8.何もしなければ日本で四十万人が死亡、つまりそれってどれくらい?
新型コロナウィルスで亡くなる人数が感染者(推定)からすると実は死亡率は低いのではないか、という話が出てきてますね。経済的に確実に破綻して自殺に追い込まれる人数と比べれば、経済活動を再開する方向に舵を切るべきではないか。各国の流れもそちらに向き始めました。
本日(2020年05月04日)、緊急事態宣言の延長(~5月31日まで)が発表されましたね。外出自粛で影響を受けている飲食店などへの支援の追加的な対策を今後講じていくとのことですので、なんとか乗り切っていきたいところです。5月14日を目途に可能であれば途中で解除することもあるとのことですので、感染の少ない県では行動変容は続ける必要はありますが、生活しやすくなっていきそうです。
厚生労働省の新型コロナウィルス特設ページを見ると、入院を必要とする人数(+81名)に対して、退院した人数(+111名)と本日も退院者数が上回りました。良い傾向ですね。
※以下の表は厚生労働省の新型コロナウィルス特設ページのものです。
PCR検査は現在、感染中かどうかを調べるものであるのに対して、抗体検査はこれまでに感染して体内に抗体が作られているかどうか調べるというものですが、ちらほらと情報が出始めています。
ニューヨーク州(人口1945万)で行われた抗体検査は以下のように推移しています。
4月22日 感染率13.9% 調査対象 2933名
4月27日 感染率14.9% 調査対象 7397名
5月1日 感染率12.3% 調査対象 15103名
ちなみに日本の場合、大阪市立大学の研究グループが、COVID-19以外の目的で外来受診した患者さんの残余血清を無作為抽出検査を行っています。大阪府の人口は882.3万です。
4月27日 感染率1%程度 調査対象 312名
献血を利用した抗体検査は以下の通り。
5月1日 感染率0.6%(東京)、0.4%(東北) 調査対象1000名(東京500名、東北500名)
※5月15日に発表。ただし、複数の検査キットで確認したところ擬陽性の可能性があったり、
昨年の血液でも反応するなど、精度自体が怪しい(普通のコロナウィルスに反応か)とのこと。
そのため、改めて1万人規模で2020年06月を目処に改めて検査を行うそうです。
また、単なる抗体のある、なしだけでなく量も測ることも検討しているそうです。
……そうなると他国の抗体検査の質も気になるところですね。(2020年5月15日加筆)
抗体ですが、以下のように今のところ、傾向分析に使える程度の話です。
①感染した人に必ず抗体ができる訳ではない
②抗体があれば、再感染しないかわからない
③抗体を調べる簡易検査キットは正しく使わないと精度が落ちる
④そもそも簡易検査キットの信頼性が低いものがある
※中国製簡易検査キットが常に陰性になるなど質が酷く返品した事例あり。
※韓国製簡易検査キットが検査前から試薬が変色していて8割使えず返品された事例あり。
※米国製簡易検査キットで製造工程に問題があり常に陽性が出てしまう問題があり返品された事例あり。
大阪府での調査例からすると、日本では感染者数は数%程度、アメリカのニューヨーク州に比べると、1割程度の感染率といったところでしょうか。
1%とすると全国127万人が感染、PCR検査はそのうち1割に実施、亡くなった方は510名なので、死亡率0.04%。
これが実態を表しているなら、当初言われていた死亡率0.3%、無策で行った場合の日本の死者は40万人という話が、4万人に抑えられる……のかもしれません。ただ、この数値は安易に安全側に倒して判断していい数字かというと悩ましいところがあります。
なぜかというと、新型コロナウィルス限定の話ではありませんが、肺炎になると、肺が損傷を受けて完全には治癒しないこともあります。また、一度感染した人は二度目の感染で重症化するのではないか? とも懸念されています。スペイン風邪では第一波<第二波<第三波と被害がどんどん増えていきましたから。
◇
さて、今回の話題は、新型コロナウィルスに対して無策で行った場合、想定される死者数40万人というのは、どれくらいの人数か、です。
いや、40万人だろ、とツッコミたいところでしょうけど、ここでいう「どれくらい」というのは、数値だけだといまいち現実感がないので、天災や戦争などの被害人数と比べることで、規模感を掴んで欲しいと思ったからです。
そもそも40万人と聞くとかなりの人数と思えます。でも、人口の0.3%と聞くと1000人のうち3人が亡くなる程度なら、さほどでもないようにも思えます。
普段扱う数と乖離しているため、どうしても感覚を掴みにくいんですよね。
国内史上初の震度7が出た阪神・淡路大震災(1995年1月17日)では、住宅被害が約64万棟で、死者数は6434名でした。(人口の0.005%)
国内史上初のM9.0の超巨大地震となった東日本大震災(2011年3月11日)では、死者・行方不明者の合計が2万5949名でした。(人口の0.02%)
関東大震災(1923年9月1日)では死者・行方不明者の合計は10万5000人でした。(人口の0.18%)
人口比率でいくと、阪神・淡路大震災の60倍、東日本大震災の15倍、関東大震災の1.5倍程度の死者数となりますが、イメージできたでしょうか?
戦争だと近代でいけば、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争で見てみましょう。
日清戦争(1894-95)は、戦死者1132名、戦傷死285名、病死11894名、戦傷病3758名でした。病死の人数がやけに多いですね……。
当時の人口は4114万人ですから、死者の比率は0.03%でした。
日露戦争(1904~05)は国力差3倍という圧倒的不利な中、ソビエトの南下を防ぐため総力を投入して、イギリスから借りた膨大な戦費の返済をし終えたのは1986年! どれだけ無理をして戦ったかイメージできるのではないでしょうか?
戦没者は8万4929名、病死2万7192名、負傷者15万3584名と、日清戦争の約10倍という被害に国民は大いに動揺しました。
当時の人口は4613万人ですから、それでも人口に対する死者の比率は0.24%、戦場は日本国外だったこともあり、国内インフラへの被害はありませんでしたから、新型コロナウィルスでの死者という意味では、こちらが一番近い数値と言えそうです。
太平洋戦争(1941-45)は国家総力戦となり、日本中が爆撃を受けるなど甚大な被害を受けました。亡くなった人数は軍人174万人、民間人39万3000人でした。当時の人口は7222万人、死者の比率は2.95%。
という訳で、新型コロナウィルスに無策で行って40万人が亡くなるということは、日清戦争の10倍、日露戦争と同程度、太平洋戦争の10%が亡くなる事態ということが言えそうです。
台風だと戦後最大被害の伊勢湾台風(1959)で死者・行方不明者合計5098名、負傷者38921名で、当時の人口は9264万ですから、死者の比率は0.0055%。新型コロナウィルスの無策での死者は伊勢湾台風の約55倍。
なんか凄い人数、とは判る感じでしょうか。
新型コロナウィルスとの戦いを戦争に例えることもありますが、死者数だけでいけば、確かに天災というよりは戦争相当だということがわかるでしょう。できるだけ被害は抑えたいものですね。
<補足情報1>
今回の新型コロナウィルス、世界的流行ということもあり、悲観論者の中でも極端な人は、人類の危機だ、と言ってる方もいます。
ですが、14世紀におきた黒死病では世界人口4億5000万の22%に当たる1億人が亡くなったと推定されていますが、人類は未曾有の危機も乗り切り現代に至っています。
20世紀の人口増加率からすれば、同じ比率で亡くなってたとしても数十年程度で頭数だけなら簡単に復活するでしょう。
なにせ、第二次世界大戦の5年後は25億だった人口が、2019年時点では77億人ですからね。
ですから、人類の危機には程遠い、というのが正しい認識です。
<補足情報2>
日本では、近年、最大の戦争は太平洋戦争で甚大な被害が出て、二度と戦争しないぞ、と固く誓う流れとなった訳ですが、同じ第二次世界大戦、独逸vsソビエトの戦争、ソビエトで言うところの大祖国戦争では、ソビエトは人口1億に対して死者2500~2800万人という悲惨な結果となりました。(人口の25~28%)
それでも2019年現在、人口は1億4670万となっています。
死から目を背けてきた日本人が、死というモノに向き合うことになっていくことでしょう。
誰もがいずれは死ぬ、それを前提に、未来への被害が一番少なくなる方法を選ぶ必要がある。
……難しい問題です。
<補足>
献血を用いた抗体検査の結果について2020年5月15日加筆しました。
複数の検査キットで調べて精度に疑問が生じた、とのことで、2020年06月(早ければ)の
1万人規模の再検査の結果待ちですね。ナショナルジオグラフィックでも、検査キットの
精度が酷いことを取り上げた記事も出ており、まだ新型コロナウィルスに対する判断に
使うのは時期尚早なようです。