑いながら言う、理由は簡単過ぎるミスだと解っていたのだ。

 だが逆に一回で出来た可能性が満載で、セリアの才能をロアは感じて思わず笑ってしまったのだ。




つまり……

普通に詠唱すれば出来たのである。




「えーそんな出来る訳ないじゃん‼︎」

 セリア十七歳、人間であるために推定寿命最大で残り八十三年。



「後は頑張って練習しなさい、センスはいいんだから

貴方ならきっと出来るから」

 ロアは楽しそうに言い、そして心から思った。

(色んな意味で単純ね。

でもそれがセリアのいい所かな……



さていつ気づくのかなぁ?

一文字間違えたの……


やっぱりこの子面白いわね)

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