ティム クインシー
「今日は我が社【ティムカンパニー】の発明をご覧いただき誠にありがとうございます」
「ホントだよ しかもこんな夜中に…」
「安心してください、後悔はさせません。 では皆様、考えてみて下さい 脅威のあるテロリストが居たとして アメリカに攻め入ろうしている 軍を手配して守るべきだが、抗争も避けたい…!」
ティムは手に持っているタブレット端末の画面を来場者達に見せつせるように突き出し、画面を二度タップした
「これで安心」
「…………ん? おい、何が安心なんだ?」
瞬間、来場者達の携帯が一斉に鳴り、皆が次々と形態を手に取る。 しばらくして電話の内容に誰もが驚きを隠せなかった
「どうしました? まさか武力派テロ組織『アルダ』の本拠地でも壊滅しましたか?」
「お前がやったのか?」
「いいや僕じゃない やったのはコイツ」
ティムがリモコンのスイッチを入れると来場者達の前にミサイルの発射台が3Dホログラムで現れた
「クリーンエネルギーを使った曲射砲固定砲台 環境に優しくて 脅威も一掃できる 自宅に一台あれば安心 そう思いませんか?」
それから買い手の声は鳴り止まず、静かになるまでしばらく掛かった
「いや〜今日も良い発明だった、次も期待してるよ」
「えぇ任せて下さい。………………行ったか? はぁ…疲れ…」
「おい」
「うぉっ! なんだ……リドニーか」
「おい…俺の部下も居るんだ、ちゃんと『少佐』を付けろ」
「まったく お堅いな。 空軍は皆そうか? ってか来てたなら言ってくれよ、もっと良い席を用意したのに」
ティムの歓迎とは裏腹に、リドニーは静かだった。 むしろ呆れた瞳でティムを見つめていた
「お前まだこんなことやってたのか?」
「………別に良いだろ 今は会社も大きくなった 社員にも給料を払えてる 昔とは違う」
「………。」
沈黙した二人に一人の女性が近づく、ティムの秘書をしているヘレン・エッカート
「こんばんは リドニー少佐」
「こんばんは Ms.ヘレン」
「おい…まず社長の僕に労いの言葉とか無いのか?」
「お疲れ様でした社長 本日の売上は7台 前回より増えて何よりです」
「まあまあだな…。 そうだ、今から食事でも行かないか? リドニー、一緒にどうだ?」
「いや 止めとくよ」
「そうか…じゃあ2人で」
「私も遠慮しときます」
「えっ?」
「誕生日を祝うので」
「誰の?」
「私のです」
「君が…誕生日…!? 今日!?」
「いいえ、明日です。 正確には1時間54分後…あっ、53分後ですね」
「今から祝うこと無いだろ」
「ですが明日は午後から政府の兵器製造会社に発明品のプレゼンが…」
「なら社長として命令する 明日は休め…君が生まれた日だ…仕事のことは忘れて羽を伸ばすと良い。」
「いいんだ、いいんだ。 君は今を持って休暇中だ、それと…欲しいものがあったら僕名義で好きなものを買って良いぞ。 あ〜でも…」
「一つだけ…ですよね。」
「……そうだ」
「ケチくさい所は昔のまんまで…安心しました」
「こればかりは 金じゃ治らない」
「結局 一人で食事か?」
「いや…そんな暇無い、今さっき仕事が増えた 今日は徹夜だ」
そう言い残しながらティムは一人で車に乗り、家へと車を走らせた